夢と日常と4
彼女との何気ない会話が続いていた。
会話の内容は、今の家での勉強時間の長さ、今度あるテストの事、最近の勉強で解らなかった所の事などだ。
あまりにも恋人同士らしからぬ会話なので、俺は思わず苦笑してしまいそうになる。
普通の恋人同士ならば、デートの事や、昨日見たテレビの事についてなど、話してもいいものだ。
だが、まぁ礼との会話だから仕方ないのかもしれないんだけどさ。
彼女――如月礼はとっっっても真面目な女の子だ。
どれくらい真面目かというと、クラスに一人は居る委員長タイプの人を、3倍真面目にした感じだと思ってくれればいい。
……まぁそれでも可愛い所は、他の女の子と同じように一杯あるんだけどさ。
微妙に恥ずかしがり屋なところとか、真面目すぎてちょっと天然が入ってるところとか、ほんの少し嫉妬してくれるところとか――
「聞いてるんですか、功成君?」
「のわっ!」
礼の可愛いところを挙げるのに夢中になっていて、会話を聞き逃していたようだ。
礼が少しむくれている。
「のわっ、ってなんですか? 今絶対別の事を考えていましたよね?」
礼が目を細ーくしてこちらを見ている。
なんとかごまかさねば!
「ア、アハハ。俺が礼との会話中に他の事考えるわけ無いじゃん」
礼は、へえ、と言いながら、小悪魔チックに笑い、
「じゃあ今、あなたが考えていたことを教えてくれませんか?」
と質問してきた。
アハハ、可愛いな~こいつ~、とまったく場違いな事を考えながら思った。
このままでは、殺られる、と。
礼は別に格闘技の経験がある訳でもないし、腕っ節なんか皆無に等しい。
だが、一度怒ると本当にヤバイ。
まず徹底的に無視から始まり、目を合わせれば汚物でも見るような視線を向けられる。
そして待ち合わせ場所では待っているはずも無く、とどめにもう私に話しかけないで下さ い、だ。
好きな女の子にそこまで言われて、挫けない男は居るだろうか?
いや、居るかもしれないけど、少なくとも俺は挫ける。
挫けすぎて学校も休もうとしたところ、礼からのメールで、
――私の事を原因に休んだらもう一生許しませんから。
と来て、ますますどん底に突き落とされる。
……まぁそんな女の子なのだ、礼は。
「答えられないんですか……? ……じゃあ質問の内容を変えましょう」
と、礼が質問を変えてきた。
「さっき何を考えていましたか?」
もっとやばい方向に。
どうしよう……なんて答えよう。
やばい、何か混乱してきた。
何かこんなシチュエーション、前にもあったような……。
あっ、そうだ! 今日の授業の時だ!
あの時は確か正直に言ったから失敗したんだったよな。
だったら今回は、上手くごまかせば……!
「礼……勘違いしてるようだけど……」
「……何ですか?」
礼がちょっと真面目な顔になる。
俺は、今日の授業の時とは違う、正直ではない言葉を礼に告げた。
「別に、礼の事考えてた訳じゃないんだからな!」
少しずつ赤みがかかってきた夕空に、パシーンという音が響いた。
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