第五十七章 愛美の同級生一家襲われる
ある日、愛美が同級生の杉山千尋から、「愛美さんのお母さんは警察の人だったわよね?」と確認された。
愛美は、「ええ、母は捜査一課の刑事だけれどもどうしたの?千尋、何か変な事に巻き込まれたの?」と千尋の事を心配していた。
千尋は、「愛美も知っているでしょう?同級生の景山里美ちゃんが休んでいるの。さっき先生に確認すると、無断欠席だとの事でしたので、自宅に電話するように頼んだのよ。先程先生から、誰も出なかったと聞いたわ。何かあったのかも知れないので警察の人に見に行ってもらえないかしら?」と里美の事を心配している様子でした。
愛美が広美に電話すると、「先ほど学校から、自宅に伺うと様子がおかしいと通報がありました。今私達が向かっています。」と返答があった。
愛美は千尋に、母が向かっている事を告げて、「母の担当は殺人事件なのよ。まさか・・・」と心配していた。
学校から、ドアノブに血が付着していて、インターホンを押しても誰も出ないと通報があった為に、近くの交番巡査が急行すると、ドアは施錠されてなく、家の中は血の海でした。
一課長から三係に連絡があり、広美達が現場に急行した。
西田主任は鑑識から、「娘の里美さんはまだ生きていた為に、救急車で病院に緊急搬送しましたが、意識不明の重体です。」と報告を受けた。
検死官が両親の遺体を確認して、死亡推定時刻は、昨晩二十三時ごろだと西田主任に告げた。
西田主任が、「峰岸刑事、付近の防犯カメラを確認して下さい。後藤刑事、家の中で、犯人特定につながるものはないか、鑑識と協力して捜して下さい。須藤刑事、前田刑事、不信人物の目撃証言がないか、付近の聞き込みをして下さい。」と指示した。
西田主任と広美も後藤刑事と現場の捜索をした。
翌日の捜査会議で峰岸刑事は、「防犯カメラでは不信人物や不信車両は確認できませんでした。」と報告した。
前田刑事が、「隣の住民が二十三時ごろ、悲鳴らしきものを聞いていますが、テレビドラマだと思い気にもしていませんでした。」と報告した。
鑑識が、「家族以外の三人分の遺留指紋がありました。前歴者の指紋とは一致しませんでした。」と報告した。
後藤刑事が、「娘の里美さんが死んだふりして助かっていますが、電話まで移動できずにメモを残していました。犯人はアベックの二人組で、女性は花町で芸者をしていると書き残していました。メモは、犯人はこの近くで・・で途切れていました。」と報告した。
西田主任は、「了解しました。係長、現場の近くに芸者は住んでいませんか?」と確認した。
広美は、「昨日の現場検証でメモの事を後藤刑事から聞いて確認しました。芸者は花町に住んでいます。結婚して新居に住んでいて通っている芸者は数人いましたが、現場の近くにはいませんでした。この近くを通る事はあっても、住んでいる芸者はいないわ。芸者については私が調べます。」と伝えた。
西田主任は、「ありがとうございます、係長。後藤刑事、係長とペアーを組んで、アベックの女性を捜して下さい。他の刑事で、付近の聞き込みを続行して下さい。」と指示した。
広美は二十三時ごろ犯行に及んだのであれば、事件当日はお座敷に出てないと判断して、後藤刑事と置屋で初美に確認した。
初美は、「いつも事件の時は私に確認しているけれども、何故捜査しないの?手抜きしているの?」と広美に不信感を抱いていた。
広美は、「違うわよ。花町に警察が出入りすれば迷惑だと思って、可能な限り出入りしないようにしているのよ。」と捜査せずに、初美に確認している理由を説明した。
初美は、「私の所へは出入りしてもいいの?」と不満そうでした。
広美は、「私は実家に帰ってきただけよ。」と説明した。
初美は、「解ったわ。商売柄、他の置屋でも誰が休みだったのかは把握しているわ。」と一覧表を持ってきて、事件当日休みだった芸者を教えた。
広美は、「私はボランティアだから、私の名前は削除しておいてよ。」と不満そうでした。
後藤刑事が、「例外を認めるのですか?係長も一応花町の芸者ですし・・・」と恐る恐る確認した。
広美は、「何言っているのよ。事件当日は、スナックであなたと飲んでいたでしょう!」と不愉快そうでした。
初美は、「一応、広美のアリバイは成立ね。」と笑っていた。
その一覧表から、事件当日休みだった芸者を、後藤刑事と手分けしてアリバイを確認した。
その結果、銀やっここと松島志穂以外の芸者は裏もとり、アリバイが成立した。
広美は、「松島は私が貼り込むわ。捜査本部に戻って西田主任に報告して下さい。」と後藤刑事に指示した。
その夜、松島はお座敷の帰りに若い男性に声を掛けられた。
広美は近くを通り話の内容を聞くと、二人とも敬語ではなくため語だったので、お客様ではないと判断して西田主任に伝えた。
二人を尾行していると、須藤刑事と前田刑事が応援に来た。
二人が別れたので広美は、「松島は私が尾行します。相手の男性の素性を調べて下さい。」と二人に指示した。
相手の男性はタクシーで移動した為、覆面パトカーで尾行した。
タクシーを待たせてスーパーに入った為、外で待っていると十分後にタクシーが相手の男性を待たずに発進したのでタクシーを停止させて事情を聞いた。
運転手は、「お客様から、十分間だけここで待つように指示されました。代金も頂いていますので待っていました。」と返答した。
須藤刑事と前田刑事は、「しまった!」と慌ててスーパーに戻り、内部と周辺を捜したが相手の男性を発見できませんでした。
二人から報告を受けた西田主任は広美に報告して、松島の様子を確認した。
広美は、「タクシーが待っているからと油断して、スーパー内部まで尾行しなかったとは二人とも何していたのかしら。松島は一旦置屋に戻ったけれども、先程、私服で裏口からこっそりと出てタクシーで移動したわ。その後、タクシーが来なかったのでタクシー会社に確認しようとしていると、巡回中のミニパトが来たので尾行しています。ミニパトなので発見される可能性はあるわ。二人はどこかで待ち合わせしている可能性があります。すぐ来て下さい。」と伝えた。
しばらくすれば須藤刑事から、「係長、後ろに着きました。尾行交代します。」と連絡があり、後ろを確認して、須藤刑事と後藤刑事を確認した広美は尾行を交代した。
広美は、「後藤刑事のドライブテクニックは一流らしいので期待しています。」と二人に任せた。
広美は定時後でしたが、刑事が容疑者を尾行中でしたので、府警本部に向かった。
その後、後藤刑事から男性を確認したと連絡があった。
西田主任は、「女性にアリバイがないだけで、二人が犯人だとの証拠はまだありません。前田刑事と峰岸刑事を応援に行かせます。逃亡されないように二人を尾行して下さい。とくに、男性の身元を調べて下さい。」と指示した。
翌日の捜査会議で後藤刑事が、「松島は置屋に戻りました。」と報告した。
峰岸刑事は、「男性は、北大路大宮を下がったマンションに入って行きました。オートロックで、どの部屋に入ったのか確認できませんでした。今、前田刑事が貼りこんでいます。尾行して勤務先を確認します。」と報告した。
広美が、「松島の勤務を確認しました。明日は休みなので、何か動きがあるかもしれません。」と伝えた。
西田主任は、「ありがとうございます。峰岸刑事、前田刑事と合流して、男性の素性を確認して下さい。後藤刑事、松島を貼りこんで下さい。芸者の事で困った事があれば係長に相談して下さい。須藤刑事、現場付近の聞き込みを続行して下さい。私は里美さんの病状を確認します。」と指示した。
翌日の捜査会議で西田主任は、「里美さんは依然意識不明で、いつ意識が戻るか不明らしいです。最悪亡くなる可能性も否定できないそうです。」と伝えた。
前田刑事が、「マンションに峰岸刑事が貼りこんでいますが、まだ相手の男性は姿を見せないそうです。」と報告した。
捜査会議中、峰岸刑事から連絡があった。
「相手の男性が動きました。尾行していますが、花町方面に向かっているようです。旅行カバンを持っていますので、高跳びする可能性があります。」と報告した。
後藤刑事が、「松島も旅行カバンを持って裏口からでました。尾行します。」と報告した。
広美が、「松島の勤務を確認しました。本日から、友達と旅行すると、五日間有給休暇を取得しています。」と連絡した。
西田主任が、「ありがとうございます。このまま帰ってこない可能性があります。応援を向かわせます。二人が会えば任意同行求めて下さい。」と指示した。
二人が会っていると、周りを刑事達が取り囲んで任意同行を求めて連行した。
指紋を確認して問い詰めると犯行を自供した。
相手の男性は下山卓也で、芸者の彼女と夜に下鴨西通りを歩いていると、「ここは小学校も近くにあり、子どももよく通る。子どもの教育に悪いから、こんな場所でベタベタするな。」と注意され、プッツンして家に乗り込んで刃物で脅して謝らせようとしたが口論になり、思わず刺してしまった。止めに入った家族も、その勢いで殺してしまったと反省している様子でした。
事件は解決しましたが、残りの指紋は誰のものか不明でした。
翌日広美が、「この手帳に付着している指紋と照合して下さい。」と西田主任に渡した。
鑑識から報告を受けた西田主任が、「係長、先程持って来られた手帳に付着していた指紋が、残りの一人の指紋と一致しました。誰の指紋ですか?」と確認した。
広美は、「愛美の指紋よ。愛美が事件当日、その友達の家に立ち寄ったと聞いたので、ひょっとすればと思い確認しました。やはりそうでしたか。それと、里美さんの意識も戻り、もう大丈夫だそうです。里美さんの親戚が、里美さんは意識が戻ったばかりで、両親の死亡を知れば精神的ショックが心配なので、落ちつけば両親が亡くなった事を説明するそうです。」と説明した。
次回投稿予定日は、1月20日を予定しています。




