男たちの探し物
その川は、小さな街の近くを流れていました。東京から少し離れたこの街は、空襲の被害がさほど大きくなく、まともな家もちらほら残っていました。
今日は12月24日。クリスマス・イヴです。とても、とても寒い夜でした。降り出した霙は、やがて雪に変わるでしょう。
寒空の下、川の土手を二人の男が、肩を組みながら、こちらの方へ歩いて来ます。彼らは、何やら大声で歌っています。
音程が外れ過ぎていて、よく聞き分けられませんが、このころ、流行っていた「リンゴの唄」の歌詞でした。
大きなスコップを担いだ二人は、かなり酔っているようですが、河原に降りて、何かを探しています。
「ああ、いい世の中になったなぁ〜」
「うん? 食うや食わずの今がかい?」
「何を言っているんだい。空から爆弾が降ってこないか、夜毎、ビクビクせず、ぐっすり眠れるんだぜ」
「なるほど、『足ることを知る者は富めり』ってか」
「ああ、それに」
「それに?」
「この唄だって、戦時中はさ。軟弱だぁ〜 とか言われてたんだぜ。大声で歌ったら大変なことになっていた」
「確かに、お前さんの言うとおりかもな」
「うーんと。このあたりだと思うんだけど?」
「ああ、こっち! こっち! いたいた」