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~一章~ 第三魔獣騎士団1


 後ろからグレイ副団長がフローを支えてアナ姫に跨がり長い森を抜けると、あちこちに大きい水溜まりがある草原が広がった。

 その水溜まりの周りには、何故か「大玉スイカ?」みたいな物が、たくさんある。


「ははっはっ!嬢ちゃんは、食い物しか頭に浮かばないんだな」


 スイカではなく「魔蛙が寝てるんだ」副団長のグレイは片手をお腹に当てて大笑いだ。食い意地張ってる訳ではない。魔蛙なんか知らないし聞いたこともないのに失礼極まりない。腹が立ったので、ちょっとだけ悪戯で軽く肘打ちしてみる。


 次の瞬間「危ねっ」······落ちそうになった。



 アナ姫はグレイ副団長の魔狼だ。笑い転げて落ちそうになった事をアナ姫に怒られたらしく、その後アナ姫の機嫌を直すのに一苦労していた。




 今、第一魔獣騎士団は第三魔獣騎士団の本拠地に向かって移動している。


 団の最前を任されたのは、レイの母親魔狼ミゼルだ。


 その後ろでアナ姫が、グレイ副団長の指示をミゼルに伝える仲介役をしている。


 そして、アナ姫の左にレイ、右にはレイの姉さん魔狼が続き、後ろには団員達が各々の魔狼と共についてくる。草原を第一魔獣騎士団全隊で走り抜ける様は何とも威圧的である。


 今回の大移動は、新入り2頭の魔狼を第三魔獣騎士団に紹介と言う名目の散歩らしい。


 飴もどきを取り入れ休憩後に出発したが、魔狼の脚で40分程で到着する予定が、フローとちびっこ2頭がいたため、間休憩を挟み走ることとなり、到着予定時間がかなり過ぎることとなった。






 第三魔獣騎士団に到着すると、訓練中の騎士達の中から、誰かこちらに向かって歩いてくる。


 黒を基調にした上着の短い団服に身を包んだ女性だった。


 ショートカットの濃いシルバーに薄いピンクが入った髪は、風に揺れると陽射しを反射して、フワリとした淡い雰囲気をかもし出し、瞳は縁の濃いシルバーに内側に向かい薄いシルバーピンクの瞳に縦長の瞳孔が入ったアーモンド型の鋭い目がとても印象に残る人だ。



 グレイ副団長が「遅くなって、悪かったな」

挙げた右手を軽く振った。



「本当に、白いのがいる!」



「グレイのことだから冗談だと思ってたけど、本当だ。白い魔狼なんて······凄いな」



「良く見ろ!白じゃなくて、灰白色だ!」


「それに、凄いのは毛先が光によって、虹色に変化するんだぜ!」



「·······凄いな」


「どうやったんだ?うちの子も色を変えてみたいな!」



「とりあえず、団員達を移動したいんだが」



 移動時間がかかってしまい、今から昼食を取るため休憩場所を借りる。第四部隊が休憩所に昼食を用意している間に、他の団員たちは魔狼に食事を与える。フローは第三部隊の騎士からレイとレイの姉さん魔狼の食事を受け取り、二頭の前に食事を用意した。


『食事の前に、水が飲みたい。どこで水が飲めるか聞いてきてー』


 まだ小さい二頭は、初めての長距離疾走でクタクタだ。


 足早にグレイ副団長のところまで行き、魔狼の水飲み場を尋ねる。




「グレイ!······幼女にまで手を出したのか」


 すると後ろから、先程の女騎士様が現れた。



「初めまして、お嬢さん。私は、第三魔獣騎士団の団長を務めさせていただいております。グレヴィルス・ヴァーインの姉の、リュイーゼ・ヴァーインと申します」



「えっ?グレイ副団長のお姉さんですか?」


「あっ!······こほん······私は、フェアローラ·ドゥルスと申します。フローとお呼び下さい」



「私のことは、リゼと呼んでくれると嬉しいな!」



 リゼ様にタライをお借りすると、直ぐに水を用意して二頭の前まで持って行く。そこにライ様が来て、昼食を食べに行こうと声を掛けられ、おしゃべりしながら休憩場所まで移動した。


 第三魔獣騎士団と第一魔獣騎士団の団員達は、そのまま訓練場で休憩となった。


 リゼ団長が「うちの可愛い、魔獣達を紹介するね」と、第三魔獣騎士団の魔獣を見学に、グレイ副団長は2頭の魔狼を魔獣達に挨拶をさせるために厩舎に一緒に向かう。


「明るい髪色は魔族にはいないから、とっても羨ましいわ!綺麗な明るいシルバーグリーン」


 リゼ団長が、フロー頭を撫でながら優しく微笑んでくれる。


「あら?······瞳が緑彩眼なのね!グリーンとブルーが素敵な組み合わせね!」


 第一魔獣騎士団には女性が居ないから、色々と大変な思いをしたでしょうと、リゼ団長は厩舎に着くまでに沢山の話をしてくれた。


「さあ、着いたわよ!」


 魔狼達の厩舎と違ったそれは、想像していたよりも、とても小さかった。


「ふふっ······第一厩舎より、かなり小さいから驚いた?」


 リゼ団長は「最初は、序章よ!」と含み笑いをしながら厩舎の中に入っていく。


「フローも入って来てー!」


 中からリゼ団長に呼ばれ「おじゃまします」フローも中に足を踏み入れた。


『俺より派手な毛色だ!』


『よう!新入りー』


『めちゃくちゃ可愛いじゃない』


『魔人族じゃないね』


『まだ子供じゃん』



······な、何?······頭に沢山の声が



「フロー!上よー、上を見て!」


リゼ団長の声で、上を見上げる。



「······?······何これー!」


 そこには、藍い鳥が5羽······木の枝に留まって、フローを見下ろしていた。


『高貴な私達を見て、驚いたな!』


『初めまして!あなたは魔鳥は初めて?』




「どう?私達の仲間の魔鳥は?」


「みんなに挨拶するように言っといて正解ね」


 クスクス笑いながら、リゼ団長は両手を大きく広げた後、右手を胸の前に置き



「第三魔獣騎士団、魔鳥厩舎へようこそ!」



『『『心から歓迎いたします』』』


 それに合わせて魔鳥さんたちも右羽を胸の前に置き、首を下げてフローを歓迎してくれた。感動である。


「エメリラルド国から来た、フェアローラと申します。どうぞ、フローとお呼び下さい」


「オブラニキス国のこと、色々教えてください」


 挨拶が終わると、魔鳥さんたちは一斉に話し出した。


『仲良くしようぜ!第一より第三の方が毎日楽しいから、こっちにずっと居てかまわないぜ』


『可愛いわ!エルフ族なのね!是非お友達になりたいわ』


『仕方がないですね!知りたいことがあったら何でも聞いて下さい』


『第一の団服は男っぽいのよ!第三のお洒落な女用の団服を着なさいな』


『よろしくな!友達ってことで、エメリラルド国の美しい鳥を紹介してくれ!』



 とても美しい藍色の魔鳥さんたちは、なぜか念話で話すことができる。レイは別として、魔獣は主以外とは、念話で話さないはずだ。


 疑問に思っている事を聞いてみると、その中の1羽が答えてくれた。



『僕達、魔鳥の仕事は何だと思う?』


『基本の仕事は、連絡係なんだよ』



 今日も第一魔獣騎士団が第三魔獣騎士団に来るのにあたり、日時などの連絡をしたのが魔鳥だと教えてくれた。その為、彼らは念話を誰とでもするのだと言う。


『それとね!私達は、お喋り大好きなの!』


『そうそう!他の奴等と違って、プライドなんか無いしな』



 それを聞くと、みんなと話が出来るなんて、羨ましいと思った。今は、魔鳥さんたちの会話が聞こえるが、これが魔狼たちならどんな会話がされているのだろう。想像してみたが、悪戯好きのレイが、みんなから怒られている場面しか思い浮かばなかった。



「さぁ、次は本番よ!フローは高い所は大丈夫かな?」



······本番?······?


······高い所?······?


「······はい!多分、大丈夫です!」



 良い返事だと、リゼ団長が褒めてくれ「さあ、奥に進むわよ!着いてきて」と微笑み、フローの右手を取って奥に進み出した。



『フローは子供なのに、リゼったら···連れてっちゃって平気なのかしら?』


『高い所っていうことは、飛行すんだろ!小さいながらフローって、度胸あんだな!』


『白い地にはいないから、体験したいんじゃないか?見るのも初めてだろ!』


『じゃぁ、今はワクワクしてるわね!』


『······フローは、多分、知らないよ』



『『『はっ?』』』



『フローの様子からすると、第三魔獣騎士団の魔獣は俺達だと思ってるぞ』



 第三魔獣厩舎で紹介されたのは魔鳥だった。


 第一魔獣騎士団が出発してから、ここまで空から着いてきた1羽が「第一の奴ら、内緒にしてたぞ」サプライズだということだった。



『『『えー、知らないのー?』』』






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