表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ配信中!】少女⇔傭兵の成り代わり  作者: 久芳 流
4章 過去と後悔の行進

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/93

第77話 貴族の少女、戦闘の跡を見に行く

 屋敷にも響く激しい振動。

 パラパラと天井から小粒が落ちてきて、リラは意識が回復した。

 身体は魔力が失った時のように倦怠感があり、小さな手に力が入らないことで元に戻れたのだと気が付いた。


(ギバ様はまだ戦っているのでしょうか?)


 そうであるならば見たい。

 見なくてはならない。

 自分が発端となった事件なのだから、最後まで見届けなければ。

 そう思って身体を起こそうと無い力を振り絞ろうとした時、


「よっと」

「あ……?」


 ワクが両脇を掴んで起こしてくれた。


「ありがとうございます」


 お怪我しているのに、とひどく申し訳なさそうな顔をすると、ワクは笑う。


「気にすんな。小娘ひとり、大したことはない」


 そう言って、ワクはリラの服についた土や埃を軽く払う。

 払うと同時にジャラジャラと言う音がワクの方から聞こえてきた。

 見ると、腰にさっきまではなかった鎖で長く繋がった手錠のようなものを携えていた。


「それは?」

「あ? あぁ、さっき地下牢で見つけた。ギバさんを捕まえてた手錠だよ。

 シュントの野郎を捕まえる道具が欲しくてな」


 そう笑ってその手錠を叩く。また金属が擦れる音が聞こえた。

 これが魔道具だとは思っていないのだろう。

 その疑問が解けるとまたすぐにリラは思い出す。


「ギバ様は?」

「おそらく終わった」

「……そうですか」


 少し落ち込む。気絶している間に終わってしまったとは。

 だが仕方がない。ギバを元の身体に戻せたのだ。

 それだけでも自分が責務を全うできたと思おう。

 であるならば――、


「あの」


 リラはワクに声を掛ける。


「なんだ?」

「痛みで辛いところ申し訳ないのですが。ギバ様の元へ」


 まだ身体が満足に動かせない。

 怪我を負っているワクには申し訳ないが、でも、ギバやシュントを一目見たい。

 ワクはリラの真剣な顔を見ると、ふんと鼻で笑う。


「若いもんが気にすんな。お安い御用だ」


 ワクはリラを軽々と抱き上げると、屋敷の外へ出てくれた。


★★★


「…………」


 外の景色は全く様変わりしてしまった。

 木々は斬られ、地面は抉られ、棘はあちらこちらに突き刺さっている。

 屋敷の壁面にも棘や熱線による攻撃の跡が散々と残っていた。

 更に周りを見渡すと、不思議なことに気が付く。


「あれ?」

「どうした?」

「騎士団や自警団の方たちがいません……」

「……そう言えばそうだな」

「アイラ様もいません」


 アイラを探してみるが、どこにもいない。

 ギバが戦う前はアイラが相手だった。

 決着をつけるギバの邪魔にならないように離れたのだろうか?

 それでも見える位置にはいると思っていたが。


「おーい」


 そう心配していると、どこかから聞き覚えのある少女の呼び声が聞こえてきた。


「おーい、リラちゃ~ん!」


 探すとこちらに手を振るヒナタが馬に乗って駆けてきていた。

 リラは自然と笑みと嬉し涙を浮かべる。


「ふぅ。着いた~!」

「ヒナタ様!」

「お、やっぱりリラちゃんか。この姿でははじめましてだね」

「ご無事で何よりです」


 近衛隊に捕まってしまったあと連絡が取れず密かに心配していたが、ヒナタと無事再会できたことにリラは喜んだ。


「ワクさんも久しぶり」

「おぉ。ヒナタちゃんか。大きくなったな」

「まぁね~」


 ワクとヒナタも久しぶりなのだろう。

 旧交を温めていた。


「だが何でヒナタちゃんがここに?」

「ん? 救助活動だよ」

「救助?」

「そ。僕ら技術班と騎士団医療班で救けにきたってわけさ。

 バナナ盗賊団は魔道具を使うだろうし、殺戮兵器的なの使ってきたからいくらアイラちゃん達でもヤバいからさ。

 念のため駆けつけたんだ」


 もっともこんな惨状だとは思わなかったけど、と笑みを浮かべているが眉を顰め悲しそうな表情をする。

 誰もいなかったのはそのためか。

 きっとヒナタ達が傷付いた騎士団や自警団、盗賊団の人々を安全な場所に連れていき、治療をしているのだろう。


「死んじゃった人はどうしようもないけど、助けられる命があるならそれに越したことはない。

 来てよかったよ。

 アイラちゃんも今、治療中さ。重傷だけど命には別状ないよ」

「そうですか……」


 リラはホッと安堵の息をつく。

 しかしすぐに思い出したようにヒナタを見る。


「ギバ様は……?」

「たぶんあそこ」


 ヒナタが指を差した方向は屋敷とはだいぶ距離があるところ。

 大きなクレーターができていた。

 その中心に人影が見える。

 あそこが戦いの終着点なのか。


「向かいましょう」


 リラが端的にそう言うと、ワクは黙って従う。

 その後ろからヒナタも馬の胴を軽く蹴りついてきた。


★★★


 クレーターの中心部にはやはり黒の鎧を纏った傭兵がいた。

 オールバックにした髪型は崩れかけ、全身も擦り傷だらけ。

 幸い大きな怪我はなかったが、のしかかっている相手が気になるのかそれとも魔力が尽きたのか。

 じっとシュントを見つめ動かなかった。


「ギバ様?」


 ワクから下ろしてもらいリラはそんなギバに声を掛ける。

 ピクッと身体が動く。


「ご無事ですか?」

「あぁ」

「シュント様は?」


 そう聞くと、ギバは黙って身体を退けた。

 シュントの頬には拳の跡が。赤く腫れあがっていた。

 気絶しているのか目を閉じ大の字に倒れている。

 猛威を振るった『光線剣の魔道具』は手元を離れていて、ギバが壊したのか、粉々に砕けていた。


「終わったみてぇだな」

「んん!? あれは魔道具?

 あぁ……壊れちゃって……もったいない」


 その様子を見てワクは肩を回す。ヒナタは粉々になった魔道具を見て悲しそうな表情を見せていた。


「仕方ねぇさ。あれは脅威だった」


 ワクが清々しい顔でそう言うと、ヒナタは諦めたように「はぁ」とため息を吐く。

 そんなヒナタにワクは笑みを浮かべ、その後、ギバを見た。


「おい。ギバさん。奴がちょこちょこ出してたあれ? あぁ~なんだっけ? 身体中から魔道具を出してた」

「『収納の魔道具』でしょうか?」

「あぁ! それだ。『収納の魔道具』! それも厄介だ。今の内に外しておこう」

「『収納の魔道具』だって!? 身体中から魔道具を出す!? ぜひ研究したい!

 ギバ団長、外したらこっちに渡しておくれ!」


 珍しい魔道具の名を聞いてヒナタが興奮する。

 疲れているのかギバは表情には出していなかったが、少し息を吐いたところを察するに呆れていたのだろう。

 だが文句を言わずにギバはシュントの腕輪に手をかける。


 しかし――。


「!!」

「ギバ様!?」


 リラが叫ぶ。

 何かが貫く音が聞こえたと思うと、ギバの手から棘が出現した。

 貫通したのか棘の先端はギバの血が滴る。


 シュントは気絶していたはずじゃ!?

 と顔を見ると、


「ハハ……油断しましたね。気絶したフリ。うまいでしょ?」


 シュントは不気味な笑みを浮かべてギバを見ていた。


「くっ」

「逃がしませんよ」


 シュントから離れようと棘を抜こうとするが、シュントの身体から更に棘が。


「ゴフッ!」


 ギバを貫き身動き取れなくした。


「クソ!」


 ワクは舌打ちをすると、ギバを助けにいこうとクレーターを降りようとするが、


「来るな!」


 ギバが叫ぶ声で立ち止まる。


「おい、なんで――……ッ!?」


 文句を言おうとしてワクの言葉が止まる。

 見ている先はシュントの左手。

 『毒の魔道具』――ハレーがいつの間にか握られていた。


「ここで使うつもりはありませんでしたが、もう仕方がないです」


 シュントはハレーを起動する。魔道具は少しずつ紅く発光する。


「ギバ団長、さっき僕を止めるのが唯一の責任の取り方だって言いましたよね?」

「…………」

「唯一だって? 馬鹿を言わないでください。

 まだあるでしょう……」

「……なんだと?」

「僕と一緒にエリーに謝りに行きましょう」

「ッ! 逃げろ!」


 ギバの叫びと同時にハレーは主の命令に従い機械的に発動した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ