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~一章~ 父親天才?




 朝食の後で話があると父様から言われ、完成したばかりの弓を部屋まで取りに戻ってから談話室に来ると、父様と兄様たちはすでにソファーで母様が手ずから淹れてくれたお茶を飲みながら談笑していた。


「まぁ、完成したのね!素晴らしい弓に仕上がったわね」


 母様は、フローの手から弓を取ると、うっとり見つめながら誉めてくれた。


 父様に座るように促され、エルク兄様の隣に座る。


「スリムな弓になったな。フローは、弓の名前を何て付けたんだ?」


 エリク兄様に名前を聞かれ、得意気に話す。


「ミラクルアローで、ミアよ!カッコいい名前にしたのよ!素敵でしょ」


「「「······」」」


「······さ、さすがフロー。いい名だよ」


 フェン兄様、多分誉めてくれた?と思う。



 母様がフローのお茶を用意したあとで、父様の隣に座りと、父様が話し始めた。



「私はこの五日間休暇をいただいて、黒国に三日間滞在していたのは知ってるな」


 この三日間、父様は黒国に滞在して専用ゲートの設置や、ヴェル様とゲートの使用についての話し合いをしていた。



「転移先は第一魔獣騎士団寮になったよ」


 なぜか父様は暗い顔をして、フローに視線を向けていた。


 緑国の専用ゲートは、家の裏にある噴水の先に青国の父様の騎士と家の執事やシェフ、庭師等が住んでいる寮があり、その西側にあるゲート部屋の1つに設置されたという。


 新たに作られたゲートは人物認識機能が備わっているため、通過出来る人物を両国から5名づつ選出するということになったらしい。


 ゲートを通過する際の護衛は無しとし、必要なときは転移先の国の方で転移者の護衛をつけることが決められたということだ。


「緑国の5名は、うちの家族全員となった。黒国では、レイモンド·ギャリマ様とその令息のアルフォード様、それとフローの友人だということでライファネル·ルノー様とディアラ様のご夫婦、最後に······ディークヴェル·ファント·オブラニキス国王陛下···の5······」



「「「「こ、国王陛下ー?」」」」


 父様が最後まで話す前に、家族みんなが驚愕し、声までハモってしまった。



「ニイル、どういうことですか?」


 母様は仁王立ちになり、父様を横から見下ろして説明を求めた。


「レイモンド·ギャリマ様と令息のアルフォード様は、魔獣の関係でフローが行き来しているときに、何かあればすぐ知らせに行けるだろうと、それにフローを保護して下さっていた方だったので、こちらとしても有難い申し出だった」


「そうね、とてもありがたいわ」



「次に、ライファネル·ルノー様とディアラ様だが、フローの話す緑国に大変興味を持ったらしくフローの育った緑豊かな国を見てみたいということで、お世話になった方への恩返しという訳ではないが素晴らしい我が国を満喫して欲しいと思い決まった」


「そうね、お世話になった方ですものね」


「それと緑国での5名は、フローが黒国に行くにあたり、一人では心細いときもあるだろうから家族の誰かとなら安心できるだろうし、黒国に家族旅行でもどうかと···ディークヴェル王が気を遣ってくださり···」


「それで?」


「フローが黒国に転移してしまったため迷惑をかけてしまったこともあり、疲れ果てたときに自然の癒しって最高ですよねってことで、私も癒されたいとディークヴェル王が最後の一人になりました」



 途中から右手を額に当ててながら呆れ顔で話を聞いていた母様は、父様の話を最後まで聞いた後「何が最後の一人になりましたなのよ!」夫婦喧嘩の幕が切って落とされた。







「エリク兄様、用意できた?」


 エリク兄様の部屋をノックすると「今行くよ」中から返事を返されたあと"ガチャリ"ドアが開かれた。


 今から黒国に儀式後初めて家のゲートを使って転移する。急成長も、緩やかになり落ち着いてきたので両親から転移の了承をやっと得られた。


 そして、エリク兄様が付き添いだ。


「迷ったんだが、正装にしてみたんだ」


 昨夜から服装を気にしていたエリク兄様は、正装を選んだらしい。


「普段着で大丈夫って、言ったじゃない」


 初めて黒国に行くのに、普段着じゃフローの兄として挨拶するとき恥ずかしいと言う。


「女王の息子って、人族で言えば王子じゃん」


 などと顔を赤らめている兄の気持ちはとても嬉しいが「王子だなんて···」引いてしまった。


 エルフ族は民衆の中から選ばれた者が王になる。なので王族、貴族などはいないのだ。王の子も民衆の中のひとり。


 ただ、家の場合は少しだけ事情が変わっている。青国の王弟であり魔術最高位の位を得ていて門外不出の魔術をも扱う父様は無理矢理母様に婿入りしたので、青国では爵位はないが王族扱いになっているのだ。その為、他国での催しに家族での参加があるときなどの為に、兄達は正装を何着か持っている。


「あっ、母様から預かった手土産忘れた。さっき談話室で渡されて、テーブルの上に置きっぱなしだ。取ってくるから裏口で待ってて!」


 そう言いながら、エリク兄様は走って行く。


······正装のときは走っては行けないと学んだことをすっかり忘れているし



 裏口でエリク兄様を待つ間、ポケットの中を覗いてみた。大きなつぶらな瞳を閉じてスヤスヤ寝ているサラマンダー。今日でしばしの間お別れだ。数日間だが毎日寝食を共にしていたし、いつでも肩や頭の上に居てフローの体から離れなかった。


 昨夜、ベッドに入る前にサラマンダーに沢山話し掛けたことを思い出す。



······アルのことお願いね




「待たせてごめんな!行こうか」


 エリク兄様は、少し大きめな木箱を抱えていていた。


「それ、手土産···なのよね?」



「······あぁ、母様が箱の中に手紙を入れてあるからって言ってた」



 ゲート小屋の一番奥の小部屋に二人で入ると床の上に書かれている魔術陣に驚かされた。何とも細かい。細かすぎる程の術式が複雑に組んであることが見てすぐわかった。



「凄い小さい文字が沢山。5つの主円の中に更に複雑に組まれた円があり、その中にも·····」



「······凄いな······こんなの見たことないよ。王宮のゲートより細かいな」



「エリク兄様、父様ってもしかして······天才なんじゃない?」



「今更だろう。なんじゃない?って······天才だから、青国が必死で父様に逃げられないように特別扱いしてるだろ」


 家の倉庫は、沢山の青国からの貢ぎ物だらけだろう?とエリク兄様は呆れた顔でフローを見下ろして言う。


 倉庫の中など見たことがないと言うと、帰ってきたら見た方がいいよ「宝がザックザク」と悪徳商人のような微笑みでフローを笑わせた。







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