第14咬―接触
土曜の夜。
美玲の言う通り❝羽振りが急に良くなった女夢鬼❞を探して方々巡ってみたが空振りだった。
ってか本当にこの世界のサキュバスって健全な社会生活送ってんだな!
デパートの受付、銀行員、ケーキ屋の売り子、etc.
しまいには保育士とかもいたからな・・・。
子どもの面倒見る仕事なんかもう・・・キラキラしてんじゃん・・・。
おまけにどの人も魔科で作られた人魔共通食品っていったっけ?
そのおかげで生気を吸わずに生活できてんだから。
「参ったなこりゃ・・・。」
公園のベンチに座って、俺は項垂れた。
完っ全に手がかりゼロになった・・・。
もう当てになるところといえば・・・。
「はあ~あ・・・!!アイツんトコしかないか・・・。並存世界に来てるって情報掴んだし。」
◇◇◇
ジャラジャラの暖簾をくぐった先で、ソファに座った老婆がタバコを吸って、灰をクリスタルの灰皿にトントンと捨てた。
「ぁンらぁ~。こんなところでアンタの顔を拝むなんてねぇ頼太ぁ。」
「久しぶりだな夜原。」
この、喋り方も性根もネットリしてるババアは夜原燈子。
東京の営業許可の下りてない風俗・・・いわゆるモグリの店の7割を牛耳ってた、❝裏風俗のゴッドマザー❞だ。
コイツに協力してもらって、警察から20年も逃げてたデリヘル嬢連続殺人事件の犯人を見つけて狩ったんだが・・・。
思い出すだけでサブいぼが立つ・・・。
「取り締まりがキツくなって雲隠れしたって聞いてたが・・・相変わらず手広く商売してるらしいな?」
「並存世界はいいぜぇ~?人間以外とヤレるから太客がすぐできちまう。おかげでガッポガポよだわい♪」
「とっととくたばれ銭ゲババア。」
「若いのがいつまでも過去引きずってんじゃないよ!もっと未来見な!!老けるのが早くなるぜ?」
「ぜってぇお前より長生きしてやっからな。それで、俺がお前なんかにわざわざ会いに来た用ってのはよぉ・・・。」
俺は夜原にこれまでの経緯を説明した。
「なるほどぉ~?死眠り事件の犯人が今回の獲物ってワケかい?」
「聞いたところによると女夢鬼に対する差別は収まってきてるが、それでも爪弾きにされる不憫なのは出てきて、そういうのがアンタんトコに流れてきてるらしいみたいだな?こっちの世界でも裏の業界に糸を張ってるアンタのことだ。ほんの些細なことでも知ってるんじゃないかって踏んで来てみたが、どうだ?」
「残念だが、女夢鬼について変わった情報は特に持ってないよ。みんな表の世界に這い上がるために、頑張って日陰モンやってんぜ。」
「・・・・・・・。そうか。邪魔したな。」
ここでも収穫なし、か・・・。
これはホテルの延泊確定だな。
「ちょっと待ちな。」
落胆して出ていこうとする俺を夜原が引き留めた。
「ちょいとこの3週間引っかかることがあってよ。もしかしたら、なんか繋がってるかもしんねぇ。」
半分ほど吸ったタバコを、夜原は灰皿に押し付けて消した。
◇◇◇
夢の景色が急に変わった。
昼下がりの公園。
その噴水前。
いかにもな・・・デートスポット。
「はじめまして♪」
振り返るとボブカットのピンク頭の女の子がニコッと笑って挨拶した。
「君は?」
声を低めにして聞く。
「あたしはカーラ♪ここはあたしの夢の中だよ♪君の名前は?」
「・・・・・・・。❝美斗❞。」
「美斗君か!!ヨロシクね♡」
「うん。よろしく。」
出てきたな。今回の獲物。
雌オオカミが、骨まで召し上がってあげる。