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【コミカライズ配信中!】少女⇔傭兵の成り代わり  作者: 久芳 流
3章 涙と誤解の決壊

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第60話 傭兵の姿をする貴族の娘、自警団に頭を下げる

 辺りが騒ついた。

 当然だろう。

 見た目が見た目だ。信じられるはずがない。


「ちょ……リラ様?」


 後ろにいるアイラも驚きの悲鳴を小さく上げていた。

 だけど構わない。

 自警団の方々を見て、ここに来る前のアイラの様子を思い出し、自分の立ち振る舞いを見直した。


 正直に。誠心誠意に。

 そうしなければ、この方々にはおそらく響かない。


「わたしとギバ様はある魔道具によってここ数十日間、入れ替わってしまっています」


 より騒めく。

 隣で小声で話し合う者、何故か呆れ返ってため息をつく者、目をぱちくりとしてこっちを見ている者もいた。


「信じられない方もいるでしょう。ですがどうでしょう?

 ギバ様を知っている方ならわかるはずです。彼がこんな冗談を言うはずがないと」


 だがリラは気にせず口を回す。

 出来るだけ全員に聞こえるように大きく、はっきりと声を響かせる。


「昨日のシュント・リガイ様率いるバナナ盗賊団による映像はご覧になられましたでしょうか?

 あの映像で映っていた少女の中にギバ様の精神が入っています」


 王都にいた者なら誰でも見た。

 バナナ盗賊団のテロ予告。その中に捕まって気を失っていた少女も映っていた。

 見ていない人はいないはず。


「ギバ様は今、命の危険に晒されています」


 徐々に大広間は静かになってくる。

 みんな、リラの言葉を真剣に聞き出したのだ。


「その原因のひとつはわたしです。

 わたしの身勝手で、独りよがりな考えのせいでギバ様をあのような危険な状況に置いてしまいました」


 ことの発端。それはリラの狂言誘拐事件だ。

 シュントの口車に乗せられ、リラ自らの意思で誘拐された。

 それを助けたが故にギバと自分は入れ替わり、そして今、ギバが危険な状況に追いやられている。

 だけど――。


「わたしは彼を助けたい」


 元は自分が原因とはいえ、ギバを救いたいという気持ちに嘘はない。


「ですが、盗賊団のアジトはここ数週間、騎士団や近衛隊が探していても見つかりせんでした」


 リラの出す低い声は奥まで届き出した。


「あなた方と騎士団の事情は存じております。そしてギバ様との事情も……。

 ギバ様を助けたいなんてあなた方は微塵も思わないでしょう」


 自警団は騎士団を恨んでいるに違いない。

 六年前のあの事件。

 それで彼らを裏切った騎士団の当時のトップを今更、助けたいなんて思うはずがない。

 末端の彼らが団長は依頼を出したなんて知る由もない。

 知っていたとしても直接依頼を出さなかった時点で出していないのと同義。

 そんな彼が――ギバが――命の危機になっていたとしても自警団には関係ないはずだ。


「ですがお願いします」


 リラは頭を下げる。


「ギバ様を助けてくださいませんか?

 あなた方が頼りなんです。

 わたし達は発見することができませんでした。きっと盗賊団は地図にない場所に隠れています。

 この王都周辺を知るあなた方の方がそういう場所に詳しいはずです」


 必死で声を張り上げ、目頭も熱くなる。

 でも泣かない。泣いて縋るなんてダメだ。

 彼らの心の内に、本心に訴えるなら、泣いている場合じゃない。


「だからお願いします。わたし達に協力してください!

 ギバ様を……王都を助けてください!」


 叫び終わった後、頭を下げたまま静止する。

 誠意を見せるためでもあったが、本音では顔を上げるのが怖かったのだ。

 自分の思いが伝わったのか。それとも違うのか。


 長い長い沈黙。

 もしかしたら認められなかったかもしれない。

 拙い言葉だった。

 もっと上手いこと話せたら良かったのに。

 本心で話すというのはこれほどまでに難しいのか。

 今まで本音で話さなかったことをリラは今更ながらに後悔した。


 どのくらいの時間が経過しただろう。

 たった数秒かもしれないし、数十分かもしれない。もしかしたら小一時間は経過したかも。

 それくらい体感では長い静寂が続いていた。


「……ブッ」


 やがて何かが噴き出す音が聞こえた。

 それはところどころに伝播していく。

 誰かが唾を吐いたのだろうか。そしてそれに続いて皆も?

 やっぱりダメだったか、と思った途端、


「「「ブハハハハハハハハハハァァァア!」」」


 自警団達の笑い声が大広間に響き渡った。


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