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【コミカライズ配信中!】少女⇔傭兵の成り代わり  作者: 久芳 流
3章 涙と誤解の決壊

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第45話 第一師団長、元同僚について考える

 その翌日。騎士団はグレイ家に赴き、死体の回収と現場検証を行った。

 回収があの映像の翌日になってしまったのは理由がある。


 シュントは言っていた。

 『ハレー』と呼んだ魔道具が『毒の魔道具』の一種だと。

 もし本当なら、グレイ家一帯が汚染されている可能性がある。

 回収に向かった者たちが毒に侵され、映像のようになってしまってはダメだ。


 そのため、騎士団は『浄化の魔道具』を持ち寄り、まずグレイ家全体を浄化することにした。

 ただ、その魔道具は人工性。

 天然のものよりも威力はなく、大量に持ち込んでも全てを浄化し終わるまでにまる一日掛かってしまった。


 アイラ達はトリノの遺体を見届けた後、被害にあいボロボロになった屋敷を見て回り、憂鬱な気分でギバの家へ戻った。


 件の魔道具はもう屋敷の中にはなかった。


★★★


「リラ様……ご気分は……?」

「えぇ。少しは良くなりました」


 トリノの遺体を見た後、ずっと真っ青にさせていたリラの顔は、椅子に座って少し休んだおかげか、大分ましになっていた。

 完全には良くなっていないし、おそらくあの悲惨な死骸をふとした時に思い出すことだろう。


(トラウマにならなければ良いが……)


 アイラはそうリラを心配した。


 沈黙が流れる。

 リラは窓から見える空を眺めて心を落ち着かせていた。

 皮肉にも今日は雲一つもない晴天。

 悲劇的な出来事があっても自然は空気を読むことはない。


 シュントによる演説があってから、王都はどこかどんよりとした空気が流れてしまっている。

 当然だ。

 あんな映像を見せられて、まともな奴なんていない。

 そればかりか()()を王都で発動させるというではないか。

 それに絶望して発狂している人もいたし、王都から脱出するため朝からバタバタと荷造りしている人もいた。

「説明責任を果たせ!」と騎士団や、はたまた王城にも行っている者もいると耳にした。


 ちなみに『蘇生の魔道具』については元老院で大々的に否認した。


「あれはシュント・リガイの妄言であり、元老院で『蘇生の魔道具』を所持している事実はない!」


 朝からこのような演説を昨日のシュントと同じような手順で放映していた。

 こういう時だけ仕事が早いんだから、とアイラが呆れたのは言うでもない。


 ただ、もし元老院が言うことが本当ならかなり絶望的だ。

 元老院も必死になったのか、騎士団や近衛隊に命じ総出でバナナ盗賊団の行方を捜索し始めた。

 ただこの数日見つからなかった相手だ。十日のうちに見つかるかは正直難しい。

 シュントの要求が通らず、バナナ盗賊団も見つからないとなると、王都が破滅するのは時間の問題だ。


 とはいえ、


(まさかあのシュントがあんなことをするなんて……)


 アイラは騎士団時代のシュントを思い出す。

 気持ちがいいくらい爽やかで朗らか。

 犬を連想してしまうくらい人懐っこくて、特にギバに懐いていた。

 その縁もあって、ギバの幼馴染であるエリーと婚約した。

 

 あの頃はよかった。

 ギバは団長として、自分は副団長として、騎士団自体の体制を改革していた。

 風通しがよく、助けられる人をちゃんと助ける騎士団になろうと頑張っていた。

 その甲斐あってか、騎士団は活気溢れていたし、自警団との仲も良好。

 シュントとエリーも本当に幸せそうだった。


 だが、あの六年前の事件以来、騎士団は変わってしまった。

 雰囲気は最悪。自警団とも険悪なムードでよく王都内で喧嘩している。

 今の騎士団長や副団長は元老院議員の息のかかった誰かの息子だ。

 もはや騎士団は元老院の傀儡と言っても差し支えない。

 

 アイラの師団・騎士団第一師団は辛うじてまだあの頃の騎士団としての矜持を保とうとしている。

 アイラを信用している部下がそのまま第一師団に行ったので、当然と言えば当然だ。

 そのせいで若干、今の騎士団からは浮いた存在となっていた。


(いや、過去のことをあれこれ考えても仕方ない……!)


 アイラはブンブンと首を横に振った。

 今は目の前の事件に集中すべきだ。


 そこでふと事件について考えようとして、ある点が気になった。

 アイラはリラに声を掛けた。


「リラ様、ひとつ聞いてもよろしいでしょうか?」

「……なんでしょうか?」


 その声にリラは空を眺めるのを止めて、アイラの方を向いた。

 気持ちが落ち着いたのか、その顔はもういつもの状態に戻っていた。


「その……リラ様はシュントとお会いしたことがあるんですか?」

「? えぇ。わたしの部屋で近衛隊の格好をしているのを見たと……言いませんでしたっけ?」

「あ、いえ、すみません。言葉が足りませんでした……あぁー、つまりバナナ盗賊団として、です」

「はぁ……」

「バナナ盗賊団のリーダーとして、シュントにお会いしたことはありますか?」

「あぁ……そういうことですか……」


 首を傾げて、それも知らなかったっけ、と怪訝な顔をするリラ。

 だが、やがて何かを思い出したように目を丸くさせ、


「あぁ! そうでした! そうでしたね!」


と手を合わせた。


「アイラ様には言っていませんでしたね……」


 それからアイラはギバにバレてしまったリラの話を全て聞くことになった。


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