卒業式に初めてマスクを外したら、俺の第2ボタンを巡って争奪戦が始まりました〜これまでずっと馬鹿にしてきた奴らに今さら好きと言われても、もう遅い。言い寄ってくるクズ女たちを次々とざまぁします〜
パシャン。
いつものように机の上に伏していた俺は、いつもとは違った音と感触を受け目を開ける。
(ん、冷たい……)
「やりぃ!」
「さすが元野球部だな」
「きゃはは、水風船なんて卒業式に持ってくる普通?」
「ふふ、さいっこうっ」
体を起こして辺りを見渡すと小さなゴムの破片が落ちていた。
どうやら俺は水風船をぶつけられたようだ。
(卒業式の日くらい大人しくしてろよ、懲りない奴らだ)
ぶつけて来たであろう犯人がいるグループに目をやる。
「あぁん? なんだよ伊勢谷、こっち見てんじゃねぇよ!」
大きな声で威嚇しているのは浅黒い肌に大きめの体、部活を引退してから髪を伸ばしていて中途半端な髪の長さの短髪になっている元野球キャプテンの戸村塁。
「見てんじゃねぇよって、塁。あいつ目見えてんのか分からないけどな」
俺を馬鹿にしているあいつは、色白で少し長めの傷んだ茶髪と似合っていないピアスが特徴的な元サッカー部キャプテンの山口蹴人。
「あはは、それウケるー。ギャグセンやば」
下品な笑い方をしているのは、浅黒い肌に濃い化粧、長めの茶髪をぐるんと巻き、ゴテゴテとしたネイルまでしている典型的なギャルの黒澤夢乃。
「てか卒業式でもマスク付けてキモいんだけど」
見下した視線を向けているのは、白い肌に病んでいるような目元が赤いメイク、黒髪をツインテールにしピンクのインナーカラーを入れている白百合姫花。
この4人グループはクラスのカースト上位でこのクラスを牛耳っていた。
周りにいるクラスメイトは、自分は関係ないとばかりに遠巻きにこの様子を見ていた。
中には俺を見ながらひそひそと話して笑っている奴らもいた。
別にこれは珍しい光景じゃない、このクラスの日常だ。
といってもこれも今日で最後。
なぜなら今日、3月9日は高校の卒業式だからだ。
「おい、伊勢谷! その長ったらしい髪に、いつもマスクつけてて辛気臭いんだよ。卒業式くらい顔見せろって」
「そうだ。クラスメイトに最後くらい顔を見せたらどうだ?」
「別に良いだろ、誰にも迷惑かけてないし」
戸村と山口が突っかかってくるが、俺はそれを断る。
「はぁ? 伊勢谷の分際でなに口ごたえしてんだよ」
「迷惑ならかけられているんだ。そうだろ夢野?」
「うん、今日は集合写真撮るっしょ? ウチらのクラスにそんな変な奴がいたら卒業アルバム見るたびに気分が悪くなるんですけどー」
「そうそう、だから顔見せてみなって。ぷふふ」
こいつらは理由を付けて俺の顔を見ようとしていた。
それは俺がとある理由で、前髪を目が隠れる長さにして、マスクを付けて顔をずっと隠していたからだった。
「それに、髪もマスクも濡れてたら顔を出すしかないよな?」
「濡れたままで卒業式に出るのか? ほら、マスク外せよ」
「蹴人くん、やさしー。つっても伊勢谷の顔がみたいだけっしょ。きゃはは」
「3年間誰もこいつの顔をみたことがないらしいよ。よっぽどブサイクなんだろうね」
4人はにやにやと笑いながらこちらを見ていた。
そこにあるのは好奇心と悪意だった。
「は・ず・せ」
戸村が手拍子とともにコールする。
「は・ず・せ」「は・ず・せ」「は・ず・せ」
山口と黒澤、白百合が一緒になってコールする。
「みんなもクラスメイトの顔を最後に見たいよなぁ!!」
戸村が周りに呼びかける。
すると、遠巻きに見ていたクラスメイトまで手拍子をしながらコールをし始めた。
「は・ず・せ」「は・ず・せ」「は・ず・せ」「は・ず・せ」「は・ず・せ」「は・ず・せ」「は・ず・せ」
クラスが異様な雰囲気に包まれる。
卒業式ということもあって今後関わらないからなにをしてもいいだろうと、心のストッパーが働いてないように見えた。
(最初からこれが狙いで俺に水風船をぶつけて来たみたいだな。やれやれ、今後こいつらと会うこともないだろう。そして、この国ともおさらばするし……もう良いか)
俺は、濡れた髪をかきあげながらマスクを外す。
「へへ、どんなブサイク面が拝めるのやら……は?」
「……え?」
「……まじ?」
「……うそ?」
教室が静まり返る。
「どうした? これがお前たちが見たかったものだろ?」
俺は静かになった教室を見回しながら問いかける。
「聞いてねぇ、聞いてねぇぞ!」
「あ、ありえない……」
「これじゃあまるで……」
「こんなのって……」
4人グループは呆然としてしまって、言葉が出てこないようだった。
――かっこいい。
誰かがそう言った。
それを皮切りにクラスが騒然とした。
「え、めっちゃイケメンなんですけど」「王子様みたい……」「かっこ良すぎでしょ」「まじイケメン」「やば……」「目おっきい……」「まつ毛なが!」「鼻も高いし唇の形もすごい綺麗……」「肌めっちゃつるつるじゃん」「目力すごくてクラクラしちゃう……」「誰だよブサイクだって言ったの」「お前だろ!」「いや私じゃないって」「わ、私はかっこいいんじゃないかなって思ってたよ」「うそ! この前、絶対ブサイクって言ってたじゃん」「スタイルも良いし、優良物件かも……」「あ、ずるい!」「抜けがけは許さないんだから!」
クラスの女子が俺の元へ一気に押し寄せて来た。
「伊勢谷くん今までごめんなさい! 連絡先教えてくれない?」「私はなにもしてないよね? 良かったら友達からでも……」「卒業しても私たちクラスメイトだよね? だから……」「卒業式終わったら遊びに行かない? カラオケとかどうかな?」「あ、それいいね! いこいこ!」「伊勢谷くんの歌声ききたーい!」「好きなタイプとかいますか?」「わ、わたし料理得意です!!」
(やれやれ、とんだ手のひら返しだな……)
呆れながら俺は答える。
「連絡先は教えないし、友達から始めないし、クラスメイトというのなら俺を一度でも助けたことはあるか? 卒業式が終わったら俺は行くところがあるから遊びはパス。好きなタイプはお前らみたいな見た目で態度を変えない人だ」
俺がそう答えると、女子たちがぐっと下を向いて押し黙る。
「う、羨ましい」「男の俺から見てもかっこよすぎるって……」「俺たちじゃ太刀打ち出来ねぇよ」「あいつと友達だったら美味しい思いできたのかな……」
女子たちの様子を見ながら周りの男子たちは悔しそうにぎりぎりと歯を食いしばっていた。
「だったら……だ、第2ボタンください!」
一人の女子がそう叫ぶと、女子たちが俺の学ランの第2ボタンを凝視する。
「私も!」「私よ!」「あたしだって」「あんたなんかがもらえるもんですか!」「あんたもでしょ!」
目の前で俺の第2ボタンを巡って言い争いが起きていた。
(はぁ、全く騒がしいな……。この内の誰かが貰えるとでも思っているんだろうか?)
「ちょっとあんたたちどきなさい!」
「そうよ、伊勢谷きゅんが困ってるでしょ。どいて!」
これまで呆然としていた黒澤と白百合が女子たちを割って入って来た。
「伊勢谷くん、そんなかっこいいなら先に言ってよー。卒業式終わったらウチらと一緒に遊ばない? 良いことしてあげるから第2ボタンちょーだい」
黒澤がシャツのボタンを開け、胸元をさらけ出しながら腕を組んで来た。
「ねー伊勢谷きゅん。良いでしょ? 姫花のカラダ結構すごいって言われるんだよ? だから姫花に第2ボタンくれないかな?」
白百合は、黒澤とは反対側の俺の腕の掴みながら、ご自慢の胸を押し付けてくる。
「はぁ? 姫花なに言ってんの? ウチがもらうんだし」
「夢乃こそなに言ってるのかな? 姫花がもらうんですけどー?」
黒澤と白百合が俺を挟みながら、醜くく火花を散らしていた。
「お、おい! 夢乃! どうしてそんなやつにすり寄ってんだよ!」
「そうだぞ、姫花。お前まで!」
その様子を見ていた戸村と山口が取り乱した。
(そうか、こいつら付き合ってるんだったな。恋人が他の男にすり寄っていたら良い気分ではないよな)
「塁、あんたみたいな顔がゴツゴツしてるやつタイプじゃないんだよ! 髪も中途半端に伸びててウニみたいだし。ウチは王子様みたいな伊勢谷くんがいーの! それにいつまでも元野球部のキャプテンってだけでいばるのはダサいからやめてよね! ブロ野球のドラフトだって来てないじゃない!」
「蹴人も元サッカー部のキャプテンっていうの引きずって馬鹿みたいって思ってたんだよね、地区大会突破も出来なかった弱小のくせに。それに部活引退したら髪染めるとかダサいよ? ピアスも無理しちゃってさ、キモいし、似合ってないんですけどー?」
(ひどい言いようだな。まぁ良い気味ではあるが)
「夢乃……そんな風に思っていたのかよ」
「姫花、くそ……」
悪口を言われた二人はうなだれていた。
「ねぇ伊勢谷くん、いや、界くん。界くんのこと大好き。ウチ、フリーだよ? だから第2ボタンちょうだい?」
「姫花も伊勢谷きゅんのことすきぃ。姫花もフリーだよ? このカラダ好きにして良いから、ね? 第2ボタン欲しいなー」
(散々、俺のことを馬鹿にしてきたのに。この態度はなんだ。)
「ふざけるな、俺のこと散々馬鹿にしてきて今さら気持ち悪いんだよ! お前らみたいな次々に男を乗り換えるやつなんてまっぴらごめんだ!」
「そんなこと言わないでよ、界くん……?」
「う……ごめんなさい。謝るから……見捨てないで」
「いいから腕を離せよ!」
ずっと腕を絡めてきた二人を強引に引き離す。
「あっ」「んっ」
頬を染めながら名残惜しそうにこちらを見てくる二人が鬱陶しい。
「ん、みんなどうしたの? もうすぐ体育館に移動するから席についてー」
担任の教師である湯浅麻美が入ってきた。
この教師は若く真面目で生徒思いであり、美人ということもあって生徒からの人気も高い。
だが、俺は嫌いだ。
「先生から最後の一言をみんなにお伝えします。えー、皆さんが卒業するのは寂しく思います、一人を除いてそれぞれしっかりとした将来の道へ進むことを誇らしく思います」
一人を除いて、の部分で俺の方を見た。
こいつは表向きは生徒思いの教師を演じているが、生徒のことなんてこれっぽちも考えていない。
全ては自分の評価のためだ。
「そ、そうだ。伊勢谷は馬鹿だからどこにも進学出来ない最下位の落ちこぼれだった!」
「ちょっとかっこいいからって調子乗んなよ? 顔だけじゃこの先は生きていけねぇんだよ!」
山口と戸村が俺を口撃する。
だが、見当外れもいいところだった。
「え、なに、あんなかっこいい子いたかしら……あれが伊勢谷くんだというの……ま、まぁいいわ。この進学校から落ちこぼれの生徒が出るなんて、私のせいになるんだからほんとに勘弁して欲しいわ。進学率100%じゃなくなって校長からなにを言われてるのか分かってるの? これならいっそ中退して欲しいくらいよ」
(やっと本性をみんなの前に表したな)
「先生、俺が中退してもいいんですか?」
「えぇ、進学も出来ない愚かな生徒はやめてもらったほうが良いです。その方が進学率に影響しませんからね」
「これでもですか?」
そう言って俺はスマートフォンの画面を先生に突きつける。
「なに見せているの全く……え、オックスフォード大学、ごうかく?」
湯浅先生が画面を見て凍りつく。
「え、オックスフォードってあの?」
「世界の大学ランキング1位の?」
「顔は芸能人級にかっこいいのに頭脳は世界レベルかよ!」
「完璧超人じゃね?」
「くそ! くそ!」
クラスメイトが驚いており、中には地団駄を踏んでるやつもいた。
「これは本物なの?」
湯浅先生が尋ねてくる。
「えぇ、なんなら大学に問い合わせてもいいですよ?」
「その様子じゃほんとのようね……。でもあなた、成績最下位だったじゃない! 進学先も特に記入していなかったし……」
「学校での成績をとってどうなるんですか? 卒業さえできれば俺はそれでいいんですよ。家から近いからこの学校を選んだだけなんで。それに、進学先を記入して、いじめを無視しているこの学校の評価に繋がるのが嫌だったんですよ。ええっと、中退して欲しいんでしたっけ?」
わざとらしい演技で湯浅先生をチラリと見る。
「ご、ごめんなさいいいいいい、ぜひこの学校を卒業してください!! お願いしますぅうううう!!」
土下座に近いレベルで頭を下げ、湯浅先生は俺に懇願する。
「あんな優秀な生徒を中退してもいいって言ってたよな?」「てか、先生が生徒の中退を促すのってどうなの?」「先生っていい人と思ってたけど全部自分のためだったんだ……」
生徒たちは先生の本性に気づいたのか、口々に先生について話していた。
「まぁ、いいですよ。俺も卒業はしたいんで。でも、学校はいじめの事実を認めてください」
「み、認めますぅぅううぅぅう! 伊勢谷くんをいじめてた人とちは出てきなさい! 今日付けで退学にしてあげるから!」
湯浅先生は人が変わったかのように生徒を睨みつけていた。
「や、やめさせられたら将来おしまいだ」「あ、あんたも黙認してたじゃないか!」「そうだ、そうだ」
いじめに関わっていたのは主にあの4人グループだが、黙って見ていた生徒全員を加害者と言える。
だから全員が焦っていた。
「先生、認めてくれれば俺はそれで良いんです。なにもやめさせなくてもいいですよ。卒業式にそれは可哀想じゃないですか。今後、俺みたいな生徒がいたら助けてあげてください」
「は、はいぃぃぃ。伊勢谷くんの寛大な御心遣いに感謝いたしますぅうううう!! みんなも伊勢谷くんを見習うように!!」
「「「「「「はい!」」」」」」
「それでは、体育館に移動をお願いしますうぅぅう!」
俺たちは式典に参加するために体育館に移動を始めた。
女子たちが俺の周りを囲んで第2ボタンをねだってきたり、熱視線を浴びせてきてウザかった。
その中でもじっとりとした視線を2つ感じながら俺は移動した。
○ ●
「続いて。3年B組、出席番号2番、伊勢谷界」
「はい」
名前を呼ばれた俺は、卒業証書を受け取りに登壇する。
「きゃー! かっこいい!」「マジやばいんですけど」「あの人だれ?」「伊勢谷ってあの伊勢谷?」「そうそう、仮面の伊勢谷」「仮面の下の顔カッコ良すぎん?」「インフルエンサーの結城くんより断然かっこいいじゃん」「てかオックスフォード大学入学するらしいよ」「え、万年最下位じゃなかったけ?」「実は頭も良いんだってさ」「学校の勉強とかどうでもいいってやつ?」「それって天才じゃん」「絶対に私が第2ボタンもらう」「私よ!」「なによこのブス!」「あんな先輩いたんだ……」「お母さんも第2ボタンもらいに行っちゃおうかしら?」
同級生や後輩、さらにその親に至るまでが騒ぎ立てる。
「コホン、お静かにお願いします」
(うるさすぎて先生がマイクで注意するなんてな。あぁ、早くこんな式を終わらせてあの人の所に行きたいんだけどな)
そこからみんなずっとジロジロ見てきたり、俺の方を見ながら頬を赤らめてひそひそと話しをしていた。
この騒ぎを抑えることが出来ないと思った先生は、途中から注意するのをやめていた。
「えー、これにて卒業証書授与式を終了いたします。卒業生退場」
俺は周囲からの黄色い声援と熱い視線を浴びながら体育館を後にした。
この感じ懐かしいな。
○ ●
「伊勢谷先輩好きです! 第2ボタンくれませんか?」「伊勢谷くん好き! 私に第2ボタンください」「制服のシャツのボタンでも良いんです!」「私に!」「あたしに!」
卒業式も終わり、帰ろうとした時だった。
靴箱で女子に囲われて身動きが取れなくなってしまった。
「ちょっとみんな通してくれないかな?」
一人の女の子が声を発する。
その人物を見た全員が避けて道を作っていた。
「あれは学園のアイドルの絢辻さん!」「あの絢辻さんも伊勢谷くんのこと狙ってるの?」「絢辻さんならお似合いかも……」
「みんなごめんねー。伊勢谷くん、当然、私に第2ボタンくれるよね?」
首をちょこんとかしげながら誘って来た、この子の名前は絢辻綾香。
金髪のロングヘアに日本人離れしたスタイル、フランス人のハーフらしい。
学校外ではモデル活動もしている文字通り学園のアイドルだ。
「普通に嫌なんだけど」
「えー? つれないこと言わないでよー。これまで好きって伝えてきたつもりなんだよ? いつも挨拶したり話しかけていたじゃん」
「あぁ、いつもこんな風に人がいるときに一方的にな、あれは愛情表現ではないと思うが?」
「マジむかつく! 綾香が話しかけてやってんのよ? ありがたく思いなさいよ」
「はぁ、お前はいじめられている俺に話しかけることで良い子を演じてたよな? それにいつも周りに人がいる状況でしか話しかけてこなかったくせに。本当に助けようとは一度もしなかったよな? そんな性格ブスに第2ボタン渡すとでも?」
「性格ブ、ブス? な、なによ! 綾香をそんな風に言うなんて!」
「だってそうだろ? 自分が周りにどう見られているかしか考えていない、損得勘定で行動してるやつなんて性格ブスって言って何が悪いんだよ」
「綾香がブス? は、はは……」
自分がブスと言われたことが信じられなかったみたいで、綾辻はその場から動けなくなっていた。
へたり込んでいる絢辻を避けながら通る。
「伊勢谷、そんな風に女の子を困らせるんじゃない」
「なんですか生徒会長さん、またお説教ですか?」
腕を組みながら目の前に立ちはだかったのは、高身長で銀髪ロングのポニーテール、キリッとした目が威厳を感じさせる生徒会長の万代一織だった。
万代家とは古くから続く名家で、日本の政界を今も牛耳っているそうだ。
「いや、謝罪に来たのだ。私は君のいじめを最後まで止めることができなかった」
「いいんですよ、自分で解決しましたから。それに形だけの謝罪なんていりません」
「形だけではない。本当に悪かったと思っている」
そう言って生徒会長は腰を折って礼をした。
そして、体を起こしたあと話を続けた。
「いじめを君自身で解決したのは素晴らしい。話を聞いて感動した。それに君の顔の造形はとても整っていて見ていて惚れ惚れする……。そして頭も優秀だとか、良かったら私に君の第2ボタンをくれないだろうか? 君を好きになってしまったみたいだ……そして、いつか万代家の跡を継いで欲しいのだが……」
「はぁ、それが望みですか……あなたが俺にしたこと覚えてないみたいですね? あなたはいじめていた主犯を罰するでもなく、先生に働きかけるわけでもなく。自分の力でどうにかしろと、相談もしていないのに俺の前に現れて説教に来ましたよね?」
「それは……君自身で解決して、成長をして欲しくてだな……」
「そんなことを出来るやつなんて限られてますよ。現に生徒会長に相談して潰れていったやつを沢山見て来ました。あなたは弱者を切り捨てている。誰もがあなたみたいに強いわけじゃない。そんな人が作る政治や日本には未来はないと思いますけどね」
「……ぐっ。私はどうすればよかったのだ、どうすれば……」
いつも強気な生徒会長が潤んだ瞳になりながら俺に問いかけてくる。
「俺に答えを求めないでください、そんなの自分で見つけてくださいよ。それが成長ってもんでしょ? 会長さん」
そう言って俺は靴箱をあとにした。
○ ●
靴箱を出て校門に向かう道の途中。
「待ちなさい伊勢谷界」
黒髪のロングヘアにツンとした表情が人を寄せ付けないような空気をまとっている。
だがその類稀なる美貌から、数多くの男子から告白されており人気が高いみたいだった。
そして頭も良く、この進学校で学年1位の天才と言われている城ヶ崎美咲が柱に寄りかかっていた。
「今度はあんたか。学年1位の天才が俺になんの用だ?」
「あなた、やっぱり実力を隠していたのね」
「さて、なんのことやら」
昔にテストで一度だけ暇つぶしにとある問題を解いたことがあった、それはこの学年で俺しか正解しなかったみたいだった。
今思えばどうしてあんなことをしたのだと後悔したが、仕方ないと割り切っていた。
そして、どこからかその噂を聞きつけた城ヶ崎から絡まれるようになっていた。
「聞いたわよオックスフォード大学に合格したんですってね。私は東大だけどね、私よりすごいじゃない。あなたは顔だけの馬鹿女じゃなくて、私みたいな頭の良い人と付き合って遺伝子を残すべきよ。私は自分より馬鹿な人とは付き合いたくないと思ってたの、やっとあなたみたいな人が現れてくれて嬉しいわ。あなたの第2ボタンを貰うのは私が相応しいと思うのだけど?」
こいつは頭脳の良し悪しでしか人を判断していなかった。
「はぁ、全然相応しくない、不合格だ。俺は頭の良さじゃなくて、居心地の良さで付き合う相手を選ぶべきだと思うけどね。君との居心地は最悪だ」
「あなたまでそんな馬鹿なことをいうの? 私たち天才は後世に偉業を残す必要があるの、居心地ではなく頭脳の良さや学歴で相手を選ぶのが合理的だと思うのよ」
「やれやれ、頭が固いな。勉強だけしておかしくなっているのか? 人と付き合うのに合理性を求める馬鹿がどこにいる」
「馬鹿ですって……」
「あぁ、馬鹿だ。あんたさっき自分は東大で俺はオックスフォードだからすごいって言ってたよな? それこうも言っていた、自分より馬鹿とは付き合いたくない、って。だったら俺も自分よりも馬鹿なやつとは付き合わないようにするよ。じゃあね」
「うそ、うそよ……こんなはずじゃ……計算外よ……」
城ヶ崎は自分が振られるとは一ミリも思っておらず、急なことに脳が対処出来ないでいた。
(これだからお勉強しか出来ないやつは困る、想定外のことがあるとすぐ思考停止だ。てかずっとぶつぶつ言ってて気持ちわる)
俺はずっと独り言を言ってる城ヶ崎を横目に歩いていった。
○ ●
学校門を抜けようとしたその時だった。
「おいおい、モテる男は辛いねぇ?」
「いじめられてたインキャが一躍、人気者だなんてふざけるなよ」
(やれやれ、ずっと嫌な視線を感じていたがやっぱりこいつらだったか)
戸村と山口が道を塞いだ。
体育教師の井筒を連れて。
「井筒先生、こいつ調子乗ってるんで指導してくださいよ」
「こいつのせいで戸村は夢乃と別れて、俺は姫花と別れることになったんですよ」
「むん、それは放ってはおけないな俺に任せろ。教育的指導をしてやる」
この体育教師は教育的指導といって平気で体罰をしていた。
柔道部の顧問で全国大会に導いているという実績から学校側も表沙汰にしていないようだった。
「はぁ、俺は早く帰りたいんだけどな」
「そう言うな伊勢谷、卒業前の最後の授業だ。社会とはなんたるかを教えてやる。その際に怪我をして顔に傷がついても文句は言うなよ?」
ニヤリと嫌な笑みを見せつける井筒。
戸村と山口もヘラヘラと笑っていた。
「だったら先生も文句言わないでくださいよね?」
俺は一応、確認をとる。
「何を言ってるんだお前、良いに決まってるだ――」
井筒が言い終わるやいなや、俺はすかさず顔面を思いきり殴る。
井筒の巨体が地面に沈み、動かなくなった。
浅いけどしっかりと呼吸をしているので気絶をしてるだけだろう。
「こういうのは先手必勝なんだよ、審判の合図でも律儀に待ってたのか?」
俺はとある理由のために格闘技を嗜んでいた。それも実践的なやつだ。
(暴漢はいつ襲ってくるか分からないのに棒立ちとはな、スポーツ経験者って感じだな。今まで生徒たちをボコボコにしてきた罰だ、これくらいの罰じゃこいつにやられた生徒たちの恨みは晴れないだろうが。これで今後、少しは大人しくなってくれると良いんだけど)
「え、井筒先生が一発で?」
「インターハイで準優勝したことあるって言ってたから連れてきたのに……マジかよ」
戸村と山口は、井筒がやられると思ってもいなかったのか立ち尽くしていた。
「驚いてるところ悪いけど、どうする? お前らもやる?」
そう言って二人を睨んだ。
「ひええええええええええっぇぇぇぇぇえ!!」
「か、勘弁してくださいいいいぃぃぃぃぃぃいい!!」
戸村と山口は、鼻水を流して泣きながら逃げ出していった。
(ふぅ、井筒はこのままでも良いだろう少しすれば起きるだろうし)
「しぇ、しぇんぱい。だ、大丈夫ですか?」
声を掛けられた俺は振り向く。
「今度はお前か、水瀬」
そこには身長は低いが胸が大きく水色のショートヘアで気弱そうな女の子、茶道部の後輩である水瀬みすずが居た。
この学校は部活動が強制だったから、俺は比較的参加しなくても良い茶道部に入部していた。
「さっきの先輩かっこよかったです……。井筒先生は私のこといやらしい目で見てきて、ヤらせてくれないかとかセクハラしてきて嫌いだったからすっきりしました。先輩ってかっこよくてぇ、頭も良くてぇ、強くてぇ、素敵です! しゅ、しゅきです! せ、先輩の第2ボタンく、くだしゃひ……ふぇ、噛みましたぁ」
あわあわと焦っているこの様子を見る人が見ればかわいいと思うのだろうが、俺は全くかわいいと思わない。むしろ気持ち悪い。
なぜならこいつの本性を俺は知っているからだ。
「つまらない芝居はやめろ」
「ふぇ、ど、どういうことですかぁ?」
「お前が気弱そうな演技をして痴漢であったり、襲われたことを偽って、それをネタに強請ってお金を騙し取っているのは分かってるんだ。まだ俺を狙っていたのか?」
気弱そうだった水瀬の表情が一変する。
「いつから気づいてたんだよ! テメェよぉ!」
「数少ない茶道部の活動でお前は執拗に2人っきりになろうとしてきただろ。なんだか嫌な気がしててな、俺はそういうの敏感なんだ。だから二人になることは避けていた。そして夜の繁華街で一度、強請っている現場を目撃したことがあってな。その時に合点がいったんだ、俺も狙われてたんだなってな」
「はぁ、バレちゃってましたか……そうですよ? バイトしたりパパ活するよりも楽に金を稼ぎたかったんで。ほらぁ、女の子って可愛く生きるためにはお金掛かるじゃないですか? 最初は先輩も犯罪者に仕立て上げて強請ろうって思ってたんですけど。実は先輩って顔も良くて頭の良いことが分かったんで、付き合うことが出来れば将来安泰かなって思って近づいたんです。ねぇ、私かわいいでしょ? 付き合いましょうよ」
「いや、醜いね。その心が醜い」
「はぁ? 私が醜いだぁ? ふざけてんじゃねぇぞテメェ! 私を侮辱したこと謝れ!」
「謝るのはお前の方だ、と言っても俺にではないけどな」
そう言ってスマートフォンを取り出す。
「な、テメェ! まさか!」
「ようやく尻尾を出したな、近くでお前がが見ていることが分かっていたから話しかけられる前にボイスレコーダーをつけていたんだ。この音声を被害者男性たちに送っておく。悔い改めるんだな。」
「ヤメロォぉおおおおおお」
近づいてくる水瀬を避けて俺は送信ボタンをタップする。
「じゃあな」
「うわああぁぁあああああああああぁぁああぁあ」
(自分の罪と同時に、井筒からのセクハラの証言も一緒に言ってくれたから丁度よかった、思わぬ収穫だ。これで学校側も無視できないだろう)
泣き叫んでいる水瀬を無視して俺は歩みを進めた。
○ ●
俺はようやく待ち合わせの公園に到着する。
(ふう、色々あったけど遅れずに着くことができたな)
しばらく目を閉じて待っていると、コツコツコツと小気味の良い音がする。
俺はこの音が好きだ。
目を開けると白い杖をついて歩いている女性が目の前まで来ていた。
「あ、明里さんこっちです」
鬼灯明里さんが白杖で辺りを確認しながら近づいてくる。
明里さんは昔に遭った交通事故の影響で目がほとんど見えていない。
光を感じることはできるらしいんだけどそれも段々と感じ取れなくなってきているようだった。
「お待たせ、界くん。どれくらい待った?」
「全然待ってません、今きたところです」
「ふーん、そんな気の効いたこと言えるようになったんだ。えらいえらい。初めの頃は何分待ってましたーとか正直に言ってたのにね」
「はは、そうでしたっけ?」
「ふふ、そうだよー」
俺がとぼけて明里さんが笑う。
明里さんとのこうした何気ない会話が好きだ。
「それにしても、界くん、卒業式なのに良いの? 私なんかと会っちゃって、友達とか平気だった?」
「良いんです。俺は明里さんと会いたかったんで」
俺は本心を伝える。
「嬉しいこと言ってくれるね! あ、あれ聞かせてよ。ポンってやつ!」
「ポンってやつ? ああこれですか?」
俺は手に持っていた卒業証書の筒の蓋を抜いた。
そしてポンっと軽快な音がする。
「そうそう! それ! その音を聞くと卒業式って感じがするんだよね」
「これが良いんですか? 何回でも聴かせてあげますよ」
俺は再びポンっと音をさせる。
すると明里さんは朗らかに笑う。
目が見えなくなってからはその他の器官が優れてきたそうだ。
だからこうした音を聞くのが好きなのだという。
そして、俺たちはいつもの小高い丘まで歩いて移動する。
「ここはいつ来ても自然に溢れてるねー。風は気持ち良いし、緑の良い匂いがして、お日様はあったかい」
明里さんは手のひらで空気を掴む仕草を何度かしたあと、太陽に向かって手をかざす。
ここは俺たちのお気に入りの場所だ。
「そ、そういえば界くん、第2ボタンは誰かにあげたのかな?」
明里さんにしては珍しく、少しもじもじとしながら聞いてくる。
「いいえ、誰にもあげてませんよ」
「そうなの? ふふーん、落ち込まなくてもいいよ界くん。前にも言ったけど男は見た目じゃなくて心だから!」
「いやいや! ここまで来るのに多くの女子から第2ボタンをせがまれて大変だったんですよ!」
「ぷは、界くんそんな必死に嘘つかなくてもいいのに! 強がっちゃてかわいいんだから、もう」
「本当なんですってば……」
明里さんは全く信じていないようだった。
「大丈夫、私は界くんの見た目以外の良いところ沢山知ってるからね。雨の日にあの公園で傘を差し出してくれた優しいところとかさ」
それは2年前のある雨の日のこと。
今日待ち合わせをした公園で俺は初めて明里さんに会った。
その日は突然の雨で、おまけに風がとても強かった。
突風で明里さんはこけてしまい、そのときに手にしていた白杖がどこかに行ってしまったみたいだった。
雨の中で傘も差さずに膝から血を流している女性を見て、俺は思わず駆け寄って傘を差し出した。
それが俺たちの始まりだった。
「あの日の君は私にとって救世主に見えたよ。まぁ、目は見えてないんだけどね」
「いつも言うその自虐ボケ、ツッコミづらいからやめてくださいよ」
「いいじゃない、私が私のことを笑わないとみんな可哀想な目で私を見るでしょ?」
明里さんは、自分が目が見えないということ気にしていないような立ち振る舞いで周囲を明るくしていた。
初めは、人の見た目を気にしない明里さんといるのが楽だった。
でもそれだけじゃなく次第にこの人柄に俺は惹かれるようになった。
少し俺の昔の話をさせてくれ。
俺はこの容姿からチヤホヤされることは少なくなかった。
そして小学6年生のあるとき、俺は誘拐された。
犯人は成人女性で、街中で俺を一目見たときに連れて帰りたいと思ったそうだ。
その日突然襲われた小学6年生の俺は、女性とはいえ成人の力には抗えずに連れ去られてしまった。
監禁される日々が続いたある日。
突然、女が帰ってこなくなった。
数日放置された俺は衰弱して死にそうになっていたとき、扉が開いて誰かが入ってきた。
女が帰ってきたかと思ったが、警察だった。
そこでやっと俺は、助かったと安心してわんわん泣いた。
警察から聞いたところ、女はひき逃げして捕まったのだという。
早く帰ってあの子に会いたかった、私がお世話しなきゃいけないのに、などとぶつぶつ言っている女の様子を怪しく思った警察は、何か隠しているんじゃないかと家宅捜査をしたら、そこに俺が居たというわけだった。
その事件以来、俺は引っ越してその先では容姿を隠すことにした。
そして人はいつ襲われるか分からないんだなと思った俺は、用心のために実践的な格闘技を学んだ。
というのが俺の昔話だ。
「俺は明里さんを可哀想な目で見ませんけどね。欠点くらい誰でもある、でしたよね? 俺もこんな見た目で辛い目にあったこともありますし」
「前に言ったこと覚えててくれてたんだ。そう、誰しも欠点を抱えてるものなんだよね。私は目が見えないのが欠点だけどそれ以外は全然元気! この両手で君に触れることもできるし、この両足で君に会いに行くことができるし、この耳で君の声を聞くこともできる。この口でお話することだってできちゃう。それはとっても幸せでしょ?」
にぱーっと人懐っこい笑顔を見せる明里さん。
その笑顔を見てたらこちらまで笑顔になってしまう。
「明里さん」
「ん? なぁに界くん」
「俺はそんな天真爛漫な明里さんのことが、好きです」
「え、す、好き!? 私のこと? ほんとに、ほんと?」
突然のことに驚いているようで顔を真っ赤にしていた。
(はは、サプライズ成功だな)
そう思っている俺の顔も真っ赤になっていることだろう。
「本当です。嘘なんかじゃありません。だから第2ボタン受け取って下さい」
俺は制服の第2ボタンを引きちぎり、それを明里さんの掌の上に乗せ、ぎゅっと握らせる。
「もう、強引だね界くんは。誰にも貰ってもらえなかった界くんの第2ボタン、私が仕方なく貰っておいてあげるね。返してって言われても返さないよ?」
明里さんはそう言いながら、大切そうに手で感触を確かめていた。
そして第2ボタンを目の前に持っていき、呟く。
「あーあ、この目が見えたらいいのになぁ……」
その姿は儚くて今にも消えてしまいそうだった。
俺はもう一つ決心していたことを告げる。
「明里さんの目は、俺が見えるようにします」
「え! 無理だよ。お医者さんにも手術ができないって言われたよ。そしていつか完全に視力を失うだろうって」
「今の技術ではそうかもしれません、俺は医療と工学の両方を学んで明里さんの目が見えるようにします。だから俺、めちゃくちゃ頑張ってオックスフォード大学にも合格したんですよ? 俺に任せてください、何年掛かっても俺が絶対に実現させます」
「界くん……」
「第2ボタンって心臓に1番近いボタンなんです。だから自分の全てを渡すという意味があります、俺はこれからの時間全部を明里さんに捧げます。その時間や景色を全部、その目で見て欲しいんです」
俺はうっすらと光を感じることしかできないであろう明里さんの瞳を見つめる。
明里さんは潤んだ瞳で、俺の目を見つめている。
その姿があまりにも自然で、目が見えているんじゃないかという錯覚に陥ってしまう。
「……ぐすん、ありがとう。うん、待ってるからね……いつか君の顔を私に見せてね?」
「こんな顔、見なくていいのに……」
「ふふ、恥ずかしがらないの。男は見た目じゃなくて心だよ? こんな優しくてあったかい界くんは誰がなんと言おうと男前だよ」
「明里さんがそう思ってくれるなら、それで俺は満足です……」
顔を合わせたまま少しの間、沈黙する。
甘い空気が漂い、二人だけの空間になる。
「明里さん、好きです」
「私も好きだよ、界くん」
そして俺たちは存在を確かめあうように、優しく唇を重ねた。
○ ●
「はーい伊勢谷明里さん、ゆっくりと目を開けてください」
「界くんなにその話し方、ちょっと面白い、ふふ」
「医者なんだから仕方ないだろ。ほら、ゆっくりと目を開けて?」
明里さんの瞼がゆっくりと開く。
「わぁ……見える、見えるよ!」
俺は大学を卒業したあと研究職に就いた、そこで学んだ工学技術を用いてカメラを搭載した擬似的な眼球を作り、それと視神経を繋くことで脳に直接映像を見えるようにした。
一見、普通の目に見えるから機械で作られた目だとは、誰が見ても気づくことはないだろう。
医療と工学の両方を学ぶのはかなり大変で俺の一日の時間のほとんどを使う日々を10年以上続けてようやく完成し、先日やっと認可がおりた。
これまで道のりは一筋縄ではいかなかったけど、この顔を見ることが出来たのなら何も言うことはない。
「明里さん、俺の顔見える?」
「うん、見えるよ。……ふふ、でも、涙でぐちゃぐちゃでブサイクになってるよ?」
「マジか。あーあ、初めて見せる顔はかっこいい顔にしようと思ってたのにな」
「でもいいじゃん、これからもっと色んな界くんの表情を見れるんだし」
「そうだね、これからいっぱい見てもらえるんだよね」
「うん! ほんとに楽しみだよ」
俺たちは涙でぐちゃぐちゃな顔になりながらも、見つめあって、そして笑った。
風が吹き抜け、白いカーテンがゆっくりと揺れる。
太陽の光が優しく俺たちを照らす。
病院のベッド横のテーブルに置かれている第2ボタンが、柔らかな光を反射してきらきらと輝いていた。
最後までお読みいただきありがとうございます。心からお礼申し上げます。
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