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【コミカライズ配信中!】少女⇔傭兵の成り代わり  作者: 久芳 流
4章 過去と後悔の行進

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第79話 少女の考え(前編)

 ハレーの膜は鬼気迫る。

 境界のあっちとこっちでは世界が違い歪んでいる。

 竜巻がいくつもできたその内側に取り込まれれば一瞬で死んでしまいそうだ。

 ハレーの特性である真空ではなく、その過程による殺意溢れる瓦礫によって。

 膜の広がりはもはや馬よりも速い。

 逃げ出しても終ぞ追いつかれ取り込まれてしまうだろう。


 迫ってくる膜に死をありありとイメージさせられ、リラは思わず目を閉じた。


 だが。


「?」


 静かだった。

 真空だからだろうか?

 それにしてはまだ息ができる。


 恐る恐るリラは目を開けると、思わず息を呑んだ。

 境界はギリギリ。

 目と鼻の先ほどで止まっていた。


「ふぅー。計算通りだ。よかった」


 後ろにいたヒナタが汗を拭うように額に腕を当てた。


「何が計算通りよ。ギリギリじゃない!」

「いやいや。ギリギリだからこそ、スリルってものが生まれるんだよ?」

「そんなスリル要らないの!」


 まったく、とアイラは憤慨するが、すぐに痛みが疼くのか肩を抑える。


「言わんこっちゃない。興奮しないでよ。まだ治ってないんだから」

「あんたのせいでしょ?」

「あれ〜?」

「アイラ様、ヒナタ様」


 アイラとヒナタの口論にリラは割って入る。

 心配そうな顔でハレーの境界を見ていた。


「なんだい?」

「ギバ様を助けないといけません」

「そうですね。ギバさんはまだシュントに捕まっています。真空状態になる前に助けなくては」


 リラのその言葉にアイラも真剣な顔になる。

 ただ一人だけは笑みを崩さない。

 ヒナタは「うん」と頷くと、


「でもその前に」


 ハレーの内部を指差した。

 なんだ? と思ってその方向を向くと、人影が見える。

 こちらに向かって走ってきている。

 ギバだろうか? シュントの捕縛を何とか逃れたのだろうか。

 リラは自然と嬉しそうな顔になるが、


「うおぉぉあああ」


 その叫びはギバよりもしゃがれて低かった。

 そしてこちらに走ってきてハレーの膜を飛び出たのは


「あぁー出れた! こりゃまいった。老体にはキツいぜ。まったく」


 ワクだった。


「おぉ嬢ちゃん達、無事だったか」

「えぇ。ワクさんもご無事で何よりです」

「膜は出入りできるのか……空気だけが閉じ込められる?」

「ワク様……」


 三者三様の反応を見せるが、特にリラはギバではなかったことに若干落ち込んでいた。

 いや、もちろんワクが脱出できたのも嬉しいのだが。

 ワクは既に遠くに離れていると思っていたからだ。

 まぁだけれど、ワクにも会えたことでちゃんと無事が確認できたのだから良かったと思おう。


★★★


「さてこれからどうするか?」


 少し休んでワクが話を進めるように腕を組む。


「相変わらずギバさんはシュントに捕まっている。

 一人で抜け出せそうもないし、誰かが手伝ったとしてもシュントに刺され、ミイラ取りがミイラだ」

「真空状態になるのもいつか? というのも肝心だね。結構でかいから時間はかなりかかるとは思うけど」

「とはいえ、その間に助け出すのはあまりにリスクがありますね。

 ここから中心部まで割と距離もありますし、シュントの抵抗を掻い潜るとなると時間切れになる可能性もあります」


 ワク、ヒナタ、アイラですぐに議論が始まる。

 意見がそれぞれすぐに出るのは経験のなせる技だろう。


「みんなで助けに行くのはどうだ?」

「それこそミイラ取りさ。ギバ団長一人のために何人もシュント君の犠牲になるかもしれない」

「それに作戦を伝えるのも時間がないかと。ここのみんなで行くと言っても戦闘できる人はもういませんし……」


 そう言ってアイラは肩を抑える。


「あぁ……そうだな」


 ワクもシュントに刺された部分を抑えた。


 戦闘員は怪我をしている。

 一人は技術者、そして残りは民間人。

 この編成で中心部まで行くのは確かにリスキーだ。

 かと言って動ける騎士団、自警団に頼む時間もなかなか無い。

 頼んだところで彼らが取り残される可能性だってある。

 それをギバは許さないだろうし、アイラやワクだって避けたいと考えている。


 もうギバを助ける手段はないのか。

 そう思って三人が眉を顰めていると、


「あの……」


 小さな手を挙げる少女がいた。

 少女の顔は心配と真剣が五分五分ほど。

 緊張もしているのか手も震えている。


 だけれど彼らは知っている。

 彼女がこの数日で様々な妙案を意見していたことを。

 この事件の立役者と言ってもいい。

 それだけに彼女の意見は聞いてみる価値がある。

 三人はすぐに少女を真剣な表情で見た。

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