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~一章~ 黒国の使者



「「「団長、おはようございます!」」」



「おはよう!嬢ちゃん!元気になったか?」


「よう!フロー嬢!ちゃんと眠れたか?」


「フロー嬢。瞼は腫れてないようですね」



 朝食を食べるため3人で食堂まで来ると、先に食事に来ていた騎士団員のみなさんから声を掛けられた。



「おはよう!昨夜はご苦労だったな」



「みなさん!おはようございます。たくさん寝れましたので、元気です。ご心配お掛けしました」




「············おはようございます」


 フローが笑顔で元気に答えると、後ろにいるアルは小声で朝の挨拶をして『俺もいるんだけど···』と、すねている。




 朝食を終え、みんなで訓練場まで移動する。寮から少し歩いた先に厩舎が見えてきた。厩舎の前に訓練場があり奥には森が広がっているようだ。


 ここは王宮だと聞いていたのに、見回してもお城はどこにも見つからない『アル!何処を見てもお城が見当たらないわ』後ろを振り向きアルに問いかけると『城?この先にあるよ』森の向こう側にあるが、木が大木でかなりの高さがあり距離も遠いため、ここからでは見えないということだった。


 それと、森の中には危険な植物や魔獣もいるから絶対一人で森に入らないようにと約束させられた。



······黒フワに会わなかったら

  どうなっていたんだろう



 王宮はかなり広大だと聞いたので、昨日転移してきた場所は、森の中でも第一魔獣騎士団の厩舎近くに違いない。



 昨日のことを考えながら歩いていると、アルの父様に『私は騎士団の訓練があるためアルと厩舎に行くように』と言われ、ふたりで隣の厩舎に向かった。


 厩舎に入り魔狼たちからの視線を横に、朝の挨拶をしながら一番奥の房まで進む。



「おはようございます」


「あの子の身体の様子はどうですか?」



 母親の魔狼に話しかけると、その背後から灰白色の赤ちゃんが······赤ちゃんが?母の背中を飛び越えてフローの前まで歩み寄ってきた。


『元気になったよ!』


「············」


『フローが来るのを待ってたんだよ!』


『遊ぼう!』


「············」



······見間違え?


······聞き間違え?



 魔狼の赤ちゃん?この状況に頭がさっぱりついていかない。フローは魔狼から視線を離せずに隣にいるアルの袖をクイッと引っ張り、疑問を声に出してみる。


「聞きたいことが2つあります」


「私の目がおかしい?のかも···昨日の小さな赤ちゃん魔狼が、今日は大きく見えます」


 アルが魔狼を凝視しているフローを横から見て「ふふっ」と笑う。笑われたことに気づいたらしく、やっとフローの視線が魔狼から離れアルに向けられた。


「おかしくないよ!魔獣は産まれてから7日位で大人と同じ大きさにまで成長するんだ!1日でかなり大きくなるよ!」



「······えぇ?成長早すぎだよ。どう見ても私より大きくなってる。可愛いのは産まれた日だけななのね」



『ひどいよ。僕はずぅ~っとかわいいよ!』



 驚いたようにフローはまた魔狼に視線を戻した。フローの行動に「どうしたの?」アルがフローの肩を揺らす。



「······私は頭がおかしいんだわ」



「今度はなに?頭?」



「頭の中に声が聞こえるの」


「···ひどいって···僕はずっとかわいいって」




「······マジかよ」


 

 アルはビックリして少しの間、開いた口を閉じるのも忘れたらしく間抜け顔でフローを見ていた。







「リリーアニス女王陛下、サフィニア国国王陛下よりご伝言です······」


 ドアを叩くノック音がした後、黒国の王から使者が来たと、青国で付けてくれた護衛騎士から連絡があった。



「オブラニキス国から使者?何かしら······そのまま通してくれる?」



 黒国と緑国は表裏の地ということもあり国同士の交流などはほとんど無い。今回は青国の王弟の結婚ということで、黒国の王も祝辞に訪れているが、リリーは対面していないため挨拶も交わしていなかった。



「失礼します。突然の訪問にお時間を頂き申し訳ございません。私はオブラニキス国で国王陛下の第一近衛騎士団を任されております団長のライニングィ·ブラーキルと申します」


 使者は、濃いシルバーに藍色がかった短髪と同色の瞳に縦長の瞳孔を持ち、魔人族特有の長身で、大柄な体格だがキリリとした印象を与える青年だった。


「エメリラルド国女王のリリーアニス·ドゥルス·エメリラルドです。どうぞそちらにお掛けになって下さい」


 使者のライニングィ様に対面のソファーへ座るよう促した後、手ずから淹れたお茶をふるまう。


 するとライニングィ様は、恐れ多くて飲む事が出来ないという表情でいたが「ハーブティーはお嫌いですか?」一瞬悲し気な顔をした女王を前に飲まないという選択肢はなく、一気に飲み干した。


「とても美味しいお茶でした······」


 お茶のお礼を述べた後で、ライニングィ様が使者としての話を始めた。


「昨日の昼過ぎに、オブラニキス国の王城内に侵入者が現れたのです」



「侵入者?」



「はい。しかし、不思議なことに現れた侵入者は、その場で転移魔法を使い姿を消しました。······その者は、そのあと騎士団厩舎に現れて、今は騎士団の保護下に入っています」



 その者の特徴と本人の口から、子供のエルフ族だと断定したという内容だった。


 その者に心当たりがないかと聞かれる。



「······その者は多分···私の娘です。名前をフェアローラと申します。昨日、昼食を済ませた後でゲートを潜りましたが、自国のゲートに転移出来ずに行方不明となっていて······只今捜索中でした。保護していただいて感謝いたします」



 ゲートでの転移と名前の確認を任されていたライニングィは『今後のことは後程』と、部屋を後にした。


 リリーはニイルに魔通信で今しがたのことを話した。それと同時に、サフィニア国国王陛下に謁見の場を設けていただけるように護衛騎士に伝えた。『黒国に転移していたなんて·······』ひとまず居場所と安全が分かりリリーは胸を撫で下ろした。



 義兄様との謁見は直ぐ叶った。今回も情報が漏れないようにと配慮下さり、義兄様の私室にてニイルと三人で話すことになった。


「先ほど、オブラニキス国のディークヴェル王が予定より2日程早く帰国された。国に異例事態が起こったという内容での帰国だ」


 義兄様も異例事態の内容までは聞いていないらしく、リリーは黒国のライニングィ様との話のやり取りを手短に話した。


「侵入者扱いか···確か···オブラニキス国のゲートは城内に設置されていたはずだ。城の大きさはサフィニアの5倍は大きいからな······」



 それを聞いてニイルは苦い顔した。


「···兄上は、この後でディークヴェル王がどの様に動くと思われますか?」



「ニイル。白い地にてオブラニキス国の情報はそう多くはないが、今のリリーの話を聞く限り早いうちに謁見の話しがでるはずだ。···焦るなよ···きちんと話を聞け、騎士団が保護していると伝えてくれた。拘束したと言われた訳ではない」


 話しの結果、今は黒国からの連絡を待つしかないということになった。そして、リリーも今後に備えるために早い帰国をすることにした。



 その2日後に、黒国から魔封書が緑国に届いた。近い内、フローを迎えに黒国に渡れることになった。




本日、また投稿します

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