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【コミカライズ配信中!】少女⇔傭兵の成り代わり  作者: 久芳 流
3章 涙と誤解の決壊

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第51話 傭兵のフリする貴族の娘、技術班班長の作った魔道具に興味惹かれる

「これ、何か覚えてるよね? リラちゃん!」


 ヒナタはそう言って手に持っている魔道具を前に出した。

 手に握れるくらいの大きさで鮮やかな黒い色。

 もちろん覚えている。

 ギバと入れ替わって初めての日、病室でギバに見せてもらった自分達が入れ替わった原因とされる魔道具だ。


「えぇ。存じております」

「イッヒッヒ〜ギバ団長の畏まった敬語なんておっかし〜……あぁーわかったわかった。ごめん。ちゃんとやるよ! だからそんな睨まないで、アイラちゃん」


 アイラが横で「まったく」とため息を吐いているのがわかったが、ヒナタは臆することなく続ける。


「この魔道具ね。リラちゃんもわかっていると思うけど、魔力を込めても全然反応しないように見える」


 けれどね、とヒナタは側にあった机の方に寄る。

 机の上には何かしらの装置のようなもの。

 木の縁に透明な板が入った箱みたいで、下の縁部分には小さな水晶のようなものがひとつ突起のように出っ張っていた。


 よくよく周りを見れば、この部屋には至るところに装置や魔道具が陳列してあった。

 雰囲気的にはどこかの研究所。

 ヒナタが騎士団技術班の関係者、だとするならもしかしたらここは騎士団にある研究室なのかもしれない――、


「あ、安心して。ここは騎士団は関係ない。私が()()()()借りてる部屋だから」


 ――と考えていたら、見透かされたようにヒナタがそう補足する。

 そのことに驚いて目を見開いてヒナタを見ると、何故かウィンクしてくる。

 そしてヒナタは机の上の装置に手に持っていた魔道具を入れる。


「これは『魔力検知器』。私が作った人工魔道具さ。中に入れた物の魔力を可視化してくれるんだ」

「……! なるほど」


 ヒナタの話を聞いて、リラは興味深げにその装置の元へ。

 魔道具だと知って興味が湧かないリラではなかった。

 実際に、


「お、さては魔道具好きの変態さんだな。私と同じだね〜」


とそれだけの行動でヒナタにバレてしまった。

 けど、気にしない。今はそれよりも『魔力検知器』と呼ばれる魔道具について、だ。


「じゃあ起動するよ」


 ヒナタは装置の縁にあった小さな水晶に指を触れる。

 どうやら魔力を込めるところ――つまり起動スイッチだったようだ。


 ブォン、という音が鳴り魔道具が起動する。

 すると箱の中では、緑に着色された光の波動が現れた。

 魔道具を中心に色が濃くなり、外に行くほど薄くなる。

 ゆらゆらと輝くその美しい光に「わぁ……」とリラは思わず感嘆な声を出した。


「この光は入れた魔道具が出している魔力波を可視化したものだ。

 魔道具は基本的に自身にも微弱に魔力を持っていてね。魔力を常に放出しているんだ」

「――! あ、だから魔道具が出没するところには魔素が豊富なんですね」

「お? リラちゃん、さすが。わかってる人だね! その通り。魔道具から放出された魔力が空気中の塵に紛れて所謂、魔素になる」

「なるほど。あ、じゃあ一般には魔素があれば魔道具が生成されると言いますが……」

「少なくとも僕はその考えに疑問を抱いているね!

 そもそも魔素が魔力が籠った微弱な粒子というけれど、そんな粒子、実験で確認したこともない!」

「おぉ〜! それは初耳です。魔素なんてないなんて新しい考え! あ、じゃあやっぱり魔道具の生成は――」

「ゴホン」


 アイラの咳払い。

 リラとヒナタの議論が白熱しそうになったところで、アイラが引き止める。


「続きを聞いても?」

「お、こりゃ失敬。リラちゃん。またあとで話そうか」

「全くヒナタは……」

「イヒヒ〜ごめんごめん。それで……なんだっけ?」

「……この魔道具の解析結果の話でしょ?」

「あぁ! そうそう。それでこの魔道具。他の魔道具と同じように魔力を出してるんだけど、ちょっと変わった性質があるんだ」


 そう言うと、ヒナタは「リラちゃん、手を貸してくれる?」と手のひらを上にして前に出す。

 何の意図があるのか、首を傾げつつもリラは素直にヒナタの手の上に自分の手を乗せると、


「えい」

「!!」


 そのまま魔力検知器の中へ入れられた。

 急な出来事に驚くが、箱の中は別に何も感じない。

 少し考えればこの魔力検知器は魔力を可視化するだけなのだから、当然。

 ついでに言うなら、造った本人(ヒナタ)の手もその中に入っているのだから、危害は特にないのだろう。


「この状態で少し待ってて」


とヒナタの言う通りにしばらくじっとする。

 すると、


「! わたしの手からも光が……」


 リラは目を丸くする。

 魔道具から出る光に交わるようにリラとヒナタの手――いや、箱に入っている腕一部から緑色の光が放出された。


「人間からも微弱に魔力は放出されるからね……ちょっとわかりやすくしようか」


 そう言うと、ヒナタは箱の側面の水晶を弄り出す。

 魔道具の光の色は変わらず。

 だが、リラから放出される光の色が黄色に、そしてヒナタから出るのは青色に徐々に変化した。


 リラはその変化に目を輝かせる。


「す、すごいです! こんな装置を作れるのですか!」

「イヒヒ〜まぁね。でもこれはあくまで検知器。驚くのはそこじゃないよ」

「そうなのですか?」

「あ、もうそろそろかな?」


 箱の中では緑と黄色と青の光が入り乱れる。

 それまでこれといって変化がなかったが、黄色と青の光が次第に魔道具に近づくと、突如変化が加速した。


「これは……!?」


 黄色と青、つまりリラの魔力とヒナタの魔力が魔道具に急速に吸われる。

 それと同時にものすごい勢いでお互いの魔力を魔道具が放出していた。

 リラの手から出ていた黄色の光が魔道具を介して青に変化し、リラの手に戻る。

 逆にヒナタの手から出た青の光は黄色になり、ヒナタの手に戻っていった。


「こんな現象は他のどの魔道具でも見られない」

「この魔道具を介して魔力の交換が行われているということでしょうか……?」

「そういうこと!

 つまりこれは言わば、『交換の魔道具』!

 だけど僕の考えが正しければ、これはある条件の元、魔力の交換じゃなく精神の交換が行われる!」


 その考えをもって、アイラにカマをかけたところまんまとギバとリラが入れ替わっていると確信したらしい。

 何かしらの事情があると踏んではいたらしく、このことを知っているのは技術班でもヒナタのみ。

 入れ替わりのことが広まることはなかった。


 そして、今の口ぶりからするともうヒナタはわかっているのではないか、とリラは期待する。

 唾を飲み込み、リラは目を見開いてヒナタに問う。


「……その条件とは?」

「イヒヒ〜」


 不敵に笑うヒナタ。

 これはもう確信がある笑いなのだろうか。

 ヒナタはもう片方の手を頭の後ろに持っていき、自身ありげにリラを見た。


「わっかんな〜い!」


 膝がガクッとなり、アイラがため息をついたのがわかった。

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