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第29咬―飛罠

街を一望できるくらいの山の中腹に立っているとある城。


その入口に、魔科で走る高級リムジンが続々と集まってくる。


出てきたのはタキシードやドレスを着た、あからさまに()()()な方々。


「今夜の金額はどれくらい上がるでしょうなぁ~?」


「前回はダメだったから今回は競り落としたいわ。男の子だったら特に♡」


こっちから見える姿は小さいけど、こっちの世界の影響で研ぎ澄まされた聴力で聞こえる聞こえる。


食べ盛りの、ブタ達の声が。


頼太(らいた)、どんなカンジ?」


「次々ご到着で。脂身ばっかの獲物の方々が。」


ことの発端はボロドさんから今朝受け取った報せだ。


❝街から北に半日進んだ山間部の古城で、例のオークションが開催されるとの情報を手に入れた。❞とのこと。


この時俺はピンと来た。


❝ああ、()()()()な。❞って。


今まで誘拐された混獣人種(セリアソイド)のオークションがどこで行なわれるのか、警察の操作線上には一切浮かんでこなかったのに、俺達の家が襲われて4日経っていきなりそんな都合のいい情報が飛び込んでくるなんておかしい。


しかも、❝ボロドさんの部下を殺した疑いのある転移者が司会をする可能性が高い。❞とのオプション付きで。


どうみたってこれは、オルトロス(俺達)をおびき出すための罠だ。


ボロドさんは、❝何があるか分からないから迂闊な行動はやめた方がいい。❞って釘を刺したけど、そういうワケにはいかない。


むしろ俄然やる気が出る。


だって・・・。


「うし!そろそろ行きますか。」


「あのドミニク(アホ猫)、どんな罠を用意したんだろうね?」


「飛びついて、喰い破ってやろうぜ。あのデッカイ古城(はこわな)ごと。」





◇◇◇





「入るぞ。」


「ああマルコさんっ!」


立場が上のマルコが入室して、ジャスティンは慌てて葉巻を灰皿に捨てた。


「そのまま一服してていいんだぞ?久しぶりの晴れの舞台で緊張してるだろ?」


「いや~そんなワケにはいきませんよぉ~!!なんで俺・・・()()()()失敗(ヘマ)やらかして、今日まで謹慎してた身なんですからぁ~・・・。謙虚にしてねぇと・・・。」


「その心掛けは勝手だけどな。と、そうだ。今夜の仕事が終わったらボスがな、みんなで食事でもどうかって言ってんだわ。お前の復帰祝いも兼ねてな。」


「本当っすか!?いや~なんか悪いです・・・。俺なんかのために。」


並存世界(こっち)の仕事の半分くらいはお前が請けてたからな。ボスも気にかけてるのさ。」


「おっ、俺・・・!!やる気出てきました!!ボスのために、今夜の仕事はキッチリ仕上げないとっ!」


今一度襟を正すジャスティンを一瞥して、マルコは部屋を出た。


「お前が今日・・・生きてたらの話だけどな。」


マルコはそう呟き、廊下を歩いていった。


時を同じくして、城の外の警備を、アサルトライフルを持って行なっていたレオンハルトファミリーの構成員がバタバタと倒れていった。


「なっ、何・・・ふぅっ・・・?!?!」


「おっ、おいどうした!?」


隣の仲間が倒れて、慌ててスコープを覗いた瞬間、()()が飛んできた。


それはスコープごと男の右目、そして脳を貫き、庭園の壁にめり込んだ。





◇◇◇





「よし。最後の一人脱落。」


「おまっ・・・どんなエイム力してんだよ・・・。」


城に押し入るにあたって、美玲には外の連中を片付けてもらっていたが、コイツはなんと()()()()()()()()()()を、剛速球なんて可愛く思えるほどの威力のストレートで全滅させた。


「今の私、ドジャースのピッチャーになれそうだわ。」


「おめぇみたいな全身兵器どっからもスカウトされるかっ。」


とにかく、外は落ちたみたいだな。


じゃあお望み通りドミニク?


アンタの仕掛けた罠に入ってやるよ。


無駄だと分かった時のハンカチくらい、用意してるだろうな?

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