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【コミカライズ配信中!】少女⇔傭兵の成り代わり  作者: 久芳 流
3章 涙と誤解の決壊

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第50話 傭兵のフリする貴族の娘、正体がバレる

 扉を思いっきり閉める。

 しばらく待機。

 外からガチャガチャと剣が当たる音と足音が聞こえてきた。


「どこに行った!?」

「こっちに来たのは確実だ!」

「探せ! 何なら第一師団の者にも聞くんだ!」

「どんな手を使っても捕まえろ!」


 そう叫ぶ声が聞こえたが、やがてその音は遠くなった。


「……どうやら行ったみたいですね」

「そのようです……」


 リラの呟きにアイラは同意する。


「…………」

「…………」

「「はぁぁああ……」」


 一気に脱力。扉を背にしてアイラとリラは座り込んだ。


「なんとか助かりましたね、アイラ様」

「えぇ。危うく何もできなくなるところでした」


 アイラはそう言うと、前を見た。


「ヒナタのおかげです」

「へへ〜そうだろそうだろ?」


 落ち着きない動きに合わせて見に纏った白衣が揺れ、黒髪のアホ毛もピョコピョコ動く。


「もっと褒めてくれてもいいんだぜ?」


 笑った時に見えた八重歯がキラッと光った。


「あの……こちらの方は?」

「え〜〜!! ギバ団長、忘れちゃったの!!?? そんな〜! 騎士団なんて辞めたら僕たちのことどうでもいいんだっていうんだ〜! ひっどーい!」


 熊のぬいぐるみを抱きしめて、おいおい、と泣き出す彼女。

 抱きしめる動作でボブの髪の毛がフワッと浮き、それに合わせるように短い黒のスカートも踊る。

 落ち着きがなく激しく動く彼女の動きにリラは慌てて弁明しようとする。


「いや、違うんです……あ、いや、違うんだ。あーその。決して忘れていたわけでは」

「……クク」

「? どうしたんだ?」

「イヒヒヒヒ〜〜! あぁ〜おかしい!」


 必死にギバに成り切ろうとするリラを前にヒナタと呼ばれた女性は少し奇抜に大笑いした。


「ギバ団長の顔でこんな慌てふためくの、初めて見たよ! いっっっっつもムスッてして眉間に皺寄せてるんだから!」


 一体全体どういうことか、とリラは呆気に取られる。

 やがてひとしきり満足したのかヒナタはリラに向かって笑みを浮かべる。


「安心して。僕は()()()()側の人間だから。リラちゃん」

「!?」


 自分の名前を呼ばれて心底驚く。

 まさか知っている人がギバ、リラ、アイラ以外にいるとは思わなかったからだ。

 しかも見る限り騎士団所属じゃなさそうな格好。

 年も自分よりも少し上くらい、十代に見えるではないか。

 騎士団関係者ではなさそうなその人物にリラは警戒心を高めた。


「あぁー……リラ様?」


 ところで、アイラがリラのことを呼んだ。


「すみません。色々あり過ぎて、リラ様にお伝えするのを失念しておりました」

「どういうことでしょう?」

「彼女の名前はヒナタ・スプリング。騎士団技術班の班長です」

「……は、班長様? でも見た限りとてもお若く見えるのですが……」

「いやん。リラちゃんの褒め上手〜!」


 目を丸くしてヒナタのことを見ると、彼女は戯けたようにそう言う。

 その態度がいつものことなのか、アイラは無視して「えぇ」と肯定した。


「確かに彼女は成人をひとつ過ぎた十六歳。ですが人工魔道具開発に関してずば抜けた才能があり、飛び級で騎士団に抜擢された……言わば天才です」

「えへへ〜アイラちゃんも褒め上手なんだから〜」

「ヒナタ、少し黙って」


 疲れたようにアイラはそう言うと、ヒナタは口元に指を持っていき唇に沿ってスライドする。

 お口にチャックして素直に黙るということらしい。


「ヒナタ様の素性は理解できました。

 ですが、なぜわたし達のことを知っていたのですか?」

「正確にはバレてしまったんです」

「え?」

「実はヒナタにはギバさんとリラ様が入れ替わったとされる魔道具の解析をお願いしていたんです」


 それは最初、リラが誘拐された小屋で何者か――おそらく今となってはシュントだが――が投げた魔道具のことだ。

 その魔道具が発動した結果、リラとギバが入れ替わったと推測しているが、魔力を込めても反応を示さなかった。

 だから、使い方やその効果の解析を騎士団技術班の班長であるヒナタにお願いしたようだ。


「もちろん、その時には何も言っていません。

 あくまで現場検証の一環として、特にあの魔道具の調査を、と頼んだに過ぎませんでした。ですが……」


 アイラはヒナタを見る。

 口を閉じてていても、どこか愉快そうなヒナタ。

 アイラはため息を吐くと、


「ブラウン家での最後の日、私が部下に呼び出されたのを覚えていますか?」

「え? えぇ。確かお父様とお話した後、笛で呼び出されたと記憶しています」

「その時にヒナタもいて、魔道具の解析結果の報告と同時に言い当てられてしまいました。

 尤も、すぐに部下が殺されたと話が来て、更にリラ様のお父様の一件もあり、お伝えするのが遅くなってしまいました」


 申し訳ありません、と再度、アイラは頭を下げた。

 リラはそれに対して


「いえいえ。そんな……あの時はわたしも色々とパニックになっていましたから」


と慌てたように手を振った。


「それより魔道具の解析結果が出たのですか?」

「あぁ。それは――」

「ん〜! ん〜〜!」


 アイラが説明しようとしたところで、何かを言いたそうにヒナタは口を閉じたまま叫んだ。

 アイラは諦めたように「どうぞ」と手でジェスチャーすると、


「話して良いんだね! やった〜」


と愉快そうに笑みを浮かべた。


「真面目にやらないとまた口塞いでもらうよ?」

「もう〜。そんなこと言わんといてよ〜……あぁーわかったわかった。真面目にやる! 真面目にやるから」


 アイラの睨みが効いたのか、ヒナタは側にあった机の引き出しからある物を取り出した。

 件の魔道具だった。



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