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第21咬―久昂

混獣人種(セリアソイド)児童人身売買のアジトからこっちの世界の銃が見つかった。


ということは、一連の事件の背後に俺達と同じ、裏社会の人間達が噛んでいるのは明白。


それも、組織規模で。


「ボロドさん。このことはアンタの上に伝えたのか?」


「もちろん報告した。だが上の連中は❝異世界人が絡んでいるとなると相手が悪すぎる。❞と言って、動こうとしないばかりか捜査本部の縮小まで行なってきた・・・!!こんな馬鹿なことが・・・罷り通って堪るかッッッ!!!」


ボロドはテーブルをバンッと殴って憤りを露わにした。


「賢明な判断。」


「なにぃ・・・?!?!」


ボロドが美玲を睨みつけた。


転移者(わたしたち)は魔科が使えない。だけどその代わりに身体能力が並存世界(ここ)だと化け物。下手に刺激して報復されるよりマシ。」


「おっ、お前みたいな子どもに何が分かる・・・!!!」


怒り狂ったボロドが美玲の胸倉を掴んできた。


美玲は涼しい顔をして、彼の手首を捻った。


「うっ・・・!あ゛あ゛っ・・・。」


「お前もこれ以上部下を死なせたくないでしょ?」


喉から苦しい声を搾り出すボロドに、美玲が冷徹に言い放った。


そして半ば強引にイスに座らせた。


「はぁ・・・はぁ・・・!」


「ウチの相方が手荒なマネをしてすいません。ですが、コイツの言ってることは正論です。アンタが独断専行したら、余計な犠牲が増えるだけ・・・。そのことを内心分かってるから、アンタはこうして俺達に頼みに来たんだろ?」


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「自分の無力さに心底腹が立つ・・・。どうして俺はアイツの仇を自分で取ることができないんだッッッ!!!」


自分の膝を悔しそうに殴り続けるボロド。


「相当可愛がってたんだな?その殉職した部下のこと。」


「マリアベート・・・。死んだ部下は、新米の頃から目にかけていた。小っこい女のクセして正義感が強くて、色々と手を焼かされたが、警察が天職と思えるほど純粋でカッコいい奴だった。最近子どもができて、とろけたツラしながら写真を見せびらかしてきたよ・・・。今回の事件も、一児の母ってことで人一倍頑張って捜査に臨んだ。まだ23、しかも子ども残して殺されるなんて・・・。こんなの間違ってる・・・間違ってる・・・!!」


テーブルに突っ伏しながらボロドは声を押し殺して慟哭した。


俺はそのザマを見て、久しぶりに胸の奥がズキっとした。


「美玲、()()()?」


美玲は真顔で首を縦に振った。


()()()()()・・・引き受けよう。」


「えっ・・・?」


「アンタのそんな姿見ちゃ、俺達にはもうアンタを疑う余地も、仕事を断る義理もねぇ。アンタ達の仇・・・このオルトロスがキッチリ喰ってやるから安心しろ。」


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「すまない・・・!!」


ボロドさんは深々と頭を下げた。


「じゃあ依頼金として10金貨(アウル)、払ってもらおうか。」


「は・・・?え・・・?思っていたより・・・。」


「こんな商売してるが俺達はまだ高校生だ。分相応な報酬を受け取るのがポリシーだ。それに人の復讐心に、いちいち値段は付けらんないだろ?」


ボロドさんは覚悟の決まった眼差しをしながら、テーブルに金貨を置いた。


俺はそれをスッと受け取った。


「依頼成立だ。成功したらまたここに呼ぶ。」


俺達はミーティングルームを出て、ドアを背にして止まった。


頼太(らいた)()()()()。」


俺は気付かない内に右手がプルプルしてるのを知った。


「フッ・・・。()()()()()()()()()()みたいだな。」


「興奮?」


「そうだろ美玲?これまでの話を聞く限り、獲物(ターゲット)はきっとマフィアかギャングだ。裏組織丸々殺るのは久しぶり。しかも相手はケモ耳っ子達を売りさばいてる悪党共だ。激しい狩りになりそうでワクワクが止まんないだろ?」


並んで歩き出した直後、美玲が珍しく微笑んだ。


「分かってんじゃん。」


俺達は互いに激しくロータッチを交わした。


「「全員喰い殺す。一人、残らず。」」

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