第17咬―不味
「いらっしゃいませ。申し訳ございませんが男性の方のご来店はご遠慮いただいておりま・・・」
「この店のNo.1のシルボフって夢鬼はいるか?」
「はぁ・・・。失礼ですがどういったご用件で?」
「❝夜原の使い❞だって言えば分かる?」
不機嫌そうな黒服の顔が強張った。
「こちらです。」
狙い通り、俺は店に通されることができた。
中はネカフェみたいな構造になっていて、個室の中で夢鬼達が客に夢を見せている。
「こちらです。」
店で一番上等な個室に入ると、フカフカのソファでふんぞり返ってる、角と尻尾が生えた男がいた。
「アンタがこの店No.1のシルボフ?」
「そうだけど?夜原のおつかいだって?自分で来てほしいよね~あのババア♪」
「違ぇよ。」
「は?」
「アンタの太客の女夢鬼の件で来たんだわ。」
「カーラの?」
「あ、カーラってんだその娘。今日はもう来た?」
「いや。そういや今日はやけに遅いな・・・。」
・・・・・・・。
殺ったな美玲。
「そのカーラって娘、どうやら死眠り事件の犯人らしんだよ。」
シルボフの目の色が変わった。
「警察?」
「いやいや。ただの便利屋だよ。」
「じゃあなに?タカリ?」
「それでもないんだわ。」
「なら何しに来たの?」
あからさまに不機嫌になるシルボフ。
「事件の遺族に頼まれて動いてんだけどさ、ことの元凶のアンタから一言聞きたくってさ。散々貢いでくれた女が人殺しで元手を稼いでたことについて。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「俺全然悪くないよね?」
「何言ってんの?」
「だってそうでしょ?自分のカモがどうやって稼いでたとか一切関係ないじゃん。だって俺、アイツに人殺してでも生気持ってこいなんて言ってないしさ。ああでも、ちょ~っとは感謝してるかな?だってアイツが持ってきてくれた生気のおかげで俺ここのNo.1になったワケだしさ!アイツに生気全部吸い取られたキモ男達もまさか夢にまで思ってないだろうね!入れ込んだ女が全然眼中にしてなくて俺にゾッコンだったなんてさ!でもこれが当然の結果だと思うよ?アイツ等みたいな底辺は、俺のようなデキる男の養分になるんだよwww」
ベラベラとよく喋るなコイツ。
「それじゃあ事件の遺族に謝罪の言葉とかないっての?」
「そんなのがほしいの?じゃあ一言ごめんちゃい♪とかなんとか伝えといて。いいよもう帰って。俺今から忙しいんだよね?サイコーにトロ~ンってくる夢を女の子に見せなきゃいけないんだからwww」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「なに突っ立ってんの?いいからとっとと帰・・・」
俺はシルボフの脳天を木刀で突いた。
ビクビク痙攣しながら目ん玉ひん剥いて、舌をダランと出しながらシルボフは死んだ。
「永眠しとけカス虫。」
個室を出て、店を出ようとしたら、応対した黒服に呼び止められた。
「あの・・・。」
「ああ。用件なら伝えた。体調悪いみたいだからしばらく休ませてあげな?」
それだけ言って、俺は店を出ていった。
「ふぅ~・・・。」
上を向いて俺はため息を吐いた。
「怨み、喰い潰させて頂きました。だけど・・・不味かったな。」