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第18咬―来夢

翌日の朝、ホテルに戻った俺は美玲から死眠り事件の犯人を夢の中で殺したと聞き、依頼人達をゲストルームに呼び出した。


本当かどうか不安だったが、アイツ曰く()()()()()とやらを手に入れたから心配ないとのことだった。


まぁ、アイツに限ってウソを吐くとは思わないが・・・。


「ウェンリさん。それに遺族会の皆様。ご依頼の方が完了したので報告します。」


「それで、犯人は・・・?」


()()()()()。」


「え・・・?」


「わ?」


美玲がテーブルの上に広げたのは、なんと女夢鬼(サキュバス)のバラバラ死体。


角、翼膜、尻尾、牙。


おまけに内蔵まで、ご丁寧に真空パックされて保存されてる。


「うっわ・・・。お前どうしたのコレぇ・・・?」


「目が覚めたら散らばってた。身体構造を調べるためにバラしてみた。角や尻尾とかは人間と大差ないのが意外だった。」


淡々と話す美玲に依頼人達は勿論のこと、俺まで引いた・・・。


❝天才と狂人(バカ)は紙一重❞だというが、さすがにこれは度が過ぎる・・・。


「ぅんぷ・・・。」


「はっ、早くしまえよバラバラ死体(それ)!!マグロ解体ショー後の赤身のお披露目じゃないんだぞッッッ!!!」


依頼人達がリバースしだす前に、俺はテーブルに並べられた()()をごちゃ混ぜにして美玲に渡した。


何ムスッとしてんだボケ。


「たっ、大変失礼しました!では次に、動機についても判明したので報告を。」


俺はウェンリさん達に犯人の女夢鬼(サキュバス)、カーラが同種の雄の夢鬼(インキュバス)の店に入れ込んで、推しをNo.1にするために生気を貢いでいたことを明かした。


当然、そいつも始末したことも。


「そう、だったのですか・・・。」


「どうかしました?浮かない顔してますね。」


少し俯きながら、ウェンリさんはゆっくりと口を開いた。


「実をいうと・・・まだあまり、実感が湧かないんです。ここにいる女性(ひと)達は、私も含めて大切な男性を失いました。その犯人を、あなた達が、私達の代わりに裁いてくれた。あまりにも非現実的なことが起きすぎて、整理が、付かないんです・・・。」


悲しみとか安らぎよりも、困惑が勝ってしまってるって状況か・・・。


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「誰だってそうです。とてもじゃないけど現実とは思えないことが起こった時、これは本当にあったことか疑問に思うんです。夢から覚めた時と同じように。過去に起こった出来事は、どうやったってもう一回見返すことはできない。自分の記憶だけが頼りなんです。だけどどっかで自分なりの区切りは付けなきゃいけない。そういう時、俺はこう思うんです。()()()()()()()()()って。夢って、寝てる時だけに見るモンじゃない。でしょ?」


「じゃあ、私達は・・・?」


「俺達とアンタ達はあくまで契約上の関係。だからこっからの人生にとやかくは言えません。俺達との出会いは悪い夢、こっからの人生はいい夢を持てそうだって思って下さい。それが俺達にできる、精一杯のアフターフォローです。」


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「はい。」


ちょっと納得したようなウェンリさんの顔を見て、安心した俺達はテーブルから立とうとしたが、直前になって彼女に呼び止められた。


「できたら私は、オルトロス(あなた達)に仕事を頼んだことを、悪い夢だったなんて・・・思いたくないです。」


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「ご自由に。」


不覚にもちょっと嬉しくなった俺は、美玲と一緒にゲストルームを後にした。


「❝いい夢を持て❞ね?それって自分に言ってる?」


「こんな商売をしてる身だ。明日がどうなろうと知れたモンじゃないだろ?だったらちょっとくらい夢持った方がいいだろ?」


「・・・・・・・。だね。」


「で?お前どうすんのそれ?」


「ん~なんかの武器に素材になるかな?ならなかったら売る。」


「お前もう武器いっぱい持ってんだろ!ヌンチャクとかトンファーとかさぁ。」


「本気の時以外には使わないからホコリ被ってる。宝の持ち腐れ。」


「お前には本気になってほしくないね。そんだけヤバい状況になってるって証拠だから。」


「ああ、お二人とも。」


「ん?」


フロントの横を通った時、受付をやってるへびまるちゃんに呼び止められた。


「どったの?」


「お仕事をお済ませになられた直後で大変恐縮なのですが、お二人がご宿泊なさったフロアのお客様方から()()()()()()()()()のクレームが多数寄せられておりまして。」


「ぁん~・・・。」


俺はコソコソ逃げようとする美玲の襟首をガシっと捕まえた。


「詳しいお話を、お聞かせ願えないでしょうか?」


笑顔で青スジ立ててるへびまるちゃんの顔は、今日の夢に出てきそうな凄みがあった。

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