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~一章~ 食べ方



 転移後3日目の朝、寮での朝食は楽しいひとときとなった。


 朝起きてから服を着替えて食堂に行く。


「みなさん、おはようございます」


 フローが朝の挨拶をすると、沢山の挨拶が返ってくる。


「「「おはよう!」」」


「フロー、寝癖がついてますよ」と言いながらさっと髪を結ってくれるライ様。


「フロー、おはよう!エルフの朝食は何を食べるんだい?魔人は3食肉料理だけど、フローにはサンドイッチを作ったよ」料理長のモンド様が厨房からサンドイッチの載ったお皿を出してきた。


「わぁ~厚焼きベーコンが入ってるぅ!お肉大好き!モンド様、ありがとう!」


 お皿を受け取り、スープをもらってテーブルの空いている場所を探すと、そこにはいないはずのアルの姿があった。


「アル?どうして食堂にいるの?」


 昨日の午後、レイの散歩を兼ねてアルと二人で薬草を探しに行った後、寮に帰るときに「明日は朝食を食べた後にまた来るよ!」と、言っていたのだ。


「朝食を一緒に食べようと思ってさ」


 赤くなった頬を隠すかのように、アルは顔を背けて返事をした。


 それを隣のテーブルから見ていた副団長のグレイが、ニヤニヤ顔でフローに言う。


「嬢ちゃん、アルは朝早くから来て待っててくれたんだ!隣の席で食べてあげなさい」



「グレイ!見ぬふりぐらいしてやれ!」


厨房からモンド様がグレイ様に怒鳴った。



「嬉しい!一緒に食べましょう!」


 フローはアルに、ドゥルス家での食事の話をしながらサンドイッチを食べ始めた。月に何回かは乳母も庭師もみんな一緒に食事をする日があり、みんなと食べると楽しいし更に美味しく沢山食べられる。寮の食事もみんな一緒で楽しくて大好きだと。


 アルは驚いた顔で「使用人たちも一緒に食べるの?」と聞いてきた。



「そうよ?家族と一緒よ!いつも一緒にいるんだもの」



「ふーん、じゃあそのとき僕も一緒に食事したいな!」



「うん!アルも一緒に食べましょう!」



 するとライ様が、「二人のためだけに、モンドが腕を振るったデザートだよ」可愛い小さい赤黒い実をふたつ頭にのせた、黄色いぷるんとしたデザートをふたりの間に置いた。



「可愛いい!このデザートは何?」



「おや?エメリラルド国では知られていないデザートなのかな?」


「これはプリンと言って、卵で作った甘い食べ物なんだよ!上に飾られているベリーの実は、ちょっと酸っぱさがあるからプリンと一緒に食べるんだ!」


 説明を終えたライ様から、二人はスプーンを渡されたが、プリンは一個しかない。


 アルに食べ方を尋ねようと隣を見ると、顔を真っ赤にしたアルが固まっていた。



「ライ様?食べ方を教えて下さい」



 ライ様は笑顔で「了解!」と言い、このデザートは特別だから言った通りにしないと食べられないよと言った。


「まずはスプーンで掬ってみて!」



「はい!掬いました」



「プリンをアルの口の前に差し出して!」



「はい!差し出しました!」



「アルに向かって、あーん!と言う」



「あーん」


 するとアルがパクリと食べた。

 さっきより顔が、真っ赤になっている。



「アル?どう?美味しい?」



 アルは小さな声で「うん」と答えた。



「次はフローが食べる番だよ!さぁアル!男なら頑張りたまえ!」


 スプーンがプリンを掬うと、アルの手が震えながらフローの前に差し出された。


「········あーん」



 フローは揺れているプリンをゆっくり口の中に閉じ込めた。


「どうしよう。とても美味しいわ!とっても美味しいけど、とっても恥ずかしい」


 フローも真っ赤に頬を染めた。


 団員たちはその後も、皿の上のプリンがなくなるまで二人を見守り続けた。







「レイ、また大きくなったわね。今日は、お座りを教えるわね」



『·······出来るよ。先に言っとくけど、僕は犬じゃないからね』



「フロー、魔狼は親から知識を与えられて産まれてくるんだ。僕達より物事を知っているよ」



「すごい!魔狼て頭がいいのね!」


「じゃぁ私も、多分······貴方達が知らないだろう事を教えます」



「エルフの事?」



『僕もエルフのことは知らないや!』



「そうね、エルフしかやらないって兄様が言っていたわ。······魔力を練って作る、薬草丸って知ってる?」


「聞いたことない!」


『知らない!』


 フローは得意気に「やって見せるわね」と言い、足元にある草花の花弁と葉っぱを数枚採り、それを左の手のひらに乗せ、右の手のひらを葉の上にかざして、極々少量の魔力を流す。


「魔力は糸より細いイメージで出して、それができたら次は何にするかイメージしながら流し続けるの」


「お茶をイメージしてみるわ、花の香りがふわっとして、これを飲むと元気になるとイメージしながら魔力を流す」


 段々左の手のひらにある花びらが縮んでいき小さな丸い固形物になってきた。  


「できたわ!はい、アル食べてみて!」



「僕が食べるの?」



「そうよ!はい、アル、あーん」


「どう?」



「うん、花の香りがするかな?」


「·······あれ?口の中で急に無くなった?」



 隣で仰向けになりながら爪に引っ掻けた草に

一生懸命魔力を注いでいる可愛らしい魔狼が

うめき声をだしながら


『あー、葉っぱがぼろぼろになっちゃった』


 と叫んでいる。



「レイは、何をイメージしたの?」



『美味しい肉!』



「草が肉になるわけないでしょ!」



 その媒体となるものから連想されるものに限られると説明し、毎日練習するように話した。


 フローも出来るようになるまでに、一年以上かかっているのに、直ぐ出来たらたまったもんじゃない。


 アルは、どうやら魔力を抑えるのに苦戦していて、手のひら全体で魔力を放出してしまう。糸の細さになるにはどれだけ練習を重ねても無理なように思えた。




 次の日、レイに乗ってアルのお気に入りの場所に行くことになった。


 レイの背中に跨がったフローの後ろに、ピタリとくっついてアルが耳元で話しかけてくる。

 緊張して心臓のバクバクが止まらない。ゆっくり走り出すと、途中何度か草むらを飛び越える度にフローの耳にアルの美しい顔が当たる。家族以外の人とこんなに近づいたのは初めてで、恥ずかしいけれども嬉しくて、ずっとこうしていたいなと思ってしまった。


 道中、ひょっこり草むらから出てきたウサギのような魔獣に遭遇したが、レイを見た瞬間すぐさま逃げだした。


「エメリラルド国では、魔獣は狂暴だから出会っただけで襲われるって教わったけど、······何だか教えられてきたのと違うわ」



『僕が強いからね!みんな逃げていくのさ』



「魔狼は高位に君臨している魔獣なんだ。レイがいるから逃げて行くんだろうけど、白い地では空気中に魔素がほとんど含まれていないから、魔獣が狂ってしまうらしいよ。黒い地には空気中にうっすら魔素が混じっているから安定してるって聞いてる」



『アルも僕のこと最高の魔狼って!』


『僕、カッコ可愛いーんだ!』



「魔素は白い地には無いの?」



「いや、白い地でも深い森とかにあるって聞いたことがある」


「もし、レイを白い地に連れていったら?やっぱり狂暴になっちゃう?」


「レイは、ならないと思う。狂暴になるのは下位の魔獣だって聞いたことがあるよ。あとで父上にも詳しく聞いてみよう」



 同じ世界でも裏と表の地では、別の世界のように知らない事が沢山あるのだと、フローは黒国にいるのだから、たくさん知識を吸収しようと今のこの状況を楽しむことにした。



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