表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ配信中!】少女⇔傭兵の成り代わり  作者: 久芳 流
2章 星と魔道具の研究

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/93

第30話 傭兵のフリする貴族の娘、怒りに任せる

「くだらないな」

「!? 何と言いましたか?」


 心外な言葉にリラはギバを鋭く睨む。だが、ギバは冷たい表情でリラを見ていた。


「くだらないと言ったんだ」

「く……!? どういうことですか? わたしは自由になってはいけないということですか!?

 理想の娘を演じ続けろと? わたしがわたしであるために抵抗することをどうしてくだらないと言えるんですか!?」


 怒りのまま、リラはギバに怒鳴りつける。だが、ギバはそれでも冷たい表情でリラを見ていた。


「そういうことではない」

「ではどういう?」

「自分の未来を他人に委ねているのをくだらないと言ったんだ」

「!!」

「君は自由になりたいと言ったな。そのことを少しでも両親に話したことはあるか? 話したとして少し否定されたからと黙ってしまったんじゃないか?

 自分の将来を決めつけて、抵抗しようとすら今まで思わなかったんじゃないか?」


 ギバの一言一言に心臓が高鳴る。彼の言っていることが全て図星だったからだ。


「……どうしてわかるんですか?」

「これでも年だけは食っているからな。君みたいな者も何人か見ている」


 ギバは本当に何人も見てきたのだろう。

 騎士団の先輩、後輩、騎士団長時代の部下、傭兵になった時に出会った人々。

 ……そしてギバ自身も。


 アイラから聞いた話が甦る。

 元老院の命令を無視できなかったという騎士団長時代の話。

 もっと元老院の顔色を伺わずに行動していたら。

 アイラを降格させずに、シュントの左目が失わずに、エリーを死なせずに済んだかもしれない。

 そう後悔しているに違いない。


「そのことを全否定はしない。出来ない奴もいるからな」


 言っているのはおそらくギバ自身のことだ。


「ただ、本気で現状を変えたいと願うなら、もっと自分から行動するべきだ。少なくとも犯罪者に任せて良い結果にはならない」

「そんな正論……簡単に言いますけど、ギバさんに何がわかると言うんですか!?」

「わかる」

「!!」

「わかっている」


 怖い表情をしていた。だが、すぐに違うとわかった。

 眉間に皺が寄っているのはいつものことだ。

 しかし、睨んだ目は歪み、目には涙が滲んでいた。

 その表情にリラは息を呑んだ。


 だけど、売り言葉に買い言葉。

 一度ヒートアップしてしまった心をもう簡単には止めることはできなかった。


「だ……」


 リラはギリっと歯を食い締めると、


「だったら! どうして、エリー様を助けてあげなかったんですか!?」

「――――ッ!」


 ギバは目を見開いた。

 リラから到底出てくるとは思わなかったのだろう。

 ギバは一度下を向いて、もう一度リラを見た。


「そうか……」

(しまった)


 その何かを諦めたような表情を見て、リラは言ってしまったのを後悔した。


「悪かったな」

「で、ではわたしはこれで」


 言うつもりはなかった。本当に。

 だけど、言ってしまったのをもう戻すことはできない。

 ギバとの会話をすぐに打ち切り、逃げるように護衛用の部屋へ向かおうとする。


「最後にひとつだけいいか?」


 だがギバに呼び止められた。


「なんでしょう?」

「君の両親は本当に二人とも理想の娘しか見ていないのか?」

「……何回も言っているじゃないですか」


 同じような質問をするギバに、気まずそうにリラは答えた。

 だが、ギバは気にも留めず続ける。


「一度、聞いてみると良い。母親はともかく、父親は少し違った見方をしている」


 さっき話してたのを聞いていなかったのか?

 何を意味のわからないことを。

 リラは返事をせず護衛用の部屋へ向かい身を潜めた。


★★★


 ――カチャ

 少しして、リラの部屋の扉が開く音が聞こえてきた。


「迎えに来ましたよ。――――」


 護衛用の部屋越しに聞こえてきたその声はくぐもっていて、男ということはわかるが誰だかわからない。

 盗賊団の誰かだろうか?

 それなら、ギバは囮として連れられる手筈。

 一応、勘付かれないようにリラとして「来ないで」と抵抗することになっている。

 しかし、


「――くん……!?」


 ギバの演技は完全に解けていた。

 誰かの名前を叫んだその声は驚きに満ち、悲哀や歓喜の感情も入り混じっていた。


「何故……君が?」


 複雑な感情が交差しているのが、ドア越しからでも伝わった。


(ギバ様のお知り合い?)


 そうであるならば、その男は作戦の支障になる。遠ざけなければ。

 とドアノブに手を掛けると、


「――――」


 入ってきた男が何か話しかけているのが聞こえた。


「――――」

「――――!」

(よく聞こえない……)


 扉に耳を近づけても、会話していることはわかるが、内容までは聞き取れない。


「わかった」


 やがて、ギバがそう言うのが聞こえてくると、


 ――パリン!


 窓ガラスが割れる音。

 それからダッという地面を蹴る音が聞こえると、その後は何も聞こえなくなった。


(ギバ様に何かトラブルがあったのでしょうか?)


 それならば作戦が頓挫してしまう。

 リラは意を決して、護衛用の扉を勢いよく開けた。


「……ギバ様!?」


 しかし部屋の中は誰も居ず、カーテンがヒラヒラと揺れているだけだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ