第49咬―人狼咆
あれ?
いつもこんな重かったか?
俺の刀。
「・・太。頼太。」
「んっ!?あっ、ああっ!」
「どう叩く?」
「どっ、どうって・・・。」
「なんか歯切れ悪くない?」
「そっ、そんなことねぇよ!!今考えてる!!」
「あっそ。」
きっと、思ったより大バケモンだったからナーバスになっちまったんだな。
しっかりしろ俺!!
ここで踏ん張んなきゃ、依頼達成できねぇぞッッッ!!!
しばらく見つめ合っていた俺達とルビガロカだったが、向こうの方からゆっくり歩き出した。
❝グルルルルルルルルルルルル・・・。❞
視線を俺らに固定したまま側面に向かっていく。
背後に回り込もうって魂胆かぁ?
「その前にこっちから・・・!!!」
俺はルビガロカに向かって縦回転しながら斬りかかった。
狙うはさっき俺が斬り込み入れた足の傷!!
突っ込んで吹っ飛ばしてやんよッッッ!!!
「護主命絶流・胴抉りッッッ!!!」
俺の刃の切っ先はルビガロカの傷に届いた。
だが、固い肉に穴を開けただけで、足を飛ばすまでには至らなかった。
「なっ・・・?!?!」
ルビガロカの腕刃の一撃が飛んできたので、躱して距離を取った。
おいどうなってんだ?!?!
技のキレがいつもより落ちてる?!?!
今日の俺、どこもおかしくないぞ!!
一体どうしちまったんだ!?
❝ゴウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!?❞
巨大な木の槍を持った美玲がルビガロカの手の甲を深々と刺した。
「美玲ッッッ!!!」
「固定しといた。顔面にクリティカルブチ込み続けろ。」
「たっ、助かるッッッ!!!」
美玲が作ってくれたチャンス・・・無駄にしてたまるかッッッ!!!
俺は大きくジャンプして、ルビガロカの顔まで届いた。
「護主命絶流・兜斬りッッッ!!!」
俺はルビガロカの脳天に、渾身の力を込めて木刀を振り下ろした。
しかし・・・。
❝グルルルルルルルルルルルル・・・!❞
奴は健在。
頭にちょっとの傷しかついておらず、鋭い目つきで俺を睨んでくる。
「くっ、クソっ・・・!!」
こうなったらもう仕方ない。
ゴリ押しでコイツの頭をグチャグチャにするッッッ!!!
「胴砕き!!馬首落とし!!面割り!!籠手裂き!!」
技を連発しまくった。
それはもう覚えてるのを手当たり次第。
だけど全く歯が立たない。
自信を持って言える。
コイツの身体が別段固いというワケではない。
だって美玲の木の大槍は手を貫いてるからだ。
握ってる感触で分かる。
技の威力がどんどん落ちてる。
さすがに体力がヤバくなったので、俺はもう一回奴と距離を取った。
「ねぇ~どうしたのさ!?今日なんかおかしいよ!?」
ルビガロカの手を固定しながら美玲が言ってくる。
我慢できなくなった俺は木刀を地面に突き立てた。
「おい!!なんでだよ!?なんで言うこと聞かないッッッ!?!?」
美玲はキョトンとした。
だってそうだ。
俺は今・・自分の木刀に向かって怒鳴っているのだから。
やがて雲が徐々に晴れていき、月が露わになった。
ルビーのように輝く、真っ赤な、満月。
❝グッ・・・!!グオオ・・・!!❞
月を見上げたルビガロカの様子が急変し、美玲も慌てて離れた。
唸る奴の、身体中の骨という骨がボキボキ音を立て、姿形が変わっていく。
足はイヌからヒトのようになり、前足は横に広がって、立派な胸筋がボコボコと浮き出てくる。
❝ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンンンンンンンンンンン!!!!!!❞
ルビガロカは二本足で立ち上がり、血のように紅い満月に向かって遠吠えした。
その姿は、まさに巨大な人狼。
「ウソだろぉ・・・。」
変身を終えたルビガロカが、キッと俺達を睨みつけた。
その眼差しを見て、俺はコイツにずっと持ってた違和感の正体に気付いた。
そうか・・・。
コイツ・・・同じだったんだ。
俺達の・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「そんなはずあるかああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
ヤケクソになった俺は、考え無しにルビガロカに突っ込んだ。
ルビガロカは、元々生えていた腕刃を縮ませ、手の甲から別の腕刃を生やした。
互いにぶつかる俺の木刀と奴の腕刃。
ガチガチと擦り合う音がした直後。
俺は奴に弾き返され、それと同時に木刀が・・・真っ二つに砕き折られた。
奴に殴られる刹那に見た表情が脳裏に焼き付く。
こう言ってるようだった。
❝お前達では俺の怨みは殺せない。❞と・・・。




