第38話 第一師団長、混乱しつつも考える
「お疲れ様です」
外に出ると、ギバの家の前に立っていた自分の部下がそう静かに声をかけた。
あの事件以来、何があってもおかしくないとリラの護衛と見張りを頼んでおいたのだ。
「あとよろしく」
そう声をかけて、アイラは真っ直ぐ自分の馬がいるところまで歩きながら考える。
リラの誘拐事件から始まった今回の事件。
バナナ盗賊団を捕まえれば解決だ、と考えていたが解決する前に謎が深まる。
フォードが殺されたのもそうだし、リラから聞いたギバを誘拐したギバの知り合いっぽい男の正体もわからない。
フォードから依頼を中止されたのもそうだ。
そして、近衛隊まで出てくる始末。
わからないことだらけで、頭が混乱しそうだ。
糸口になりそうなのは、リラが会ったという近衛隊の男。
だけれど、その男の特徴もパッとはしない。
リラが言う『左目の違和感』から考えるしかない。
リラは確か言っていた。
『見ているのに見ていない』と。
これはいったいどういうことだ?
馬にたどり着いて、胴体を無意識に撫でる。
愛馬は気持ちよさそうにアイラの手を受け入れる。
左目が見えていないということだろうか。
見ているようで、ということは義眼の可能性もある。
つまり、左目を怪我した人物?
近衛隊にそんな人がいたか。いや、そもそも近衛隊は元老院の直轄部隊。
それも騎士団とは独立した組織で、こちらに情報が降りてこない。近衛隊のメンバーなんてわかるはずもない……が。
とりあえず連想させてみる。
思い当たる人物といえば、誰だったか。
元老院にはそんな人いなかった。近衛隊にそんな人物がいるなんて噂もない……いや、知るはずもないんだが。
じゃあ騎士団だったらどうだろう?
今在籍している団員で目を怪我した者……いや、そんなのいっぱいいる。
魔獣退治や盗賊団、窃盗団、はたまたテロの時とか頻繁にある。
まぁでも団員のほとんどは強面だ。
そういえば、ギバが団長の時の、ギバが辞めなければいけないきっかけになった王都のあの事件の時も、誰か怪我していた――――。
そこでアイラは目を見開いた。
「……シュント……?」
あの時のことがフラッシュバックした。
倒れた女性、立ち尽くすギバ、そして泣き叫ぶ黒髪の青年。
(もしかして……いや、そんなまさか!)
「アイラ師団長!」
そこで思考が打ち切られる。
アイラの部下が馬に乗ってこっちに向かってきたのだ。
少し緊張している面持ちだ。何かあったのだろうか?
「……? どうした?」
「元老院がお呼びです」
「!!」
いったい元老院がなぜ?
いや、ちょうどいい。
「わかった」
アイラは馬に飛び乗り、手綱を思い切り揺らす。
馬は雄叫びを上げ、そのままトップスピードで道を駆けた。
こっちも聞かなければいけないことがたくさんある。




