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~一章~ 3つの守護石


 サフィニア国では、明後日の結婚式を前に各国の来賓方が次々と王宮に御祝いに訪れているため大人たちは忙しいらしく、フローは離宮の庭園にある四阿で、侍女さんを無理矢理誘いカードゲームで遊んでいた。


 そこに、エリク兄様と従兄弟のサイガ兄様、ダリルが来て


「今から三人で厩舎に行くんだ。空き馬房の中に猫が住み始めたんだって!」


 エリク兄様が言いながら足早に通りすぎた。


 青国の第二王子がサイガ兄様でエリク兄様と同い年、ダリルは第三王子で私と年が一緒だ。



「猫ちゃんがいるの?見に行きたい!」



 それを聞いたダリルが足を止め


「フローも見たいの?こっちだよ!」


 手を差し出してくれた。



「うん!」


 ダリルの手をとり侍女さんに遊んでくれたお礼を言ってから、先に行ったふたりを追い掛けるように厩舎へ向かった。



 それは、一番奥の使われていない馬房にいた。



「「「「······猫じゃない」」」」



 アライグマだった。猫は希少動物のため、野生になると滅多にみることがない。


 フローは少し不思議な子であり、気がつくと動物たちとすぐ仲良くなって遊んでいる子だ。···と言うか、動物から慕われている子供だ。そのため家には毎日リスやアライグマ、キツネが遊びにやって来るのだ。



「アライグマさん、また遊ぼうね!」



 帰りも置いていかれないようにダリルと手を繋いで、四人が厩舎を出ると、前方には馬に跨がったフェン兄様と第一王子のウィル兄様がいて、こちらを見て微笑んでいる。


「やぁ!フロー!」


「少し見ない間に大きくなったね!」


「シルバーグリーンの髪とグリーンブルーの瞳が、日差しを浴びて輝いているよ。まるで妖精のようだ。···ところでふたりは、将来を誓い合う仲にでもなったのかい?」


 ウィル兄様に何を言われたのか訳がわからなかったが、ダリルは理解したらしく、顔を真っ赤にさせてフローと繋がっている手を離した。



「ウィル、あまり茶化すなよ」


 フェンが呆れ顔でウィルを睨むと『だってズルイだろう』と、ウィルがフローを見て


「フロー、こちらにおいで!」


「ウィル兄様が久しぶりに抱っこしてあげるよ!抱っこ好きだよね?」


 いたずらっ子の様な微笑みに


「私はもう小さくないので、抱っこはしなくていいです。でも···お姫様抱っこはしてもらいたいですっ」


 そう言って、馬から降りたウィル兄様に抱きつくと、ふわりと横に抱きあげてくれた。


「ハハハ······ナイト役は僕でいいのかな?フローは妖精じゃなくて、お姫様だったのか!」



「ご本を読んだときに書いてありました。王子様がお姫様を抱っこするって、なのでウィル兄様しかフローを抱っこ出来ないでしょう?」



「サイガとダリルも王子だよ!僕はフローの特別な王子さまなのかな?可愛いな」



「サイガ兄様とダリルは、まだダメなのです。だって、まだ背が低いから。ウィル兄様は背が高いからです」


 


「······特別ではないのか」







 部屋に戻ると騎士の格好をした人が来て、父様が呼んでいるという。侍女さんと一緒に騎士さんの後に付いていく。


 王宮内はとても広く、父様のいる部屋の前までかなり歩いた。侍女さんは途中何度か不思議そうな顔をしていた。


 騎士さんがドアを叩き「フェアローラ様をお連れしました」と言うと、内側からドアが開いた。



「フロー、入りなさい」


 父様は、サフィニア国の魔術研究局でお仕事をしています。


 結婚するときに、母様はエメリラルド国の女王だったため、色々大変だったらしい。


 本来なら、結婚後はエメリラルド国で仕事をするはずが、父様はサフィニア国の筆頭魔術師であったため、自国で働くことを条件に最終的に母様との結婚を許されたと言っていた。



「ここに着くまで、かなり歩いただろう?そこに座りなさい」



「とっても!一人では帰れないくらいに歩きました」



「フローのために、変わった味の美味しい飲み物を用意したんだよ。たくさん歩けば喉がかわくと思ってね!」


 父様はクスリと笑う。


「リン···飲み物を頼む」



 すると、父様の後ろから長身の魔術士さまが、グラスの飲み物をテーブルの上に置いてくれた。

 グラスの中には下から上に向かって小さい何かが動いている。



「最初は、少しだけ口の中に入れてごらん」



ちょっとだけ飲んでみる。


「痛い!父様、お口が痛いです」



「それは炭酸水というんだ。そして、その中にある飲み物を加えると···」


 長身の魔術士様は、ガラスのティーポットを出した。中には数種類のベリーが入っている。そこへ紅茶を流し込み3分蒸らしたあと、先程の炭酸水にそれを注いだ。


「もう一度飲んでごらん。もう痛くないから大丈夫だよ」



 恐る恐るグラスを口に当てて、少しだけ口に入れてみた。そして一気に飲み干した。


「父様!おかわりですわ」


「すごく美味しいです。私は、これを毎日飲みたいです」



 すると、それを作ってくれた、長身の魔術士さまが「ぷふっ······申し訳ございません」コホンと、ひとつ咳を鳴らした。


「可愛らしいお嬢様でいらっしゃいますね」



 良く見ると、肩まであるプラチナの髪を少し先が長く尖った左耳後ろにかけ、透き通った紫色の瞳は、濃い色から瞳孔へと中心にかけ藤色に···そして、肌の色が少し暗い色をしているが、かなりの美丈夫だ。フローは、魔術士さまの絵画から抜け出たような美しい容姿にくぎづけになった。



「素敵です!初めて父様よりも美しい男の方を見ました。結婚して下さい」



「······リン!······娘を誘惑するな!」


「今すぐ解雇だ!」



「閣下、私は誘惑などしておりません」


「フェアローラお嬢様。とても嬉しいお言葉ですが、私にはすでに妻がおります。私の国では、一夫一妻制なのです。伴侶は無理ですが、お友達にはなれますよ。小さなレディお友達になっていただけますか?」


 芸術作品の様な顔で、「リンとお呼び下さい」とても美しい微笑みを浮かべる。



「お友達になりたいです。よろしくお願いします。フローとお呼びくださいね」



 愛称呼びは、親族と婚約者以外は駄目と父様は言うが、リン様が「人族と違い、エルフ族は誰とでも呼称呼びですよ!」と、父様はだまるしかなかった。


 話によると、父様とリン様は魔法大学時代の同級生で大の仲良しだったらしい。リン様はダークエルフ族で、今は魔術の研究を手伝ってくれているので青国に滞在しているが、そのうち紫国に帰るとのこと。


「ここにフローを呼んだのは、今朝方預かった守護石なのだが...収納用のチョーカーに新たな魔術式を施したんだよ」


 父様から返して貰った、チョーカーを首にもどした。ガラスの収納ケースが付いていて、中にはフローの守護石が三個入っている。これは、生まれてすぐにお臍からもげた石で、体内に戻す儀式が終わるまで、いつも肌身離さず持っている。戻すといっても飲み込むだけで、魔力が溢れる様な感じだったと、兄様たちが言っていた。



「おや?珍しい守護石がありますね。」



「リンは、守護石に詳しいのかい?」


「私は全くで、リリーにもこの黒いのが分からないらしい。守護石を宿すのは、エルフとダークエルフだけだから···情報が少なくてな」



「詳しい訳ではないので、ご期待に応えられるか分かりませんが···」


「ひとつ目は、エルフの源エメラルドですね。

しかし良く見ると、恥の方がやや透明になっています。ダイヤ石混ざりのようなので、多分この石の属性は風と氷でしょうか。そしてふたつ目の石はオパールですね。クリアに近く虹色が綺麗ですね。こちらは聖属性ですね。最後の石は、漆黒の中に緑を主体に虹色が入ってますね。ダークオパールでしょう。こちらはほとんど文献がなく、ダークエルフ族が宿した者の守護石持ちは、知られている中でも過去ふたりしか存在しておらず、属性は分かっていません」


 父様とリン様で守護石について話をしているが、良くわからず首を傾げていると、「ひとつは風と氷、白いのは癒し、黒いのもオパールだから癒しに関する石だと思うよ」と教えてくれた。


 その後もう一度、シュワッとするベリーティーをもう一杯飲んでから離宮の部屋に戻った。

 


 何故か帰りは、行きより距離が短かった。



本日、また投稿します

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