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【コミカライズ配信中!】少女⇔傭兵の成り代わり  作者: 久芳 流
3章 涙と誤解の決壊

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第55話 傭兵のフリする貴族の娘、技術班班長から説の補足を授かる

「え? ヒナタ様は地方貴族ですよね?」

「そうさ! 西武地方で生まれたコテコテの地方貴族さ」

「なのに『星の降る街』を知らない……?」


 自分の説が崩れてしまったためか、リラは目を見開く。

 混乱しているように目を泳がせている。


「けれど、説としては有力だ。むしろより強固になったと思う」


 リラが混乱している中、ヒナタはそうフォローする。


「ただ前提が、出発地点が間違えていただけだ」

「えっと……いったいどういう意味なんでしょうか?」


 ヒナタの遠回しな言い方にリラは戸惑う。


「ヒナタ、勿体ぶるのはあなたの悪い癖よ」

「イヒヒ~ごめんごめん」


 アイラの注意にヒナタは悪びれた様子もなく笑みを浮かべた。


「じゃあ説明するよ。リラちゃんの考えでは中央貴族と地方貴族でアストロの知っている話数が違うってことだったね?」

「えぇ。『星の降る街』を知っているお父様とギバ様は地方。知らないお母様とアイラ様は中央でしたから」

「けれど、僕も知らない」

「……そうですね。ですからこの説は間違っているのでは――」

「じゃあこうは考えられない?」

「…………」

「地方のおっさん達は知っていて、王都と若者は知らない」

「!! そうか! そういうことなんですね」

 

 ヒナタの言葉に確信が得たようなリラ。


「なるほど……確かにそっちの方が自然ですね」


 興奮したように叫んだかと思えば、すぐに冷静に指を顎に当てて考えるように呟く。

 そんなリラを見て困ったようにアイラは手を上げた。


「ヒナタ……リラ様……わかるように説明を……」

「つまり、元老院が『星の降る街』を隠し始めた時期が関係している」

「理由はわかりませんが、おそらくお母様が子供の時、『星の降る街』を隠し始めたんです」

「その時は中央だけ。予算か時間か、その両方がなかったのか地方ではまだ出来なかった」

「だからお母様と同世代のギバ様やお父様は知っていた。当然、奇跡的に残っていた当時のアストロの本を読んでいたわたしもそうです」

「だけど世代が下に行く度に地方にも影響を拡大させた」

「アイラ様はもちろん知りません。中央貴族だから」

「そして僕も知らない。何故なら若いから!」


 ヒナタの言葉にアイラは「なるほど」と呟いた。


「つまりラルー様の世代から元老院が『星の降る街』を隠し始め、地方まで行き届いたのがヒナタの世代……」

「そうです。そしてその方が、残念ながら辻褄が合ってしまうんです」

「どうしてですか?」

「例の論文が出たのが、ちょうどギバ団長が子供の時だったからさ」

「!!」


 ヒナタの説明にアイラは絶句する。

 例の論文といってヒナタが指差したのは論文集。

 魔道具の場所と在処と示した論文が出たのがその頃だというのだ。


「『星の降る街』が消え始め、魔道具の生成についての嘘の論文が出た。その時期が被るのはもう偶然じゃないよね」

「そんな……で、でも! だからといって仮にそれが本当にそうだとして、魔道具生成の秘密がそんなに大事になるものなの?」

「いいや! 大事さ!」

「いったい何が?」

「この国の……もしくはこの世界の、かな。魔道具研究はおそらくもう何十年も遅れているってことになる」

「……!?」


 アイラは驚きで目を見開いた。


「魔道具はこの世界を豊かにしてくれる道具だと僕は考えている。確かに魔力の差はあれど、いずれ平民でも扱えるように発展する可能性がある」

「…………」

「天然の魔道具生成について嘘があるなら、天然の魔道具の探し方が間違っているということ。

 間違っているということはどういうことかわかる?

 これまで研究に充てられた膨大な時間が無駄になっていたってことなんだ。探索も含めてね」

「……ちなみに今現在だと魔道具を探すのにどれくらいの時間かかるの?」

「およそ三年」

「三年!?」


 ヒナタが立てた三本の指にアイラは驚きの声を上げた。


「もちろん研究価値のある超レアな魔道具に限ってだけど。クズみたいな魔道具もたくさんあるからね」

「それでもそんなに見つからないものなの?」

「さっき見せたよね? 魔道具は常に魔力を放出してる。魔力は無限じゃない。

 コーティングしたり魔力を与え続けないとだんだんと弱くなる。消えてしまう魔道具もある」

「つまり生成された魔道具はすぐに発見しないと消えちゃう……?」

「そういう魔道具もあるってこと。全てじゃない。けれど、そういう魔道具こそ研究しないとダメだ。これ以上の発展がない」


 だから、とヒナタは真剣な表情でアイラを見つめた。


「この事実はもしかしたら魔道具研究だけじゃない、世界を脅かすことになるかもしれない」

「そんな……あ……」


 そこでアイラは思い出したように言葉を漏らす。


「そういえば近衛隊――いえ、実際にはシュントだけど――彼がブラウン家に来たのってあの彗星を見た翌日……」


 そしてフォードが依頼を破棄したのもその日だった。

 実際に来たのはシュントではあるが、それ以前に元老院は近衛隊が事件を引き継ぐ命令を出していた。

 それら全て動いたのはあの彗星が来て、流星が王都近郊の丘に落ちた翌日だ。


「元老院は『流星が魔道具』であることを知っていて、バナナ盗賊団に落ちてきた流星――魔道具『ハレー』を奪われたとすれば筋妻が合う……」

「決まりだね。だからあの爺さん達はバナナ盗賊団を追い、かつアイラちゃん達にこの事実を知られないようにするために、近衛隊を派遣したんだ」

「まさか……そんな……」


 アイラは信じられないといった様子で口を抑えた。

 

「それにしてもです。何故、元老院はそのことを隠したのか。それが不思議で仕方ありません」


 リラも考えるように腕を組んで上を向く。

 だが、その答えは元老院に直接聞かないとわからない。

 そして直接聞くことは今いる三人では難しい。

 それを物語るように、


「確かに……でももう時間がないようだ」


――ドンドン!!


 激しい物音が扉から聞こえた。

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