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【コミカライズ配信中!】少女⇔傭兵の成り代わり  作者: 久芳 流
3章 涙と誤解の決壊

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第39話 第一師団長、円卓会議に出席する

 元老院とは、アイラ達が住んでいる国における政治の最高機関である。

 最終決定権は王にあるとはいえ、この国の政策や方針の大まかを決めるのはこの機関だ。

 十人の上級貴族で構成され、そのほとんどが各界に多大な影響を及ぼしていた人物達だ。

 その者たちの決定は、ほぼ絶対。

 元老院の下にある騎士団は、もちろん、逆らうなんてことは許されない。


 そして、今。


「リラ様が所有していた発信の魔道具は捨てられ、追跡していた騎士も殺されました。またブラウン卿も――」


 円卓に十の座席が並べられた会議室――通称円卓。


 そこでアイラは彼らの前で跪き、リラの誘拐から始まった一連の事件について説明をしていた。

 近衛隊が事件を追うにあたり、アイラ達騎士団第一師団がどういう動きをしていたのか知りたかったようだった。


(勝手に事件を奪っておいて)


と思いながらも、騎士団の上に位置する元老院には逆らえない。

 アイラは不満を内に隠しながらも、全てを説明した。

 もちろん、リラとギバが入れ替わっていることは隠して。


「――説明は以上です」


 薄暗くやけに声が響く広い部屋の中、元老院議員達はその席に座り、黙ってアイラの説明を聞いた。


「なるほど。ブラウンは死んだか」


 説明を聞き終えたあと、議員の一人がゆっくりと口を開いた。


「王都郊外を統治していた奴が死んだとなれば、郊外の管理は難しくなるな」

「あそこで納めた作物の確保も容易ではなくなる。貴族に優先的に仕入れさせていたが、それもしばらく滞るだろうな」

「長くやっていた道の整備計画もストップだ」

「成り上がりの下級貴族風情だが、意外と役に立っていたのだな」


 議員達は口々に話すのアイラは黙って聞く。


(フォード様の弔いもなしか……)


 議員達が話すのはフォードがいなくなったこれからのこと。

 フォードが死んだのを少しも悲しんでいる様子もない。

 自分の利益しか考えていない議員達に、アイラはギュッと拳を握りしめた。


「さて」


 ひとしきり、これからのことを話した後、議員の一人がそう声をかけ、全員が一斉にアイラを見た。


「今後のことについて話そう」

「はっ……」

「リラ・ブラウン誘拐事件は近衛隊が引き継ぐことにする」

「……存じております」

「む? そうか」


 釈然としない議員の反応にアイラは少し疑問を感じるが、そんなことよりも聞くことが山ほどある。

 まずは、


「ただ、理由をお聞かせいただけますか?」


 フォードからも確かに聞いた。――不本意な内容だったが。

 そうでなくても近衛隊が出てくるのは不自然だ。

 元老院側から何か動きがないと、そんなことはしないはずだ。

 そう考えて、近衛隊が出る意図を聞くが、


「知る必要はないな」


 一蹴される。


「しかし……」

「君が知る必要はない。事情が変わったんだ。従ってもらう」


 食い下がろうとしたが、元老院は聞く耳を持たない。

 諦めて次の質問を。


「では、リラ様の居場所は既に把握しておられるのですか?」

「ふん。それも近衛隊が今、探している。心配しなくてもいい」

「……ではバナナ盗賊団のアジトも――」

「君は」


 低く冷たい声にアイラの発言は止まる。最高議長の声だ。

 バッと見上げると、議員達も鬱陶しそうに顔を顰めていた。


「少し発言に気をつけた方がいい。

 今、君の目の前にいるのは我が国における最高機関の議員。

 我々の発言ひとつで君の――そして君が頼りにしている人物の処遇も変わるんだぞ?」

「失礼しました」

「わかれば良い」


(……クソじじぃ共……)


 つまりこれ以上詮索するなら自分やギバに対して何らかの処分を下す。

 最高議長の話し振りは、非常にわかりやすい脅しだ。

 アイラ自身はまだしもギバはまずい。

 元老院からするとギバは目の前にいるハエのごとく鬱陶しい存在だ。


 チャンスがあればギバを王都――できれば国から追い出したいと思っている。

 更に悪いことに今はギバの身体にはリラが入ってしまっている。

 ギバ自身なら元老院から処分を下されても対処することは可能だが、ただでさえ弱っているリラではおそらく何もできない。


「話は以上だ」


 最高議長がそう言う。もう話を切り上げたいのだろう。

 何か隠していることはわかるが、


(悔しいけど、ここは引き下がるしかない)


 これ以上は危険だ。アイラは下唇を噛み締める。


「ハッ!」


 アイラは元老院議員の言う通りにし、立ち上がる。


(あ……)


 しかし、思いついた。


「最後にひとつだけよろしいでしょうか?」

(これだけ聞いても問題ないだろう)


 議員達の顔が曇る。


「何だ?」


 だが、一応は聞いてくれるらしい。アイラを早々と帰すにはその質問を受けた方が早いと判断したのだろう。

 アイラは「ご厚意感謝いたします」と礼を述べると、


「シュント・リガイは復帰し近衛隊に入隊されたのですか?」


 左目に怪我を負った青年の話をリラから聞いて思いついた人物。

 かつてギバの部下だった人間であり、ギバが辞めた原因となったあの事件で婚約者を失い左目を失った。


 事件から療養していると話には聞いてはいたが、復帰した話は知らない。

 近衛隊に入隊したのなら納得する。

 その情報が騎士団に降りてくることはないから。


 そして入隊しているなら元老院は何かしら知っているはずだ、と考え尋ねてみたが、


「ん?」


 最高議長以下議員達は皆、意外そうな顔をしていた。

 そんな質問をされるとは思ってもみなかったのか。


「誰だそれは?」

「そんな名前の奴は知らんな」


 いや、単に誰かわからなかっただけか?

 近衛隊は元老院直轄部隊だから名前を聞けばわかると思ったが。


「……左目に義眼を――」

「知らないと言っている」


 アイラはそう補足するとして、元老院は聞く耳持たず否定する。

 その拒否にアイラはバレないように歯を食い締め、


「……ブラウン卿の屋敷に行かせた男だと――」

「くどい!」


 議員の誰かがそう一蹴して睨んできた。


「質問は以上か」

「もう何も聞くことはないな」

「ならばここには用がないな」

「円卓から出ていかないか」


 議員達はアイラを追い出したいのだろう。

 急いで切り上げようとしているのが、丸わかりだ。


(これ以上は無理だな)


 アイラは元老院議員達に深くお辞儀をすると、


「失礼します」


と言い、円卓を出た。

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