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【コミカライズ配信中!】少女⇔傭兵の成り代わり  作者: 久芳 流
4章 過去と後悔の行進

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第76話 元騎士団長の傭兵VS元騎士団長の部下

 ガン! という重く低い金属音が鳴り響く。

 その後、すぐに金属がぶつかり合う音が鳴り響く。

 光速剣と通常の剣による高速連撃。

 ギバは大剣一本でそれらを捌いていく。


 光線剣により大剣は欠け、通常の剣により追い打ちをかける。

 無骨で頑丈。刃がない大剣だが、光線剣は容赦なく削り取る。

 それだけでは飽き足らず、質の良い騎士団時代の剣を使い、脆くなった部分を斬られていく。

 金属片が周囲に飛び散り、徐々に大剣が大剣でなくなるのが重さの変化でわかった。


 研鑽をしていたのかこの二刀流は厄介だ。

 破壊を目的とした技だと言えよう。


 崩れるのは時間の問題。

 傭兵になった頃から愛用していた大剣。

 愛着がないわけではないが、このまま打ち合いに固執し続けたらやられる。


「――ッ!」


 通常の剣が来たタイミングでギバは自身の身体に魔力を込める。

 最大出力の魔力による身体機能の増強。

 大剣を力一杯振り上げると、


「ぐっ!」


 シュントの剣はその力に負け弾かれる。

 だが良質な剣だ。破壊はできない。

 むしろこの大剣の方が耐えられない。蓄積されたダメージも相まって内部にヒビが入った感覚を得る。


 だがシュントが怯んだタイミングを逃すわけにはいかない。

 壊れてくれるなよ、と心の中で頼みつつ大剣で地面を抉る。

 増強された剛腕により地面は深く掘られ、スウィングすると岩石も混じった砂の津波がシュントを襲う。


「目潰しとはギバ団長らしくない!」


 すかさずシュントは光線剣の出力を上げる。

 長さはそのまま。太さを最大にし巨大な団扇のごとく横なぎする。

 砂の津波は超高熱の紅の面により蒸発、もしくは溶岩のような液体となり辺りに飛散する。

 ドロドロと熱を帯びた砂や岩が地面を燃やす。

 出力を抑え元の太さに光線剣を戻す。

 津波は跡形もなく消えた。

 が。


「! 消えた!?」


 ギバもその場にはいなかった。

 シュントとの間に砂の壁を作ることで次の一手にもう進んでいた。


 シュントは左右を見る。いない。

 後ろを見る。いない。


 ではどこか。

 シュントの足元の影がだんだん大きくなる。


 上だ!


 頭上を見ると、漆黒の傭兵が大剣を振り上げた状態で落ちてきていた。


 咄嗟に後ろに下がる。

 シュントがいた位置にギバの大剣が振り下ろされる。

 着地と同時に間髪入れずにギバは地面を蹴る。


 突進する勢いに任せて大剣を横に振るう。

 シュントはすかさず剣を盾にして防御姿勢を取る。

 だが片手での防御では魔力で増強した膂力には敵わない。


 剣同士がぶつかり合うと同時にシュントは後ろに弾き飛ばされる。

 追い打ちをかけようとギバは攻める。


「くっ……『棘の魔道具』!」


 シュントは魔道具により生成したニードルを全身から射出。

 飛び出たニードルは魔力が大量に込められているのか太く大きい。

 数十本はあるであろうそのニードルをギバは大剣で弾いたり、避けたり。

 だがその分スピードは落ちてしまう。

 体勢が崩れている今がチャンス。


 致命傷以外は対処しない。


 ギバは仕方なしと足に魔力を込め、走る速度を爆発的に上げる。

 太ももや肩、脇腹に掠り血が噴き出るが気にしない。


 ギバが迫る中、シュントは漸く着地して足を踏ん張る。

 地面が抉れ砂埃が舞う。

 それと同時に二刀をクロスする。

 削り取るために光線剣を前に。自分を守るために剣をその後ろに。

 超スピードで来る人間を受け止めようと、歯を食いしばる。


 目前になったタイミングでギバは力の限り大きく大剣を横なぎする。

 大剣が悲鳴を上げる。

 光線剣と密着したことで激しい火花と鉄の破片、粒子が散りばめる。

 熱い粒が頬を掠め火傷する。

 だが力は抜かない。


「くっ……これ以上は剣が壊れますよ!」


 煽るように叫ぶシュントの声に耳を貸さない。


「やっぱり戦い方、変わりましたね」

「…………」

「騎士団の頃はこんなに乱暴じゃなかった!」

「…………」

「もっと信念があった!」

「…………」

「目つぶしなんて汚い手を使わない!

「…………」

「傭兵になったからってなりふり構わずなんて。そんなのギバ団長らしくない!」

「…………」

「あんた、ほんとにギバ・フェルゼンか!?」

「……そうだよ」

「!!」


 押す力が増した。

 身体ごと押され踏ん張った足が次第に後ろに。地面に溝ができる。

 大剣の悲鳴も大きくなる。

 が。


 ――ガチ……。


 金属同士が静かに当たる音が聞こえ通常の剣にも触れていることがわかった。

 瞬間。

 獣の咆哮。

 ギバが吠え、更に力が増強した。

 その気迫にシュントは目を大きく見開き全身が震える。


「私はもう団長でもない。信念もない。ただの傭兵だ」


 バキバキ、と何かが崩れる音が手から伝わってきた。

 だがギバは躊躇しない。

 更に全身に魔力を込める。既に限界は近い。

 いつもよりも百倍以上の魔力を瞬間的に身体に込め続け、そのせいか筋繊維がブチブチとちぎれ血管が破裂する。

 腕や足、傷付いた部分から血が噴き出し、ボロボロになっていく身体。

 ギバは更に魔力を投入した。


「だが、ギバ・フェルゼンであることに変わりない!」


 そして――。


 ギバの大剣は破砕する。それと同時にシュントの剣も。

 ギバはすぐに柄を離す。

 剣が壊れるとは思っていなかったシュントは強張った握りのせいで離すことはできず。

 光線剣もシュントのその動揺に呼応したかのように霧散した。


「役職も信念も戦い方も、そして外見も関係ない。

 だから私は元騎士団長としてではなく私自身でもって君を止める」


 握り拳を作り迫るギバに対応できなかった。

 全身全霊。

 ギバは足を踏ん張り、右腕を固め、腰を回転させ、シュントの頬に重い一発を。

 地面に落とすような勢いでシュントを叩きつけた。


「それが今できる唯一の責任の取り方だ」


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