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【コミカライズ配信中!】少女⇔傭兵の成り代わり  作者: 久芳 流
3章 涙と誤解の決壊

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第44話 黒髪の青年はデモンストレーションを盛大に行う

 シュントが顔を見せた時、アイラはもちろん、リラも驚いていた。


「あ、あの方! わたしの部屋で見た方です!」

(……やっぱり!)


 リラが見たという近衛隊の服を着た男に酷似していた。

 アイラも左目の特徴をリラから聞いていたから、やはり、という気持ちの方が大きい。

 だけど、この映像から判断するに、シュントは本当は近衛隊ではなかった。

 ブラウン家に侵入したのは、バナナ盗賊団のリーダーだった。


 後に聞いた話だと、元老院が近衛隊を向かわせたのは本当だった。

 その向かった近衛隊の男はブラウン邸の近くの森で裸にされ殺されていた。


 つまり、フォードを殺し屋敷を爆破した最有力候補。

 当然、隣にいるリラの動揺は激しい。

 顔を真っ青にして、口を震えた手で押さえ、「まさか……なんで……」と呟いていた。


「お、ようやく準備が出来たみたいだ」


 そんな彼がそう呟いて、映像の中で見せたのは、拳サイズくらいある岩だった。

 彼は言う。


「これは数日前に手に入れた天然の魔道具です」


 天然の魔道具は石や岩に似ている。

 出回っているのは、基本加工され綺麗な形に整えられるのだが、これはゴツゴツとした歪な形。

 まだ加工もされていない原石の状態。

 採掘されたばかりのものだとよくわかる。

 加工されていないからと言って威力がないわけではないが、どんな効果があるのかは判断できない。


「これを使って、デモンストレーションをしよう。まずはこの映像を見てください」


 映像はグレイ家の屋敷の前に切り替わった。

 今はもうない、美しい装飾で施された綺麗な屋敷。

 金遣いが荒くなった時に造ったのか、自分の銅像が門と家の間に立っていた。


「どこの家かわかりますか? そう。トリノ・グレイの屋敷さ」


 また切り替わった。

 シュントの隣にはいつの間にか、縛られた男の姿があった。

 その男の肩をシュントは掴む。


「彼は自分の領地の民を誘拐し、奴隷商人に売っていた。そればかりか、その金を元老院達に渡し、自分の罪をもみ消していたんだ!」

「ん〜!! ん〜〜〜ッ!!!!」


 猿ぐつわをされたトリノ・グレイは必死に抵抗するかのように叫び声を上げていた。


「そんな彼には凄惨なる死がお似合いだ」


 そう言うと、シュントは彼の足の間に魔道具を置いた。


「ん〜〜!! ん〜〜!」


 その魔道具が何なのかわからないが、トリノは恐怖に顔を歪め、その魔道具から出来るだけ離れようと身体が仰け反っていた。

 しかし、椅子に縛られているから大して逃れられない。


 魔道具が少しずつ紅く発光していく。

 トリノをニヤニヤと眺めていたシュントの仲間たちもその発光を見るや否やここを立ち去った。

 もちろんギバも椅子ごと持ち去られた。


 残ったのは、シュントとトリノだけ。


「この魔道具は通称『ハレー』という」


 魔道具が発動しようとしている中、シュントだけがその場で演説する。


「聞いたことはないかい? 所謂『毒の魔道具』の一種だ。

 知らなければ別に良い。これからわかるのだから」


 僕も離れた方が良さそうだね、とシュントは魔道具の様子を確認した後、映像から消えた。

 映し出されているのは、トリノ・グレイただ一人となった。


 魔道具の光が強くなる中、トリノは必死に抵抗する。

 椅子をガタガタとさせ、身を捩り、時には大きく呻き声を上げる。

 だが、意味をなさない。

 彼の抵抗も虚しく、一歩も逃れられず。


 ――魔道具は無慈悲に発動した。


 部屋の中なのに突風が起きたように、壁の装飾は外れ、外側に出ていき、屋敷の柱もバキバキと悲鳴を上げた。

 ゴオォォォという音がどこからか聞こえ、それに連動するようにトリノの服もバサバサと靡いていた。


 やがて音は小さくなっていく。

 映像の魔道具にはおそらく誰も触れていない。

 なのに音量を絞ったかのように映像から音は消え、トリノの叫びも全く聞こえなくなった。


 その瞬間、トリノが苦しそうな顔をする。

 必死の抵抗も甲斐あってか、猿ぐつわが外れるが、パクパクと口を上下するだけ。

 顔がどんどん紫に変色していき、少しずつ身体が膨らんでいく。

 その後、内側から脱出するかのように血が節々から噴出し、出た血は蒸発する。

 口もカサカサとしていき、目も飛び出るかのようにギョロとさせていた。


 やがて、トリノは力無く首を傾げ――。


「……ッ!」

「リラ様……!」


 その映像の様子にリラは思わず顔を背け身を屈めた。

 それにいち早く気付き、アイラは抱き締めるように両肩を掴んだ。


 外からの映像に切り替わった。

 屋敷は外向きに膨らみ、その形状変化に耐えきれなかったのか、所々に梁がへし折られていた。

 そして、竜巻が起こったかのように、屋敷の外側は物が回りながら、上空へ飛ばされていたのだろう。

 屋根の破片やトリノの銅像が次々と落下していった。


 そんな映像を前にシュントが立った。


「ご覧にいただけました? これが『ハレー』の威力です」


 王都全体が静まり返っていた。

 当然だろう。あんな悲惨な映像を観てしまったんだ。

 誰もがショックで口を開けなかった。


 シュントは続ける。


「十日後。王都でこの『ハレー』を発動する」

「――!!」


 その発言に王都中が騒つく。


「今のグレイ家の比じゃない。大規模な被害を出すつもりだ」


 グレイ家を襲ったあの威力は最大ではなかったということ。

 王都一帯を壊滅させるほどの威力があることを示唆していた。


「それが嫌なら、来たる日までに元老院はこれまでの過ちを認め、王都民に謝罪し、『蘇生の魔道具』を手放せ」

(無理がある……!)


 アイラはそう直感した。

 あの利権大好きな元老院だ。

 絶対に罪を認めないし、魔道具のことだって知らんぷりするに違いない。

 だけれど、シュントはそのことまで予想しているのか、


「僕は証拠も持っている」


と何かしらの紙の束をちらつかせる。

 シュントは本気で元老院を、そしてそれができなければ王都を蔑める気なんだ。


「良い返事を期待しているよ」


 そう言い残して、シュントは映像を切った。

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