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【コミカライズ配信中!】少女⇔傭兵の成り代わり  作者: 久芳 流
2章 星と魔道具の研究

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第35話 傭兵のフリする貴族の娘、作戦が失敗したことを知る

 父親の本心がわかった。自分も望んでいいことがわかった。

 身体が戻った時に改めて両親に言おう。自分が本当は何をしたいのか。


 母親は許してくれるだろうか?


 その時はその時だ。ギバの言う通りちゃんと話そう。自分の未来のために。


 父親と話したことで、勇気を得たリラはそう考えながら、自分の部屋の扉を開けた。


「あ……」

「ん?」


 部屋の中には一人の青年が中にある本を立ち読みしていた。

 黒髪でスラっとした長身。20代だろうか? かなり若く見える。


(見張りの騎士でしょうか?)


 鎧は着ておらずスーツをビシッと決めているけど。

 リラがそう思うのは、騎士用の剣を腰に差していたからだ。

 リラは会釈すると、


「あぁ。ごめんごめん」


と読んでいた本を閉じ、元の場所に戻した。


「ちょっと迷ってしまって……」


 そう言って愛想笑いをする青年。


「応接室はどこかご存じかな?」


 ギバのような中年――それも強面の――男を前にして彼はフランクに語り掛ける。

 だが、リラは気にせず答える。


「えっと……この部屋を出て左を真っ直ぐ行けば着きます」

「あぁ! そうかそうか! そっちだったか~」


 青年はそうやって納得したように頭を掻く。

 そしてリラの方、つまり部屋の扉の方へ向かって歩く。

 リラは出ようとする青年のため、少し脇へ避けたところで


(あれ?)


とリラを見ているはずの青年の左目に違和感を覚える。

 だけど、その答えに行き着く前に青年は扉の前までもう来ていた。

 そして、リラの頭にポンと手を置くと


「ありがとうね~」


 そのまま出ていってしまった。


(……いったいなんだったんだろう?)


 リラは触られた頭を確かめるように触り、けれど、あまり気にせず部屋の中に入る。


(さっきの人は何を読んでいたんでしょう?)


 本好きの性分故か、自分の本を読まれると何を読んでいたか気になってしまう。

 彼のいた位置とどこの段に本を置いたのかは覚えている。

 その位置を探してみると、すぐにわかった。


(魔道具の論文集……?)


 それはギバと入れ替わってここに来た最初の夜。

 自分の説をギバに教えるため見せた本だった。


(騎士様が何故これを? もしかしてあの騎士様も魔道具に興味があったんでしょうか!?)


 ついそんなことを考えて、目を輝かせる。

 そして、自分もその本を取り出して、開く。


 どこを読んでいたのか。その部分がわかれば魔道具のどこに興味があるのか。

 自分と同じ分野かそれとも違う分野か。

 好きを語る人がいなかったリラにとっては、やはり仲間が欲しいのだ。


「あれ?」


 そう考えてパラパラと捲っていて、あることに気が付いた。


「表がありません……」


 リラが作った、大晦日魔道具が発見された場所を時間順にまとめた手書きの表。

 この本に挟んでいたはずだが、と本を一通り捲ってみるがない。

 どこかで落としてしまったのか、と本棚や床を見るがない。


「…………いったいどこに?」

「リラ様!!」


 突然扉が開く音とアイラの叫ぶ声が聞こえた。


★★★


「リラ様!!」

「ア、アイラ様!?」

「……あぁ。よかった。ご無事でしたか……」


 アイラは安堵したように息を吐くと、扉をゆっくりと閉める。


「どうされたのですか?」


 リラは持っていた本を閉じて、元の場所に戻すとアイラにそう聞く。

 するとアイラは真剣な表情でこう言った。


「バナナ盗賊団を追跡していた騎士二名が殺されました」

「!!」

「そして、ギバさんが持っていた発信の魔道具も捨てられていたことがわかりました」

「そ、そんな!?」


 それは作戦失敗の報告だった。

 緊急の招集というのは、この報告のためだったらしい。

 受信の魔道具で確認した時、光は移動せず止まっていた。

 その時アジトに着いたからだと思っていたが、実際は違った。


 ギバが持っていた発信の魔道具は森の中に捨てられ、そしてその周辺には血の海が広がっていた。

 血の出所は当然、追跡した騎士二人。

 彼らはお互いを切り合うようにして倒れていた。


「バナナ盗賊団は魔道具を専門に盗む盗賊団です。殺しをしたという報告は今までありませんでした。

 まさか騎士を殺すなんて……」


 アイラは困惑していた。

 そして、騎士が殺されたということは、リラももしかしたら……と考え、急いで戻ってきたようだった。


「ご無事でよかったです。リラ様に万が一のことがあったらと考えるだけでも恐ろしかったです」

「え……えぇ……わたしは何もありませんでした」


とアイラの心配を解消するようにリラはそう報告する。

 けれど、思い出した。


「あ、そういえば、ここに騎士様? のような方が来ていました。

 そのお方もいましたので、何かあっても大丈夫でしたよ」

「…………『騎士様のような人』?」


 アイラの表情が固まる。その表情に驚きつつも、説明する。


「え、えぇ。騎士の剣を携えていたのでそうかな、と」

「……おかしいですね。私の部下は、殺された二人以外、全員緊急招集されていました。

 ここに騎士がいるはずないと思うんですが」

「そうなのですか? 確かにアイラ様のように鎧は装備していませんでしたね。

 身なりの良いスーツを着て、黒髪の……若い方だったと思います」

「!! それは本当ですか?」


 リラの説明にアイラは目を見開く。


「あ、はい。間違いないです。さっきまでいたので、記憶に新しいです」


 そのアイラの表情にリラは戸惑いつつ答えると、アイラは更に困惑したように眉を顰める。


「リラ様。それは確かに騎士は騎士なんですが、元老院直属の部隊、所謂『近衛隊』の者です」

「え? そうなのですね。

 確かにアイラ様の部隊っぽくない身なりをしているな、と考えていましたが」


 アイラの部隊とは違ったとはいえ、同じ騎士だとわかり、リラはほっと安心した。

 一方、アイラは首を傾げ「でも近衛隊が何故?」と考えているようだった。

 だが、すぐに何かを思い出したように


「いえ、それよりもリラ様」


とリラを呼ぶ。


「お伝えしなきゃいけないことが――」


 ――コンコン


 その矢先、扉をノックする音が聞こえた。


「アイラ殿、ギバ殿。居るか?」


 フォードの声だった。

 アイラとリラは互いの目を見合わせるが、やがてアイラが声を張り上げる。


「はい。います!」


 そして、開けようと扉に近づこうとするも、あちらから扉を開いた。

 部屋に入ってきたフォードは真剣な顔だった。

 アイラとリラは背筋を伸ばす。


「どうされましたか?」


 アイラがそう聞くと、フォードは言った。


「リラを取り返すという依頼、なかったことにしてもらいたい」

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