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【コミカライズ配信中!】少女⇔傭兵の成り代わり  作者: 久芳 流
2章 星と魔道具の研究

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第21話 傭兵のフリする貴族の娘、貴族になった傭兵に身体の使い方を教わる

「もし意図的に魔力を体内に吸収させることができれば……」

「そうだ。身体能力は上がり、いつも以上のパフォーマンスを発揮させることができる」


 その最もわかりやすいものが力の増強。

 魔力を使い普段よりも力が上がることで、重いものを簡単に持ち上げることが可能となる。


 それがギバの言うコツ。


 言われてみれば単純なこと。

 だが魔力が身体に使えることは教わったことはなかった。

 目から鱗の技術だ。


「実際に試してみろ」

「え? でも」

「安心しろ。今は私の身体だ。おそらく意識するだけで身体が勝手にやってくれる」


 戸惑うリラにギバはそう言う。


「まずはそうだな。目を閉じて体内にある魔力を感じてみろ」


 半信半疑ではあるが、素直に目を閉じる。

 腹の上辺りに意識を集中させろ、と言われ素直に魔力を探る。


「あ!」


 すぐにわかり、思わず声を上げて目を開けてしまった。


 鳩尾あたりに熱いような冷たいような、気持ち良いような気持ち悪いような奇妙なものが脈打つ感覚。

 普段は魔道具を使う時に放出する感覚しか意識してこなかったから、こうやって体内にある魔力を感じるのはどこか不思議だ。


「集中しろ」


 厳しくそう言うギバの言葉で慌てて目を閉じる。


「その魔力を少しずつ広げてみろ。身体に染み込ませるイメージだ」


 言われた通りにゆっくりと全身に魔力を巡らせていく。

 今入っている身体がギバのだからか、かなりスムーズだ。

 魔力の浸透に合わせて、血流も徐々に速くなり、筋肉も活性化されていくのがわかる。


「指先や足先まで魔力を充満させるんだ。ただし極力、外には出すな」


 言われた通りに魔力を身体の先の先まで行き渡らせる。

 するとある時を境に身体が熱くなる。

 何かに包まれているようだが何かが内側から押してくるような一見矛盾する感覚に、成功したのだと確信した。

 ギバもそのことに気がついているようで、


「そのままの状態で私の大剣を持ってみろ」


と冷静に壁に立てかけてある剣を取り、リラに渡す。


「すごい……さっきよりもずっと軽いです!」


 手に持つと更に実感する。

 さっきまで重かったはずの剣が今は木剣のようだ。

 片手で持っても全然振りまわせるほどだった。

 その勢いで素振りをしてみる。

 剣の重量と魔力による強化で先程よりも激しさが増す。


「これが、魔力を身体に使う、ということだ」

「騎士様達は皆、こうやって強くしているのですね」

「……いや、騎士団で知っている人はいないだろう」

「そうなのですか?」


 素振りをし続けながら、ギバの話を聞く。


「この技術は私が騎士団を抜けた後、この無骨な大剣を握るために身につけたものだ。

 こんな技術がなくとも、騎士団にはよく整備された武器や最新の魔道具があるから、わざわざ使う必要がない」

「では……アイラ様も……ご存じないという……ことですか?」

「そうだな。そもそも燃費が悪すぎる」


と話している間に段々とリラの素振りが鈍くなる。

 剣が重くなり、身体も怠くなり、息も上がる。

 終いにリラは剣を地面に刺し座ってしまった。


「この剣で鍛えて魔力量が少し上がったとはいえ、私でもずっとやるのは短時間が限界だ」


 ギバはわかっていたかのようにリラに近づき、手拭いを渡す。


「中級貴族並みの魔力量を持っているアイラ君でも、大剣を振り回すことすら難しいだろう」


 リラは息絶え絶えに「ありがとうございます」と言い手拭いを受け取ると、汗を拭う。


 ちょっと動いただけなのに、ドバドバと噴き出る。

 確かに燃費が悪すぎる。長時間動き続けるのには向かないみたいだ。


「少し休めば身体は回復する。だが、魔力は半日、まともに使えないと思った方が良い」


 今朝はもうお開きにしよう、とギバは手を差し伸べ、リラを立たせる。


「素振りはまた次の機会だ」

「身体が動きませんし、そうした方が良さそうです」


 ギバの手を借りて立つことはできたが、まだ少し腕が震えている。

 ほんの少ししかやっていないのに、長い時間、運動――それも筋肉に負荷をかける訓練――をしたような疲労感だ。

 これではギバの大剣も持つこともできない。


「この剣はどうしましょう?」

「私が持とう。部屋まで一緒に戻るぞ」

「え……ですが……」


 リラの遠慮は聞かず、ギバはひょいと簡単に大剣を持つ。

 小さい少女の体躯には似合わない重量級の大剣。

 軽く持ち上げると言うことは、今ギバはあの技術を使っているということ。


「大丈夫なんでしょうか? ギバ様の身体でさえこの疲労感です。私の身体では……部屋に戻るまで保ちますか?」

「問題ない。昨日、気付いたのだが、君の――」



「何をしていますの!?」


 中庭に絶叫が木霊した。

 驚いて、音のする方を見ると、ラルー・ブラウンの姿があった。

 今起きたばかりだろうか。

 寝巻きの姿で、髪や顔も身支度が整っていない。

 が、爽やかな朝には似つかわしくない険しい表情でこちらを睨んでいた。


「……お母様……」


 思わず、リラはそう呟いた。

 状況が全く把握できなさそうなギバ。

 せめて演技をしようと眉間の皺を伸ばし、きょとんとした顔をして、ラルーを見ていた。

 すると、再び彼女は大きな口を開けた。


「何を! していますの!!??」

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