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早朝出社の私と家族連れと声

作者: 斜見 太郎

7月最終週にもなると夜明けも早い。職場も早めに開くので朝の出社時刻も自然と早くなる。

今日も暑いなと思いながらラッシュを避けて一駅先のオフィス街にある地下鉄の駅構内に入ると通過電車の風が心地よかった。今日で四日連続早朝出社のサー残である。眠気をこらえながらホームの壁際でボーッと足元を写していると、子供の声がする。チラッと視界の隅に網を持った影のようなものが見えた。

大人に話しかけてるなー。子供も二人いるのかー。家族連れかな?と一瞥もせず存在感のようなものを感じながら始発を待つとホームにメロディーが響き渡ったので子供たちの後ろに並んで立つ。

「あっ」目の前で網を手放してしまったように見えた。拾ってやろうとかがみかけたその時、ふと頭を過ったのだ。「この駅で早朝に家族連れ?」と。中腰になりながら改めて前方を見れば誰も居ない。自分は点字ブロックの上で一人手を白線の向こうに伸ばしながら中腰になっていた。「は??」理解が追い付かない。子供が網が夫婦がと二度三度と確認するが自分だけだ。


小首をかしげながら体を起こしたその時、さっきまで立っていた壁際から小さな声で「ちぇっ」と舌打ちが聞こえた気がした。思わず注視していると、子供達の笑い声が聞こえた。しかし目の前にも壁にも広告以外何もない。声が改札の方に去っていく気がした。壁にも目の前にも何もない。

が!確かにホームの床には網をもった子供が二人手を繋いで駆けていく影が見えた気がした。目を凝らしたが直後にホームに入ってきた車両の明かりで見えなくなってしまった。

私は怖くなってホームが混むまで壁際から動けなかった。ラッシュと一緒にホームから出て、上司に仮病の電話をかけ家に帰った。

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