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~一章~ 執事とシェフ



 朝食後、母様に呼ばれた。


「「「「「また何かしたのか?」」」」」」


 兄二人、従兄弟三人で、はもってるし。


「何でもない」


 デザートは、母様と話し終わった後に食べるからそのままにしていて欲しいと兄に言伝てを頼み、急いで書斎に向かった。


 ドアをノックすれば「どうぞ」中から返事を返され、ドアが開かれた。


 執事のマーティンさんが優しく微笑んで、母様の向かいのソファーに座るよう促してくれ、ハーブティーを2つテーブルの上に用意してくれると、書斎から出ていった。


「······昨夜は、何処に行ってたの?」



「北の丘よ」



「······何をしに?」



「守り石を作りに」



「······何故、夜中なの?」



「なんとなく、感で」



「······成功したの?」



「うん」



「······見せて?」



「はい」



 肩からサラマンダーを下ろし手のひらに乗せて、それを母様に見せる。


「······何も無いわよ?」



「えっ?見えないの?」


「トカゲって言って、母様ビックリしてたじゃない?」


 手のひらの上で目をパチパチさせているその子に姿を見えるようにお願いすると、コクコクと二度ほど頷いてフローにウインクを飛ばしてきた。



「あっ!昨夜のトカゲ?」



「トカゲじゃないわ。サラマンダーよ」



「······え、······サ、サラマンダー?」



 親が私だから、名前を付けなきゃならないんだけど、アルと一緒に考えようと思っている事をサラマンダーに伝えたところ、それまではサラマンダーのままでいい?って聞いたら頷いてくれたので、まだ名前はないと話す。



「······そ、そう」



「そうよ!炎も吐くわ」



 小さい炎を吐いてみてほしいとサラマンダーにお願いすると、緑色のキラキラしたつぶらな瞳を潤わせ二度頷く。愛らしい小さい口をぱかっと開いて緑色した炎を吐いてみせた。



「······本当だわ。この子はどうしたの?」



 簡単に、昨夜の出来事を母様に伝える。


「頭の整理が追い付かないわ。精霊王に会ったのよね?その王は、ばあちゃんを知っていたのよね?」


「うん。私が孫だって気づいてたよ」


 ひとまず、母様はパーリンばあちゃんと話をしてみるから、それまではサラマンダーの姿を誰にも見せないことと、昨夜の話しは誰にも言ってはいけないと約束させられた。



 デザートを食べるのに、書斎から戻ってテーブルのスプーンを持つと、執事のマーティンさんが来て「サイガ王子からお手紙を預かりました」ニコニコして渡された。白い紙には『先に厩舎に行ってる』と書かれていた。


「マーティンさん。一人じゃ美味しくないから、一緒にデザートを食べて欲しいです」


 実は、マーティンさんはデザート仲間なのだ。今朝のデザートは、以前マーティンさんと考えたものだ。


「仕方がないですね」


 すぐにマーティンさんの分も用意してもらう。


「ラズベリーとワイルドベリーは、昨日ゼンと採ってきたのよ。それで、マーティンさんが言ってたように紅茶にベリージャムを溶かして、それでゼリーを作ってもらったの!それらをカップに入れるだけ!······だったはずが、イマイチだったらしく、またシェフのダフルスさんが一味加えたのよ」


 すると、ダフルスさんが自分の分を持って、テーブルについた。自信満々だ。


「今回も私の勝ちだね。まぁ、食べてみて!」




「········ん、甘酸っぱくてサッパリだ」


「確かに、美味し過ぎるわ」


 さすがシェフ。足りない部分を毎回補って完璧なデザートに仕上げている。


 今回は、何を足したのかマーティンさんがダフルスさんに尋ねると、酸っぱさを和らげるのに爽やかミントを足してローズシロップで絡めたと言う。


 この一品も『フロー&マーティンのデザートレシピ集』に書き加えておいたよと、ダフルスさんは満面の笑みで話す。


 後日、レシピ集の一番前にダフルスさんの名前を大きな字で入れといた。







「フロー!遅かったね。叱られてたの」


 厩舎前でダリルに声を掛けられた。


「あっ、ごめん!デザート食べながら話しに夢中になっちゃってた」


 弓を持ちダリルと弓場へ向かう。すると前方からウィル兄様が走ってきた。


「今日は家庭教師の先生が来れなくなったと聞いたから、午前中はフローに合わせて僕たちも弓の練習に参加したんだ」


 せっかくだからフローとみんなで一緒に出来ることにしたと、ウィル兄様が息を切らして話している。


「フローとオレが普段やっているやり方がいいって言うからさ、走って一本、走って一本をやってるんだ」


 ウィル兄様の後ろからゼンが顔を出す。



「えぇ?······ゼン、そんなことさせてたの?」


「どう見たって、ひ弱な三人じゃない!多分五回も出来ないし、的にも当たらないわよ。相手は王子よ!無礼よ」


·······ん?



「でもさぁ、的見てみろよ!俺だって色々考えてさぁ」



「な、何?······あんな巨大な的、大き過ぎて的っていわないわよ」



········んん?


······見られてる?



「走る距離だって、一応考えて厩舎周りを一周にしたんだ。短過ぎるけど」



「そうなんだ。ごめんごめん!ゼンも色々考えてくれたんだね。まぁ~それでも明日は筋肉痛で、のたうち回りそうだけど。ふふっ」



「多分、そうだろうな!ハハッ」



·········んんん?


······悪寒がする?



「「「お前ら~」」」


 冗談が過ぎましたと、深々と頭を下げて兄と従兄弟達に差し入れのお茶を注ぐ。その間にゼンはいつもの的に交換していた。


「私も時間がないから訓練始めるね。兄様達は見学しながら少し休憩してて!そのお茶、美味しいよ!私がブレンドしたのよ」


 ゼンが先に静止している的に5本の矢を射る。その後連続3本を三回、連続5本を三回、最後に連続10本。すべて的に当てた。


 ゼンが的当てしている中、軽くストレッチを終わらせ、同じく今度はフローが構え始める。次々に矢は放たれ、すべて的に当てた。


 続いてゼンは奥の的に同じ様に矢を放つ。飛距離は倍の長さだ。


「クソ!」



「2本外したわね。次は私ね」


 フローも狙いを定めると、一度深呼吸をした後で一気に矢を放ちだした。


「お前もな!」



「あー、悔しい」


 その後、すぐさま二人は駆け出して放った矢を回収して戻ってくる。


「そろそろ時間じゃないか?」


「うん。お茶だけ飲んでから行こうよ」


 弓と矢を片付けてからテーブルまで来ると、

突然の拍手の荒らしが待っていた。


「ふたりとも、凄いよ!是非、その腕をサフィニア国で活かして欲しい」


「ウィル兄様、エルフ族ならこのくらいは当然誰でも出来ます。私はまだ8歳になったばかりの子供ですよ」


「えっ!······フェン兄様とエリク兄様は出来ませんでしたよ」


 ダリルは空気が読めません。


「それは恐らく、父様の血を濃く受け継いでいるからでしょう。ふふっ」


「······」「······」


 兄様二人は弓が苦手なので、シュー様に無理矢理練習させられてるときは、極力見て見ない振りをしてあげている。


 そんな中、サイガ兄様は否定的だった。


「危ないことはやめた方がいい。逆に的が自分だったら、フローが射抜かれることになるんだぞ。戦士や騎士とはそういうものだ」


「サイガ、どうしたの?今日はなんだかおかしいよ?フローの事が心配なんだよね!分かるよ、めちゃくちゃ可愛い妹だからね!性格以外は······」


 エリク兄様が冗談混じりで話をすると、サイガ兄様は見る見るうちに顔を真っ赤にし、耳まで赤くなり出した。



······えっ?


······顔を真っ赤にして怒り出した?


······なぜ?何かしたっけ?



「フロー、時間だから行こうぜ」


 ゼンに声をかけられ、その場から立ち去ったが、あれは何だったのか?



「昼食食べたら話があるから、食べ終わったらすぐ俺と厩舎まで移動するぞ」



「わかった。何かあったの?」



「後で教えるから」



「わかった」


 めちゃくちゃ困った顔で苦笑いするゼンの顔を初めて見た。





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