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~一章~ 別れ


 ······このバーベキュー


 ······バーベキュー?



 団員達は吊り下げてある魔牛の肉を火魔法を使い炙り焼きにして、焼けた部位から風魔法で肉を削ぎ落としているし、魚介類は氷魔法でキンキンに凍らしてあり、それを網の上に置いて魔法を解除した後、水魔法と火魔法を合わせた蒸気で、蒸し焼きにしている。

 薬草を使ったサラダは、水魔法で洗った後に風魔法を使い小さな竜巻を起こし回転させ水分を飛ばしながら程よい大きさに切られ皿に盛り付けている。



「「「バーベキュー、結構しんどいな」」」



 焦げないように火の微調整が······、肉の削ぎ落とす厚さの微調整が······、水を蒸発させる程度の水を出し続ける微調整が······かなり難しいなどと団員たちが話し合いをしながらバーベキュー?を進めている。



「エルフ族、凄いな!」


「細かな調整、やはり繊細な種族だからな」


「魔力練りも俺らじゃ無理だし」



 みんな何を言っているのか、全く理解できない。どうして魔法料理になってしまったのだろう。そもそもエルフ族って関係ないよね。


 会場は野外ってことが決まっていたし、第一魔獣騎士団なみんなと会食するなら、母様が好きなものと一緒にすれば一石二鳥かなと思ってバーベキューの案を出したけど。


 魔族はバーベキューやったことない?そもそも知らない?······でもグレイ副団長とは意気投合して決めたわけで、知らないはずないよね。

 

 みんなの様子に気をとられていると、突然後ろから耳元で声を掛けられた。



「どうだ!第一魔獣騎士団の連携プレイは······」



 グレイ副団長がニヤリ顔をした後「ぷっ」吹き出して笑い出した。


「嬢ちゃんの冷めた目!ぷっ······」



 魔法を使ってのバーベキューは、グレイ副団長が考えたものだった。普通じゃつまらないだろうと思い、魔法訓練しながらだと笑いながら言う。


「王たちがいる上座の方を見てごらん」


 言われたまま振り返ってみると、そこのテーブルの前には簡易的なキッチンスペースがあり、モンド様率いる数人のシェフ達が腕を振るっている。「流石にあのテーブルにはね」苦笑いをしながら騎士団のテーブルへ戻って行った。


「フロー!焼けたよ」


 アルが大皿にお肉を持ってフローを呼ぶ。テーブルの上には凄い量のお肉と魚介類が焼き上がっていた。

 アルの隣に座るとライ様が氷の入ったグラスに薬草茶を注いでくれた。


「ありがとうございます」


 トングを使って肉を数枚、自分のお皿に乗せタレをかけ、一口食べてみた。すると、口に入れたはずのお肉はほとんど噛まずに蕩けるように喉を伝って胃に収まった。大皿からお肉を追加しようとするが、早くもお肉がなくなってしまっていた。魔牛を炙り焼きしている前には列が出来ていて、いつの間にかアルも並んでいる。魔牛恐るべし。待っている間に魚介類をいただく。巨大エビにかぶりつくとプリプリとした食感で、甘くてジューシー。



「フロー嬢、サラダもどうぞ」


 薬草サラダ、蒸かし芋と温野菜が盛り付けられたボウル皿をライ様から受けとる。

 サラダにはシトラス風のドレッシングが掛けられていて、食べた後は口の中に残ってた脂が洗い流されたようにさっぱりした。


「お待たせ!」


 そう言ってアルは、焼きたてのお肉をテーブルに置くと、またお肉の列に並びに行った。席を立ちアルと交代しようとすると、ライ様に座っているように言われる。


「アルはフロー嬢に沢山食べさせるために頑張っているので、そのまま座って食事を楽しんで下さい」


「でも、それではアルが食べられないです」


「少しすれば皆さんも落ち着くでしょうから、アルも席に付きますよ」


 奥さん子供を養うのは旦那の仕事だから、気にしないで沢山食べましょうと、ライ様が微笑みながらフローのお皿のお肉に香草タレを掛けた。全く意味が分からないが、とりあえず頷いてからお肉を口に運んだ。


······アルが食べ始めたら、

   アルの食べるお肉を取りに行こう


······それとデザートは、

   最後に一緒に食べよう


 何のデザートを食べようか考えながら、アルが持ってきてくれたばかりのアツアツのお肉を頬張った。




 バーベキューも終盤に差し掛かり、みんなでデザートを食べていると「私も御一緒したいのですが」母様が私達のテーブルにやってきた。


 ライ様が「こちらでよろしいですか」席を立ち椅子を引いてくれ、そこへ母様が座った。


「母様、こちらの席にきて大丈夫?」


「ええ、ディークヴェル王には皆様との交流に許可をいただきました。大丈夫よ」


「あっ、母様、皆を紹介しますね」


 一緒のテーブルに座っていた皆を紹介した。母様も改めて自己紹介をし、ライ様が淹れてくれた薬草茶を一口飲んだ。


「フェアローラがこちらの国に来てから、皆様にお世話になり大変ありがとうございました。皆様に会えず危ない場所に転移していたら、この子が生きていたと思えません。心から感謝しています。本当にありがとうございました」


 母様は、深々と頭を下げそのまま話を続けた。

 

「この後、フェアローラを連れて自国に帰ります。ディークヴェル王からフェアローラが守護石を与えた魔狼の話も聞いております。一度国へ帰って守護石の儀式をし、石が身体に馴染んでからに成りますが、こちらに魔力を授けに戻らせますので、そのときは皆様またお世話になりますので宜しくお願い致します」



「母様!······私······」


「第一魔獣騎士団の団員になったの」


「魔狼の名前は、レイ!私、レイの主なの」


「私とレイの訓練は、ここでしか出来ない」


「アルとも、ずっと一緒にいたい」


「私は将来、オブラニキス国の第一魔獣騎士団で働きます。これは決定事項です」



 とりあえずフローは、言いたい事だけ言ってみた。最後まで口を挟まず母様は聞いていた。



「そう。魔獣騎士······素敵ね。たくさん努力しないとね!応援するわ」


「ただ、アルフォード様と一緒にいたいとしても、相手の気持ちだってあるのよ。無理矢理フローの気持ちを押し付けてはいけないわ」



 するとアルが立ち上がった。



「リリーアニス·ドゥルス·エメリラルド女王陛下。フェアローラ嬢が話したこと、私、アルフォード·ギャリマも同じ思いであります」


 第一魔獣騎士団の各テーブルから拍手が舞い上がった。







「サフィニア国王弟殿下と話し合いの後、予定が立ち次第連絡をいただきたいのだが」



「もちろんですわ」



「何から何まで······そちらに押し付ける様なかたちになってしまい。すまない」



「とんでもございません。こちらとしても、ご迷惑を掛けてしまいました」



 ゲートの前では、母様とヴェル様が話している。その隙にレイモンド団長に「出来るだけ早く戻ってきます」レイをお願いした。ぼやけた視界に写ったレイモンド団長は、優しい笑顔で頷くと何故かポケットからハンカチを取り出してフローの頬をそれで撫でた。



「フェアローラ、帰りますよ」


「はい。母様」



 母様に呼ばれゲートに入る。



「戻りをみんなで待っているよ」


 レイモンド団長が言うと、同時に視界が揺れ動く。次の瞬間、エメリラルド国王宮のゲートに二人は立っていた。







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