プロローグ〜川のある街
「冬の童話祭2021」企画ものです。本日より4夜連続の連載で、エピローグがイヴの夜20時となります。後書きは、4夜目の最後にまとめて書きます。
作者としては、普段、あまり書かない物語。チャレンジングな作品です。よろしければ、最終回までお付き合い下さい。
〜〜 むかしむかし 〜〜
あれは悪夢だったのでしょうか? だけど、それは現実。日本は確かに戦争をしていました。東京や大阪、主要な都市は焼け野原となり、東京のど真ん中から富士山まで見渡せたとも言われています。
戦争が終わっても、人々の苦難は続きました。日本全体がそんな有り様でしたから、食べる物がありません。人々は日々の糧をどうするのか? で頭が一杯。人類のとてもとても大切なパートナーである、犬のことなんて、かまっている余裕はありませんでした。
戦争で主人を亡くしたり、お金がなくて一緒に住み続けることができなくなったり、街には野良犬が、ずいぶんといたものです。犬だって、生きるため、ゴミを漁ったり、時には人を襲ったり。さらに悪いことに、予防接種も満足に受けられない彼らの中では、狂犬病が広がっていました。
そう。今のように大切な家族として、人と共に暮らせる犬はごくわずか。人の身勝手極まりない行為とも言えますが、有害な動物として、殺されてしまうことも、珍しくありませんでした。
これは、その頃のお話。寒い寒い冬、ある川沿いの街に暮らす、少女と野良犬の物語です。