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~一章~ 念話



 フローから『頭の中に声が聞こえる』と聞いたアルは、ちょうど訓練場から出てきた副団長のグレヴィルスに声を掛けた。


「グレイ副団長!確認してほしいことがあります」


 そして、厩舎奥の房前まで来てもらった。


 グレイ副団長が房を覗くと、2匹の魔狼の子供がいて「先ほど、みんなが話していた通り一匹が白くなってる、色が変わるなんて初めて聞いたぜ······」と、ぶつぶつ言っている。



「······それで?···俺は、何を確認すればいいんだ?」


 グレイ副団長はアルの頭をグシャグシャっと撫でた。


「フローのことです。フローは魔狼と念話が出来るみたいで···。副団長、確認できますか?」



「はっ?う、嘘だろ?」

 

 グレイ団長は目を見開いてフローを見た。


 右手を顎におき何やら考えた後、3つ隣の房にいるグレイ副団長の魔狼に話し掛ける。


「アナ姫聞いてたか?嬢ちゃんは子魔狼と念話出来るのか?」


 横になって寝ているアナ姫と呼ばれる魔狼は、耳を左右にピクピクと動かすと、瞼をゆっくり開きグレイ副団長に視線を合わせた。



『グレイ、早く散歩に行きたいわ』



「···まだ第一部隊が行ったばかりだから、もう少し待ってくれ。···それで?どうなんだ?」



『······念話?』


『ちびっこが一生懸命話し掛けてるわよ。あの女の子、気がついていないんじゃない?会話になってないもの。聞こえないのかしら』



「アル、子魔狼が念話で話し掛けてるが嬢ちゃんが気付かないのか、分かってないのか?会話になっていないらしいぞ」



「フロー!魔狼に何か話してみて!」



······何かというが


······何を話せばいいのか?


······あっ、アルの父様に頼まれていたこと



「あなたに名前を付けたいんだけど···私が付けてもいいかしら?」



『当たり前だろ?フローにしか赦さないよ!僕は男だからカッコイイ名前がいい!』



······あっ


·······頭の中に声が聞こえる。



「昨日の夜、ずっと考えてたのよ!気に入ってくれるといいんだけど。毛先が虹色に光るから虹からとって、レイ!レインボーのレイよ!」


『······えっ?それ、カッコいい?』


「···た、たぶん······」


『ふーん······レイかぁ······ずっと考えてくれてた名前かぁ。うん、レイでいいよ。レインボーはイヤだけど』



 話すことができたとアルに告げていると、グレイ副団長が後ろから驚いたように顔を突きだしてきた。


「なぁ。名前は今付けたのか?···可笑しくないか?」



「······?可笑しい?······昨夜、父上が魔狼に名前を付けるようにフロー言ったんだ。他の人には付けられないとも言ってたけど?」



 グレイ副団長の話によると、魔獣は主を決めると名をもらう。名前を得て初めて念話が出来るようになる。しかし、フローとレイの場合は逆だった······念話が先で名付けが後。



「アナ姫。名を与えていなかったのに何故レイと嬢ちゃんは念話が出来た?知っていることを教えてくれ」



『ご褒美くれるなら教えてあげるわ!』



「散歩二倍コースでいいか?」



『いいわ!』


『ちびっこはね、魔石を持って無かったのよ。死ぬ間際に女の子が自分の石をあげたわけ···その後も魔力を分け与えていたから、女の子は知らないうちに母親と同じになったと思うわ』



「なるほど、エルフの守護石を与え、更にその石に嬢ちゃんは魔力を溜め込んだのか」


「レイと主従関係と言うより、親子って感じの絆が出来た訳だな。だから念話が先に出来ていたのか」



『そうそう。そんな感じなのよ!毛色も変わったのよ。ちびっこレイに聞いたんだけど、もらった石は白くてキラキラ虹色だったから毛の色も変わったのかもって。私はちびっこが聖獣になったのかと思ったわ!』



「白くてキラキラ?」



『そう言ってたわよ』



 レイに与えた石について聞かれ、フローが「オパールって言う守護石です」と答えると、グレイ副団長の顔色は一瞬で血の気が引いて青ざめた。


「お、お、オパール?とんでもない名が出てきた。それは女神の加護と呼ばれる希少な石の名前だぞ?間違えじゃないのか?」


 とりあえず、リン様に教えてもらった石の内容を伝える。


「······と、サフィニア国の魔術士でダークエルフ族のリン様が。なので、間違えではないと思います」

 

 その話を聞いて、フローの首元をじっと見つめるグレイ副団長は、他の石も気になるらしく「エメラルドとオニキスじゃないのか?」と、疑いの視線を向けられた。


 それもそのはずで、父様がガラスロケットには魔術式を使って視覚阻害を掛けている。

 その為、チョーカーのガラスロケットから石を取り出して、それを確認してもらおうとグレイ副団長に手渡すと、目を凝らして守護石を見ている。


「本当だ、エメラルドとダイヤモンドンドが合体している。こっちがダークオパールか、初めて見たが虹色に輝いている······伝説上の石が見られるなんて······」



 厩舎の入り口から「第一部隊が戻ってきました」団員に呼ばれると、アナ姫は首を伸ばして目を輝かせ、訓練場に戻ろうとするグレイ副団長に鼻を突きだした。「わかってるって!」と、ぶつくさ言いながら厩舎から出ていった。散歩二倍コースを忘れなかったらしい。



「グレイ副団長!······第二部隊の出発準備を始めるように。それと少しの時間、私は訓練から外れるから後を頼む。何かあったら直ぐ報せてくれ」


 アルの父様が散歩から帰ってきた。隣に大きな魔狼を連れている。レイの母魔狼だ。名前はミゼル、魔狼騎士団にいる魔狼たちのリーダーだ。


「はい!レイモンド団長。昼休憩時にお知らせしたい事があります。お時間を頂けますか?」


「分かった。昼食後に執務室にて話を聞こう」



······レイモンド団長は気がついているよな


······この後どうするつもりなんだ?








「レイモンド団長!グレイです。入室の許可をいただけますか」


「あぁ。入れ」


「失礼します」


 グレイが執務室に入るとレイモンド団長は、うちの団服を着ている長い睫毛に縁どられた切れ長の紫色の瞳に、シルバーの長い髪を後ろでひとつに束ねた妖艶な美男子と話をしていた。


 『どこかで見たことあるような気がするんだよな······』団長とその美男子が話しを終えると第一魔獣騎士団の団員にはいないはずのその人物に微笑みかけられ、グレイは目を背けながらチラ見を何度か重ねると······


「···ん?····ディ······ディークヴェル王?」



「副団長、そう何度も見るな。お忍びで来ている。どうだ?この衣装似合うか?」



 ディークヴェル王は「挨拶も出来ないくらい顔が呆けているぞ!」と、いたずらっ子のようにニヤリと笑った。


 王の突然の来訪は、やはりエルフ族のフェアローラ嬢のことだった。


 レイモンド団長が魔獣騎士団での出来事を王に伝え終えると、王からは嬢ちゃんが現れたときの王城での話しであり「記録ではゲートに何も問題はなかったと報告を受けている」······相当な魔力が働いた結果の出来事だったと結論が出たという内容だった。



「エメリラルド国の女王が来るまでに、今後の対応などをまとめるが、騎士団の方では何かあるか?」


 レイモンド団長は「幾つかあります」と重い溜め息をついた。


 現段階では、フェアローラ嬢の守護石を飲み込んだ魔狼が成獣になるまで彼女の魔力を何度か取り入れなくてはならないという問題が生じている。

 更に、魔狼は主が死する日まで生涯に他の主を得ないので、この魔狼は騎士を得ることが無い。数少なく希少だが、騎士を持たない魔狼を騎士団にて生活させることは困難ではないか。

 フェアローラ嬢が緑国に帰った後の対応を考えなければならない。


 渋い顔をしながら魔狼の今後についてレイモンド団長が話した後で「グレイも何かあるか」と訪ねてきた。


「私からは····」


 エルフ族は適齢期に守護石を体内に戻すと聞くが、フェアローラ嬢が自信の守護石を一つ魔狼に与えたことを母親であるエメリラルドの女王陛下が知ったときを前にしてみないと、先が考えられないと思う。


 それと、フェアローラ嬢の守護石についてだが、魔狼に与えた石がオパールだったことと、先程確認した残りの2つの石が、どのような物だったか説明した。


「なるほど、我が国に転移したのは偶然ではなく必然だったのだろう。サフィニア国から戻ってきてから我が石が揺らいでいたのはその為かも知れないな」


 グレイの説明に、ディークヴェル王は胸に手をあて思うところがあるらしく、窓から見える外の景色に視線を向けた。


 魔人族は、産まれたときから魔石を体内に宿している。しかし、王だけは核となる魔石を2つ持っている。ひとつは前者だが、もうひとつは先代の王から代々譲り受ける賢者の石、賢魔石だ。これは、異界の扉がある黒国、自世界を守る魔人族に創造神から贈られたものだと言われている。


 しばらくの沈黙を破り、グレイは意見を述べる。


「エメリラルド国の女王陛下に提案してみてはどうでしょうか?」

「協力してほしいと。······不法侵入を取り消すために」


 それを聞いたディークヴェル王とレイモンド団長は、お互いに顔を見合せ「脅せと?」王は笑い、レイモンド団長は溜め息を吐いた。



本日、また投稿します

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