第72話 第一師団長、元騎士団長のため元同僚と対峙する
閃光と爆音。
既に何回も使っているが、やはり慣れない。
最新式の人工魔道具『閃光の魔道具』。
威力もそこそこで使い勝手も良い。
こっちが慣れていないのだから、一回しか喰らっていない者にとっては堪らない。
「クソ! またか」
シュントは目を瞑るが怯むことなく『光線剣の魔道具』を振り回そうとして、
「させるか!」
「グアァァ」
持っていた方の二の腕に細くボロボロの剣が突き刺さる。
思わず魔道具を落としていた。
辛うじて見える目で前を見ると、紅の長い髪が舞っていた。
ギリっと歯軋りを立て、シュントは大声でその張本人の名を叫ぶ。
「アイラ・マヤ!」
アイラは冷静に魔道具を蹴り飛ばし、同時に剣を抜く。
「グッ!」
二の腕から血飛沫が飛び散った。
「ワクさん、今のうちに!」
「あぁ! 人使いが荒ぇな、全く!」
アイラが叫ぶと、ギバ達の後ろからワクが駆けてくる。
「よっと!」
「!!」
すぐにギバとリラの腰を引っ掴むと持ち上げる。
怪我をしているというのに、気合で耐えている。
そんな彼に負担を掛けないようにギバは力を抜き、なすがままになると、
「しばらく頼む」
とアイラに声を掛ける。
「もちろんです」
シュントに目を離さずアイラがそう言ったのを聞くと、
「行くぞ」
と全速でシュントとアイラから離れ、バナナ盗賊団がアジトとしていた屋敷に逃げていった。
★★★
「行ったわね……」
ワク達が去っていくのを横目で確認して、アイラは剣を握り直す。
「クソ! クソ!」
「……初めて見るわね」
「あ?」
目をゴシゴシと擦りつつ、シュントはアイラを睨む。
「騎士団の頃はもっと陽気で爽やかだと思ってたけど」
「……聞こえないな」
「それがあなたの本性なの?」
「聞こえないって」
「そんな口調で叫んでいるとなんだかあれね。
小物に見えるわよ」
「聞こえないって言ってるんだよ!」
シュントの身体中からニードルが飛び出る。
先程使っていた『棘の魔道具』だろう。
どこにいようと関係ない、と言わんばかり四方八方に放出されるニードルをアイラは剣で捌いていく。
ニードルをガードするたびに剣の破片が辺りに飛び散る。
この剣が完全に壊れるのも時間の問題なのかもしれない。
「あんたはいつもいつも偉そうに!」
シュントは前屈みになり、まだ見えていない目でアイラを睨む。
「さっきまで倒れてた癖に!」
「そりゃ動けなかったわよ。
でも知ってるでしょ? うちの元団長は人使いが荒いって」
――――。
シュントとリラが戦っている最中のことだ。
リラが動けなくなり、シュントがリラの心を折ろうとした瞬間、ギバはふらふらと前へ出た。
そして落ちていた大剣を拾うと、
「私が気を引く」
ギバはアイラとワクに向かってそう言った。
「その間にアイラくんは『閃光の魔道具』の準備を。ワクさんは時が来たら、彼女を抱えて屋敷の方へ」
とリラを指差した。
「痛むかもしれないが、我慢してくれ。
無鉄砲な貴族の令嬢を助け出す」
そして二人の返事を聞かずにギバは大剣を投げたのだった。
――――。
「有無を言わせずに飛び出しちゃうんだから」
呆れたようにため息を吐くアイラ。
「でも仕方がないよね。それがギバさんなんだから」
ギバは多くは語らない。
優秀が故に自らが作戦を立て、強い故に一人で解決できてしまう。
部下に丸投げをすることは滅多にないし、部下を信じると口では言うが、自分が囮になることもしばしばある。
それは昔から変わらない。
「そんな団長に『頼む』って言われたら頑張るしかないでしょ!」
そんなギバがアイラに向かって「頼む」と言った。
アイラを全面的に信頼し、託したのだ。
剣はボロボロ。身体は傷だらけ。
だけれどアイラの剣を握る力は強くなる。
アイラはニヤリと口角を上げた。
「あなたもそうだったんじゃないの?」
「…………」
シュントはギリッと歯軋りを立て、右の手の平から剣を出す。
その剣は騎士団時代から使っている片手剣。
剣全体が出るとその柄を握った。
「アイラさん……僕はもう騎士団じゃない。
古臭い説教なんて聞きたくもない」
「そう。ならあなたにはもう容赦はしない」
身を屈め、剣先をシュントに向けるように構える。
アイラ独自の構えだ。
「完膚なきに痛めつけて、反省させてやる!」
「ボロボロの貴女じゃ時間稼ぎにもならないですから」
シュントも剣を両手で掴み、斜めに構える。
「一瞬で殺してあげますよ」
瞬間、アイラとシュントは同時に動き出す。
金属がぶつかり合う甲高い音が周りに響き渡った。




