第25話 第一師団長、傭兵のフリする貴族の娘に傭兵の過去を話す(中編)
「尤もその事件で今のような最悪に陥ってしまったんですけどね」
騎士団と自警団の関係。
今ではかなり仲が悪い。
そのきっかけが六年前の事件にあったなんて当事者以外誰も思うまい。
「一体何があったのですか?」
リラは眉間に皺を寄せてそう聞くので、「ギバさんみたいになってますよ」とアイラは指摘する。
リラは思わず眉間に指をやる。
「端的に言うと、誘拐事件の話をギバさんが自警団に依頼しろ、と指示したんですけど、それが自警団に届いていなかったんですよ」
「……え?」
「考えてみれば、その当時はまだ仲が回復したての頃。自警団を認めている騎士の方が少ない状態でした。
確かにギバさんは指示しました。ですけど、自警団をよく思っていない騎士がその指示を止めていたんです」
「そんな! 明らかにおかしいじゃないですか。騎士団が動けないなら別の組織に動いてもらうしかない。それなのに依頼をしないなんて……」
「けれど、それが当時の状況でした」
リラは絶句していた。
「結局、依頼は出されず、自警団が事件を知ったのは全てが終わった後。
それに憤慨した自警団は騎士団を糾弾。騎士団の中の自警団をよく思っていない派閥が反発し、今のような状態になってしまいました」
「そんな……」
この時のことを思うと、少し胃が重くなる。
ギバから自警団に依頼せよ、という指示を直接受けたのはアイラだったからだ。
そして、アイラは自分の部下にその依頼を託した。
言い訳にもならないが、その当時は騎士団内外で多忙を極めていたからだ。
部下を使わないと仕事が回らなかった。
だが、その部下も自分の後輩に、更にはその後輩も同僚に、とリレーするように伝わっていき、最終的に自警団嫌悪派に止められた。
アイラもそのことを後悔している人のひとりだ。
だから今回は、直接ギバのところに赴き依頼した。
「話を戻しましょうか」
辛い思い出だ。それからエリーやシュント、ギバはどうなったのか、を話すとしよう。
「自警団にも依頼が届かず、騎士団も動けない。
この状況で最初に動いたのはシュントでした」
「…………」
「ギバさんももちろん止めましたが、その静止も効かず一人で飛び出していきました」
その時言った台詞は今でも覚えている。
『元老院の老害どもにご機嫌を伺っている腐った騎士団にはもう頼らない』
とても的確で、シュントの怒りが伝わる。
そして、エリーを探すためにあらゆる手段を――犯罪まがいなこともしていた、と当時を思い返す。
「……その時、ギバ様は?」
「もちろん黙って見ているはずがありません。騎士団が捜査できるようにあらゆる方法を考え、元老院に説得を試みました」
「説得できたのですか?」
固唾を呑んで、リラはアイラの話を真剣に聞いていた。
「結局はホワイト家の秘宝を使いました」
「ホワイト家の秘宝というと……まさか!?」
何かを察したリラ。目を大きく広げると、アイラは頷く。
「そのまさかです。
ホワイト家が所有する魔道具『蘇生の魔道具』。
それをエリーが所有しているという情報を説得の材料に用いました」




