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【コミカライズ配信中!】少女⇔傭兵の成り代わり  作者: 久芳 流
4章 過去と後悔の行進

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第68話 傭兵の姿をする貴族の娘、身体が勝手に動いてしまう

 どうしてだろう。


 リラがまず思ったのがそれだった。

 確かに助けなきゃとは思った。

 アイラが切られそうで、シュントの振るう剣をなんとかして防がないと、と考えた。

 でもあくまで考えただけ、思っただけだった。


 なのになぜ自分がここで剣を握っているのか。

 なぜ剣を抜いて、アイラの頭上で止めたのか。

 記憶を遡っても動こうという意思はなかったと思う。

 ただ身体が勝手に動いた。


 考えた瞬間に、アイラの命を救うための最適な動きを勝手にやったのだ。

 精神の言うことは聞かず、身体の本能が優位に立つ。

 身体に強い意志を感じ、抵抗する間もなく、シュントの光線剣を弾いた。


「リラ・ブラウン!!」


 シュントは怒鳴る。


「またあんたか! ギバ団長と話している時も邪魔して! 今も邪魔しやがって!

 貴族でガキで剣も握ったこともない奴がなぜ動く!?」


 自分でもわからない。

 だが、思い当たる節はある。

 ずっと前にギバが言っていた。


『中身が変わっても、私のように動かせることがわかったのは朗報だな』


 今入っているのはギバの身体だ。

 もしかしたら自分の思いに反射的に動いたのかもしれない。

 だからこう答える。


「た、助けたかったから」

「助けたかった?」


 イラついた様子で睨みつけるシュントはそう復唱し、「はっ」と馬鹿にしたように笑う。


「ただの貴族のご令嬢だろうが。そんな奴が助けたかった? 命を奪い合うこの場で? 馬鹿も休み休み言え」


 口調があからさまに違うシュント。

 誘拐を仄めかした時や誘拐された時とは全く違う。

 その時はもっと丁寧で優しい言葉遣いだった。


(これが本性ということですか……)


 自分が騙されていたことに今更ながら実感して、リラは少し下唇を噛む。


「立ち去れよ! この場から! 戦う術もないお前がしゃしゃり出て良い場所じゃない」


 そう言って魔道具を発動する。

 紅い光線は伸び、リラの真横を通り過ぎる。

 一瞬のことで細部まで見れないが、自分の頬に掠ったことはわかった。

 掠った部分が熱く、血が出たからだ。


 これは警告なんだと直感する。


 だけどリラは動かない。

 恐怖で歪みそうになる顔を必死に押さえて、ガタガタと震える足で精一杯立ち続けた。


「た、立ち去りません!」


 そして震えた声でシュントにそう言い放つ。

 勝手に動いたのは身体だ。けれど助けたい気持ちに嘘はない。

 ここで立ち去れば、アイラやギバが死ぬというのであれば、リラは動かないことを選択した。


「なぜ立ち去らないんだ?」

「殺しちゃダメです」

「……そうか」


 その馬鹿げた答えにシュントは呆れたようにため息を吐き、


「ならば死ね!」


 直後に光線剣をリラ目掛けて振ってきた。

 その軌道はリラと――そしてアイラごと切る。


(剣を防がなきゃ! アイラ様も安全な場所へ!)


 そう思うのと同時にまた勝手に身体が動き出す。

 アイラの襟を片手で掴み、すぐに自分の後ろに投げる。

 と同時に大剣をもう片方の手で構えた。

 魔力は無意識にだったが事前に身体に張り巡らせていたのが功を奏した。

 大剣は軽く。アイラも軽く。

 一瞬にして光線剣を弾き、アイラもギバが寝ているところに追いやることができた。


 そしてこの身体は賢かった。

 光線剣を外側に弾いたことで胴体がガラ空きとなったシュント。

 ここを出来るだけ安全な場所とするためにリラはシュント目掛けて走り出した。


(え? え?)


 なぜ走り出したのかわからないリラ。

 身体の動きに全てを任せることにしたが、心の中ではかなりの戸惑い。

 なぜそう動いたのか。

 戦いを経験したことのないリラにとってはその意図がわからなかったが、すぐに答えが実現する。

 肩を前にして、シュントをテントから押し出したのだ。

 魔力を込めたこともあって、その力は段違い。

 シュントの身体は吹き飛び、身動きが取れないアイラ達三人から距離を離すことに成功した。


「なるほど……」


 アジトの側まで飛ばされたシュントはふわりと着地する。

 押し出される直前、軽く後ろにジャンプして衝撃を和らげたのか、ダメージはそれほどない。


「鍛錬したのか、ギバ団長の身体だからか。戦う術はあるようだ」


 先ほどの怒りは鳴りを潜め、じっと冷静にリラを見る。

 リラも覚悟を決めてテントの外へ出て大剣を構えると、シュントの目を真っ直ぐ見た。


「ならば容赦はしない。あんたを敵として認識する」


 シュントはそう言い放つと、地面を蹴った。

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