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第40咬―雛菊

全ての仕事を終え、離れた波止場で待つこと1時間。


一台の魔科車がこっちに近づいて停まった。


「ああ、ボロドさん。待ってました。」


エキドナ(君らの代表)から子ども達が監禁されている倉庫の場所を聞いた時は心臓が飛び上がったよ・・・。」


まさか殺し屋達の元締めから情報提供が来るなんてこの人の刑事人生の中で後にも先にもないことだから相当ドキッとしただろうなぁ・・・。


まぁそうするように頼んだのは俺なんだけど♪


「とりあえず、全員保護した。身元の照合と治療が終われば無事親元に帰れるだろう。にしても・・・エラく暴れてくれたなぁ・・・!」


「やっぱビビった?あんなん見せられて。」


「若いのはおろか現場慣れしてる経験豊富なヤツまで吐いたんだぞ!?どんな殺し方すればあんな魔獣の食い残しみたいな死体ができるんだ?!?!」


「私達、()()。」


上手いこと言う美玲(みれい)に、ボロドさんはドッと疲れたため息をした。


「まぁ、なんだ・・・。とにかく、世話になった。心から、礼を言わせてくれ。」


真剣な眼差しで、ボロドさんは深々と頭を下げた。


「なんてことありません。これが俺達の仕事ですから。」


「・・・・・・・。」


「なんか急に浮かない顔ですね?」


「なんだか、情け無い限りだと思ってな・・・。君らのような子どもにこんな血生臭い役目を押し付けることになって・・・。刑事として、大人として・・・な。」


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「俺らの父親も警察官なんですよ。」


「母親は検察。」


「なに?!?!」


まさかの事実にボロドさんは目をひん剥いて驚いた。


「どっちも里親なんですけどね。でもホントの親と同じくらい好きですよ?正義感が強いですからね。二人を見て常々思うんです。“こういう大人がいてくてたら、頑張り甲斐がある。”って。オルトロス (俺ら)みたいなのは、ぶっちゃけいない方がいいんです。悪いヤツら、それも権力持ってズル賢いのでも、法に則って痛い目に遭うべきなんですよ。それが平等社会ってモンでしょ?だったら俺達は、それが現実になるまで法の目を誤魔化そうとする悪を喰い散らかすだけ。殺し屋オルトロス が、この世界でも、この世界でも必要じゃなくなるその日までね。早く俺らにラク、させて下さいよぉ〜♪」


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「この世界の警察機構の一員として、これからは協力を惜しまない!!何かあれば、遠慮なく声を掛けてくれ!」


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「多少無茶なことも振るかもですよ?」


「望むところだよ!」


こうして俺達は、この世界の警察と協力関係を結ぶことができた。


「じゃあ早速。柴犬っ子(この子)の養子先探してくれませんか?」


柴犬っ子を初めて見たボロドさんは目をパチクリさせた。


「こんな混獣人種(セリアソイド)は見たことがないな・・・。」


「連中の手で非合法な実験で生まれたんです。俺らじゃとても面倒見れないのでよろしくできますか?」


「それは・・・難しいな。」


「え!?なんで・・・!」


「その子が()()()()()なぁ・・・。」


柴犬っ子は俺の背中にピタっとくっつき、離れようとしない。


「お前は俺らと同じ日陰じゃなくって、もっと明るいトコで過ごすんが幸せなんだ。分かってくれ。」


目線を同じにして諭したが、柴犬っ子は首をブンブン横に振って全力て拒否る。


「なぁ頼むって・・・痛って!!」


頭を撫でようとした俺の手を柴犬っ子はガブっと噛んだ。


「なっ、何すんの?!?!」


「だっ・・・だっ・・・だっ・・・!!」


「だ?なによ?」


「だいすきッッッ!!!ぱぱ!まま!いる!ずっとッッッ!!!」


・・・・・・・。


・・・・・・・。


喋った。


“言語能力は回復しない。”ってへびまるちゃんが言ってたのに、柴犬っ子が・・・喋った・・・。


頼太(らいた)、諦めよ?」


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「だぁ〜もう〜!!俺の負けだ負けッッッ!!!ボロドさん!!この子オルトロス (俺ら)で面倒見ますッッッ!!!」


「あっ、ああ・・・。」


半分ヤケクソな決意表明にボロドさんはちょっと引いた。


「ところでその子、名前は?」


「なっ、名前・・・?ない、ですけど・・・。」


「それはダメたぞ。これから大切になる子だ。名前くらい付けてやれ!」


「うっ、う〜ん・・・。美玲、なんかいいのない?」


「デイジー。」


「それは違うだろぉ〜!!この子は柴犬!()()だぜ!?もっとこう・・・和!!みたいなカンジなの!」


「じゃあ雛菊(ヒナギク)。」


それもそれでちょっと古風な気がするが・・・。


「どっからとった?」


「デイジーの和訳。」


安直ッッッ!!!


「ちな花言葉は美人・平和・希望。縁起モノじゃね?」


なるほど・・・ね。


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「よし!決まり!!今日からお前はヒナギクだ!基本ヒナって呼ぶからよろしく!」


「ひな!!ひな!!」


自分の名前が決まって、ヒナは嬉しそうにぴょんぴょんジャップした。


「エキドナに色々と用立ててもらわないとなぁ・・・。」


「その前に帰って寝る。疲れた・・・。」


「確かにここ最近ずっと働き詰めだったからな。じゃあ俺らはこの辺で!またなんかあったら連絡しますんで!!」


「またな。オルトロス 。」


ボロドさんに見送られて、俺達は帰った。


真ん中のヒナと手を繋いで。


多分今の俺ら、側から見たらすげ〜若年夫婦に見えそう。

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