籠の中には……
「かくれんぼするものよっといで♪」
「はぁい!はい!はい!あたしする!する!!」
「おいらも!おいらも!」
「私も!私も!」
「皆でしよ~!」
日が高く上る夏の神社の境内には今日もたくさんの子供達が集まっていた。蝉の鳴き声がジジジジジとしている。じゃんけんで鬼を決める事になった。
「じゃんけんっ!」
「あー!」
「おっし!!」
「やったぁ!」
「けんちゃんが鬼ね!」
鬼に決まった健介が木に向かって眼を閉じて立ち。各々が隠れ場所を探す。
「いち~に~い、さぁん…」
数を数え始めてから蝉の鳴き声が突然止み、生ぬるい風が吹いた。
「うわっ?!」
健介が着物の裾から入ってきた生ぬるい気持ちの悪いじめじめとした空気にぞくりと体を震わせる。
「しぃいごぉお…」
再び数え始めて神社の烏達が突然カアカアと鳴き出した。
「ろぉく、しぃち、」
トントン、健介の肩を何かが叩く。
「え?」
健介は後ろを向くのが恐ろしくて出来なかった。何故かと言うと健介の肩に乗っていた手には何やら紅いぬめぬめとした液体がついている。そしてその手は紅色をしていて、大きな尖った爪をしていたからだ。今、後ろを向けば、何か恐ろしいモノを見てしまう。そんな気がした。健介は恐怖を堪えながら歯を食い縛り、数を数える。
「はぁち、きゅう、じゅう!」
そして、数え終わってしまった。健介は意を決して後ろを振り向く。
「!?」
そこには誰もいなかった。安堵した健介は誰かのいたずらだったのだろうと胸を撫で下ろし、境内に隠れた友人を探す。烏の鳴き声はいつの間にか止まっていた。しかしおかしな事に、どこを探しても誰一人見つからない。皆して帰ってしまったのだろうか?
「なんでぇ、おらだけ置いて帰るなんてひでぇじゃねぇか。」
健介が境内の小石を蹴り飛ばしながらぼやいた。その日、健介はそのまま家に帰った。夜遅くである。酒屋のきぬの母親が家まで押し掛けてきた。
「うちのきぬ来てませんかねぇ?」
健介の母親が応答した。
「いんや、知りません。健介なんかしらねぇだか?」
「おらしんらね。神社でかくれんぼしてたら皆おらを置いて帰っちまった!きぬも帰ったんじゃねぇか?」
「「神社でかくれんぼ?」」
「そうだぁ。」
“かくれんぼ”それを聞いた大人達は顔を真っ青にした。
「どうしたんだ?」
「あんた!神社でかくれんぼしたの何回目だ?!」
「?知らね、いつも皆でして…」
「あの神社でかくれんぼはしちゃいけねぇ!!」
「?なんでだ?」
「村のいい伝えで、」
母親が何かいいかけた時、父親がのそりと奥から出てきた。
「そら、皆食われたんだなぁ屍様に。」
「?屍様?」
「ああ、きぬ…」
きぬの母親は泣き崩れてしまった。
その夜、健介は両親から屍様の言い伝えを聞く。なんでも、昔、かくれんぼ好きの神様がいて子供のかくれんぼに混ざっては子供を食らう神様だったらしい。その神を屍様と名付ける。陰陽師に頼り、神社の境内に封印をしてもらった。村人は屍様を恐れてかくれんぼをしなくなったが、101回かくれんぼをすると屍様が現れて子供を食らっていってしまうそうだ。健介はその話を聞いてただの言い伝えだと思いなおした。翌日、神社に行った健介は籠を見つける。その籠はきぬがいつも持ち歩いていたモノだった。
「?」
健介が籠を覗くとそこには……
血で書かれた手紙と腕が入っていた。
“ごちそうさま”
「ひぇっ?!」
健介が恐怖から神社から出ようと振り向いた時には既に遅かった。健介の首はぐしゃりと音をたてて砕けた。
「ごちそうさま」
ユキアです。ホラーは苦手です。怖いの見ると寝れません。と言いつつ書いてみました。村の言い伝えとか伝承とか私の好きなモノに片寄っちゃったなぁて、思いつつもこれはこれでありかな?と言う気持ちです。あまり怖くないので怪談苦手な人でも見れるかな、と思います。よろしくお願いします。