第13咬―逗留
ウェンリさん達から報酬を受け取った俺達は、ラウンジで今後の方針を立てることにした。
「さて・・・。どうしたもんかね?」
「どうしたもこうしたも、引き受けた以上やるしかないじゃん。」
「だけどよ美玲。今回の獲物は夢にしか出てこない。しかもこの世界の警察ですら手がかり一個もロクに見つけられない頭のキレる・・・。そんなの俺達に殺れると思うか?」
「私は特に気にしてない。」
「どうしてよ?」
「オルトロスに狙われたら、どんなヤツだって逃げられない。今まで散々そうだったじゃん。」
「・・・・・・・。確かにな。」
美玲のおかげでちょっと・・・ほんのちょっと不安が紛れた。
警察が見つけられないズル賢い連中を、俺達は散々殺してきた。
オオカミの鼻は利く。
ましてや俺達は真っ当に裁かれない悪を狩るのが仕事のオオカミ。
その臭いを嗅ぎ分け、見つけ、捌くことは得意分野だ。
「まぁ、やるだけやってみるか。どんだけ時間がかかろうと絶対見つけ出して、喰い殺す。」
「ポジティブのオンオフの切り替えが早い。単純明快・・・アホの思考回路?」
「うるっせ!じゃあ賢い美玲さんにはどうやって獲物を追い立てるか、すでにご見当が?」
「当然。頭を分ければいい。」
真顔でVサインをする美玲。
ダブルミーニングってヤツかぁ?
・・・・・・・。
・・・・・・・。
妥当過ぎてなん~っも言えねぇわ・・・。
頭を分ける。
要するに分担して獲物を見つけ出す。
これも手詰まりになった時にオルトロスが良くやる手だ。
「分かったよ。今回はお前に任せることにするわ。それで俺は何をすればいい?」
「事件の前後に羽振りが良くなった女夢鬼を見つけて。これだけ荒稼ぎしてるんだ。きっと何かしら目立つ行動をしてるはず。」
「オッケー。そっちは?」
「寝る。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「は?」
「当然でしょ?向こうは夢に出てくるんだから。私、生気の量には自信ある。」
「おっ、ぅおい!!相手は男の夢にしか出ないんだぞ!!お前女だろ!?」
「だったら夢の中で男になればいい。全然無問題。」
「そんなことできんのかよ?!?!」
「夢ってね、現実じゃ起こらないことをたくさん叶えてくれるんだよ?その可能性の幅・・・舐めちゃいけない。」
「ホンマかいな・・・。」
「じゃあ適当に部屋借りてきて。そんで鍵ちょうだい。」
「ちょっ、ちょっと!!勝手に話進めんな!!ってか止まれよッッッ!!!」
美玲は一人でエレベーターまで歩いていき、残された俺はそのままフロントまでパシらされた。
「ということでへびまるちゃん。転移者用の部屋で空いてるの貸して?」
「かしこまりました。宿泊期間はいかがなさますか?」
「とりあえず2泊。今日から日曜まで。こっちと日本じゃ時間の流れ一緒なんでしょ?」
「左様でございます。」
「じゃあお願い。できたらこの休日中にカタつけたいから。」
「かしこまりました。しかし3日間も夢の中で待ち伏せとは・・・。美玲様のお身体が心配ですね。」
「いいんだよ。アイツ最長1週間寝れるから。」
「本当ですか!?いやぁ・・・相変わらず寝ることがお好きなのですね。」
「いやアレもう病気だよ。眠り姫じゃないんだからさぁ・・・。まぁあんなんが森ン中で寝てたらどつくけど。」
「あはは・・・。」
苦笑いしてるけどこっちはマジで笑いごとじゃないんだからね?
だってアイツがベッドですやすやしてる間にこっちは来て2回目の世界を練り歩くんだからさぁ・・・。
「では地下旧館の629号室をお使い下さい。宿泊費は6銀貨9銅貨です。」
「え?」
1銀貨1万円、1銅貨1千円のレートだから・・・。
2泊3日で69000円?!?!
「へびまるちゃん!コレちょっとぼったりなんじゃない!?いくらなんでも高すぎるよ!!」
「申し訳ないですがこちらも商売で行なっておりますので~・・・。」
「断ったらどうなんの?」
「当然お部屋はお貸しすることはできません。」
「・・・・・・・。はい。」
観念した俺は請求分のコインをバラバラっと置いた。
「お預かりいたします。こちらお部屋のカギです。」
思ったより痛い出費にブルーになった俺は無言でカギを取った。
「1日延泊ごとに2銀貨(=2万円)かかりますのであしからず。」
聞きたくな~いッッッ!!!