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~一章~ 第三魔獣騎士団2


 リゼ団長に手を引かれ、奥の扉から厩舎を出ると、その先は断崖絶壁だった。


 切り立った崖には、所々に穴が空いている。



「大丈夫?怖くない?」


 実は、フローは初めて断崖絶壁の上に立っており脚が震えていたのだが、リゼ団長がフローを気遣ってくれているのが分かるため「大丈夫です」と言った手前、申し訳ない気持ちになり、「怖くないです」と言ってしまった。



「じゃぁ、行くよ!」


「カーイ!!」


「飛ぶよー!!」



 次の瞬間、リゼ団長はフローの手を握ったまま······崖の上から跳んだ。そして、跳んだと同時にお姫様抱っこされ、急降下したのだ。


「······!」


······怖すぎて、叫ぶことも出来ない


······これ、終わった感じだ


······ぐじゃぐじゃになって、死んだ




「フロー!見てごらん、綺麗な景色だろう!」



 跳んだときに、怖くて目をギュッと瞑ったまま目を開くのが怖い。



······綺麗?天国の景色?



「······ごめん。怖かった?もう大丈夫だよ」


 


·······う、浮いてる?


······でも、目を開くのが怖い



 閉じた瞼が恐怖で固まったままだ。



「ごめんね。フローが、怖がっていたのを分かっていたんだ」


「でも、久しぶりにできた小さな友人に、私の世界を見て欲しくて」



 悪ふざけが過ぎたと、リゼ団長は謝って降下を始めた。


「待って下さい!」


 勇気を振り絞って「リゼ団長と、綺麗な景色を一緒に見るんです」だから降りないで下さいと伝えた。



「······無理しなくていいんだよ!」



「大丈夫です。無理じゃないです。今、目を開きますから」



 頑張って、ゆっくりだが瞼を持ち上げると、

心配そうに眉毛を下げ、今にも泣きそうなリゼ団長の顔が目の前にあった。フローは、どうにか笑顔を作った。



「大丈夫です、もう慣れました!リゼ団長と一緒に綺麗な景色を見たいです」



「ふふっ、ありがとう」


 リゼ団長は涙ぐみながら優しく微笑むと、バサリ、バサリと音を立てながら上昇し始めた。



······ん?


······ん?


······は···羽?


「リ、リ、リゼ団長」


「背中に、巨大コウモリがいるのですか?」


「は、羽が······」



 キョトンとした顔で、フローを見下ろしたリゼ団長は一気に吹き出した。


「コウモリ?あっはっはっ!」



 笑いながらの空中飛行は、かなり揺れるのですが「笑いすぎでは?」ふてくされたように言うと「ごめん、ごめん」魔族は羽がある人もいるんだよと教えてくれた。


 これにはビックリした。姉弟だけど、グレイ副団長にはないらしい。今はなくても、条件を満たせば羽が生えてくるのだという。



「さあ、ここから見る風景は絶景だよ!」



·······凄い!······空を飛んでる



「凄いです!あっ、魔鳥たちがあんなに!」



「······魔鳥?」



「あそこです!」



「······どこに魔鳥?」



「魔鳥達が、こっちに向かって来はじめましたね!一緒に空を飛べるなんて、とっても楽しそうです!」



「······あれ······ワイバーン······だよ」



 フローは、よく見た。凝視した。



「フローと一緒に空にいると、面白過ぎて飽きないわ!楽しいね!」



······本日二回目。死んだ


······リゼ団長に抱き抱えられて


······噛み殺されるんだ



「小型ドラコンは、草食だよ!」


「ぷふっ······」


「ぷふふっ······」



 考えている事が丸わかりだと、リゼ団長は口を手で押さえながら、笑いを堪えるのに必死だ。


「あのワイバーン達はみんな、とっても良い子ばかりで、魔狼よりも人懐こいの」


「私の相棒を紹介するわ!」


「何と!私の頭上にある雲の中に隠れているように言っておいたの」



 呼ぶまで、近くに隠れさせていたらしい「驚いた顔が見たくて」と申し訳なさそうにサプライズプレゼントしようと思ったと言われれば、初めて会うフローのことを、事前から色々考えて歓迎していてくれた事を改めて痛感し、心が温かくなった。


 そして、リゼ団長が「呼ぶよ!」上の雲を見ていてと言われ、フローが雲を見上げた。


「カーイ!」


「今だよー!出て来ていーよー」



『おせーよ!!』


 雲から頭を出したそれは、頭だけでも大きくて、金色の鋭い眼光がフローを捕らえる。それからゆっくりと、首、胴体、尾と続き姿を現した。ダークシルバー色をしたそれは、大きく翼を広げ、風を出さないようにゆるりと二人の周りを一周してから目の前で止まり、右の前脚をフローの前に出した。



······何か掴んでいる?



「フロー、怖くない?大丈夫そうなら両手を出して、お皿を作ってみて?」



 初めて見るワイバーンの姿に度肝を抜かされ思考が止まり、何が何だか訳が分からず固まってしまった。


 カイが持ってるプレゼントを、フローに渡したいとリゼ団長から言われ、恐る恐る両手を前に出すと"ポトッ"と、手の上にプレゼントが落とされた。


「凄いでしょう!カイだけなんだよ!空を飛びながらの至近距離を保てるの」


 その後もリゼ団長は、いかに相棒が凄いかを力説している。



·······これは何?


·······茎の束にリボン?


······もしかしたら、薬草?



「次はカイの背中に乗って、あの崖の向こうに行くわよ!」



「······乗っていいのですか?」



「うん!怖くないよ!このまま一緒に乗るから大丈夫だよ」



 崖の向こうでは、グレイ副団長が2頭の子魔狼と、フローが来るのを首を長くして待っていた。

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