第61話 自警団達は心の底から大笑いする
辺り騒然。
何事かと驚いてリラは顔を上げる。
前にいる自警団達全員が腹を抱えて笑っていた。
「ダメだ! 腹イテェ!!」
「まさかギバさんの姿で少女とはな」
「あんな強面の顔で振る舞いが女だぜ?」
「いっつも眉間に皺があんのに、今日はずっとお淑やかだ!」
「おい! 誰か絵師を連れてこい!」
「いや、カメラの魔道具と写真家が良い! どっかの貴族から奪ってこい」
「え……え?」
戸惑うリラを置き去りに自警団達は笑い転げながら方々に口を開く。
「それよりも誰か地図だ! 地図、持ってくるんだ! その地図にない場所を書き足そう!」
「おぉ! そうだった! おい! アイラさんも手伝え! 騎士団はどこを探したんだ?」
「周辺の聞き込みしてくる! お前ら行くぞ!」
「おう!」
テキパキと動く自警団達の様子。
「アイラ様、こ、これはいったい……?」
「あ、いえ、つまり……成功した……んでしょうか?」
リラは戸惑いを隠せず、そしてその背後にいるアイラも目を丸くして動けずにいた。
「おう。リラちゃん……って言ったか?」
そんな中、一人の初老の男がリラに近づいてきた。
その男性を見て、アイラは会釈する。
「あぁ〜よせよせ。貴族がただの平民に会釈なんてするな」
初老の男はそう言って、アイラに頭を上げさせる。
「この様子だと、アイラさんも驚いているようだな」
「あの……お爺さまはいったい……」
「ん? あぁ。俺はワクってもんだ。しがない自警団の老害よ」
初老だが、長年現場で走り回ってきたかのように身体つきはがっしりしている。
眼も他の自警団よりも鋭いが優しさも垣間見えた。
そんなワクにリラは軽く会釈すると、戸惑い混じりに今の状況を聞いた。
「ワク様……これはいったい」
「あんたの依頼を受けたってことだよ」
リラの疑問にワクは当然かのようにそう答える。
「え?」
「そう言えば、あんた、ちょっと勘違いしてたな」
「勘違い……ですか?」
「俺たちゃ何も騎士団やギバさんのことを嫌ってなんかいないんだぜ」
そう言われて、リラは驚き息を漏らす。
「あんたらに依頼されたら俺たちは喜んで協力する準備はできてたんだ」
そしてリラだけでなくアイラも驚いていた。
「なーのに、騎士団ときたら俺たちに何もするなぁって言いやがったり、俺たちの事件を奪ったりしやがって、そりゃあ腹が立たないわけないだろう?
アイラさん、あんたもそうだ」
呆れたようにため息を吐き、アイラに話を振る。
「第一師団とやらも俺たちにも変に気を遣って依頼しなかっただろう?
アイラさんが依頼してくれりゃこっちだっていくらでも手伝ったってぇのに」
アイラ率いる騎士団第一師団はギバの想いに共感した人達で構成されている。
つまり今の騎士団の大半を占めている自警団嫌悪派が全くいない師団だ。
協力できるならしたいと考えていたが、自警団が騎士団全般を嫌っていると思っていたから依頼をしていなかった。
だけれどそれは間違いだったようだ。
「それとギバさんだ」
「ギバ様もお嫌いではないのですか?」
「当然だ! なんであんな俺たちのことを考えてくれた男のことを嫌いになる? むしろ自警団はみんなギバさんのことを慕っているよ」
「!!」
「許せねぇのはあれだよ。自分の信念を半ばで諦めたことだよ!」
「…………」
「なんだっけ? 俺たちと協力して正しいことができる騎士団だっけ?
それを元老院やらに言われたくらいで辞めやがって……ほんとしょうがねぇ、騎士団長様だ!」
ワクは腰に手を当てて、呆れたようにそうため息を吐く。
「まぁ元老院に脅されたんだろうがな。
逆らえばアイラさん達や俺達自警団を辺境に飛ばすとか殺すとか。
だったら俺たちに言ってくれりゃいいのによぉ!
変に責任感じやがって……!
あの事件以来、ここにも来やしやがれねぇ!」
そう言ってから、ワクは笑みを溢した。
「こりゃあ元に戻ったらお灸をすえてやらなきゃな! だからお前さん」
鋭い眼で彼はリラを見た。
「俺達はお前さんに頼まれた。何でも言ってくれ! 命に代えてでもギバさんを連れ戻す」
その言葉にリラは魔力を全身に込めたように震え、目頭も熱くなった。
「ありがとうございます!」
「私からもお礼を。騎士団を代表して協力に感謝いたします」
リラが頭を下げると、後ろで震えた声でそういう言葉が聞こえた。
「よせよせ! 恥ずかしい」
茶化されたかのように手を振ると、すぐに「それより」と真剣な表情でリラ達を見た。
「お前さん達に知っている情報を全てくれ。俺達が全力で探し出してやる」
「はい!」
「承知しました」
騒がしい大広間の中、二人の声もその中に溶け込んだ。




