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第五十六章 愛美、置屋で殺人犯と鉢合わせ

愛美が友達と喫茶店でお茶した帰りに人が争っている声が聞こえて、怖いなと思っていると、争う声がしなくなったので争いが終わったのかと安心してその場所を通ると、男達の話声が聞こえた。

「おい、どうする?こいつ死んだぞ。どこかの山中に埋めようぜ。」と慌てて死体を隠そうとしている様子でした。

「そんなの知るか!お前が鉄パイプで殴って殺したんだ。俺は両手を後ろで捕まえていただけで関係ない。」と逃げようとしていた。

「馬鹿野郎!お前も同罪だ。」と仲間割れしていた。

話の内容に驚いて、慌てて逃げようとしている愛美の気配を感じた犯人が、「おい、聞かれたぞ!捕まえろ!」と追い駆けてきた。

愛美が大声で、「誰か!助けて!」と叫びながら逃げていると、偶然近くにいた隆一が愛美の叫び声に気付いて駆け寄って来た。

愛美が、「お兄ちゃん、助けて!」と隆一に助けを求めて隆一も、「愛美!どうした。」と駆け寄ってきた。

愛美が鉄パイプを持って追い駆けてきた犯人を指差して、「人殺しよ!」と叫んだ。

隆一がカバンで対抗して、近所の住民も騒ぎに気付いたので、犯人は諦めて逃亡した。

愛美から事情を聞いた隆一が死体を発見して広美に電話した。

隆一から事情を聞いた広美は、緒方一課長に報告後、刑事達と現場に向かった。

現場に到着した広美に愛美が、「母ちゃん、怖かった~お兄ちゃんが近くにいて犯人を追い払ってくれたので助かったわ。でなかったら、私も殺されていたわ。」と泣きすがった。

愛美と隆一から事情を聞いた広美は、「愛美が争っている声を聞いています。被害者と犯人が、車の進路の事で言い争いになり、鉄パイプで殴って、誤って殺害してしまったようです。警察に通報せずに死体をどこかの山中に遺棄しようとしていたようです。犯人は二人組で、車も顔も愛美と隆一が見ていますが、車両番号は咄嗟の事で見ていませんでした。話の内容から、一人が被害者の手を後ろで掴み、もう一人が鉄パイプで被害者の腹部を数回殴り抵抗力を奪い、次に膝を殴り足の自由を奪い、最後に腕の自由を奪おうとして肩関節を殴ろうとして、誤って頭を殴ってしまったようです。」と刑事達に伝えた。

鑑識が、「被害者の腹部に数か所打撲痕があり、両膝の骨が砕けています。死因は鉄パイプで、側頭部を殴られた事による脳挫傷で、目撃証言と一致します。」と報告した。

西田主任は、「了解しました。後藤刑事、係長のご子息と防犯カメラをチェックして犯人の車両を特定して下さい。その後、モンタージュ写真を作成して下さい。他の刑事で付近の聞き込みをして下さい。」と指示した。

翌日の捜査会議で後藤刑事が、「隆一君と愛美ちゃんの協力でモンタージュ写真作成しました。それと、犯人の車を愛美ちゃんと隆一君が防犯カメラで発見しました。車は白のカムリ、車両番号は泥で汚れていて読み取れませんでした。」と報告した。

前田刑事が、「現場付近で車の接触事故が目撃されています。車は白のカムリとブルーのランサーだったそうです。今回の被害者と加害者の可能性があります。」と報告した。

西田主任が、「須藤刑事、前田刑事、車体に傷がある白のカムリを修理に出している事も視野に入れて捜して下さい。峰岸刑事、後藤刑事、ブルーのランサーが現場に乗り捨てられていました。それも含めて、被害者の身元を調べて下さい。」と指示した。

翌日の捜査会議で後藤刑事が、「現場に乗り捨てられていたブルーのランサーは被害者の車で、被害者は京都産業大学の学生で山川修司さんでした。両親が遺体確認しました。」と報告した。

須藤刑事が、「白のカムリについては現在調査中ですが、対象車両が多く、まだ犯人の車に辿りついていません。」と報告した。

前田刑事が、「接触事故が発生した付近の防犯カメラに、白のカムリの運転席が映っていましたが、個人の判別は不可能でしたので、映像を鮮明化するように科捜研に依頼しています。」と報告した。

捜査会議中、緒方一課長から電話があった。

「交通課から、乱暴な運転をする白のカムリを追跡中だと報告があった。白のカムリは左ドアに何かと接触した跡があったそうだ。」と連絡があった。

西田主任は、「了解しました。」と電話を切り、全員に伝え、「犯人の可能性があります。全員向かって下さい。」と一旦捜査会議を中断して現場に向かうように指示した。

パトカー警官から、「西大路五条交差点西で、白のカムリを挟み打ちにしましたが、運転手と同乗者の二名は車を乗り捨てて逃亡しました。追跡しましたが、途中で二人とも自転車を盗難して春日通りを北に逃亡しました。」と報告があった。

白のカムリの所有者を確認すると、吉岡泰三で、モンタージュ写真の男に酷似していた。

峰岸刑事から着信があり、「モンタージュ写真の一人が、吉岡泰三に酷似していました。勤務先の部品工場で経営者から事情を聞くと、柄の悪い悪友が数人いて、最近暴走族だと判明しました。他の職員が怖がっていて恐喝もされているので先日解雇したとの事でした。これから吉岡泰三の自宅アパートに向かいます。」と報告があった。

西田主任は、「了解しました。白のカムリの所有者が吉岡泰三だと判明しました。須藤刑事に向かわせます。合流して下さい。」と指示した。

前田刑事が、「科捜研に依頼した結果が戻ってきました。二人ともモンタージュ写真の男と酷似していました。一人は吉岡泰三で、共犯も暴走族の可能性があると判断して、モンタージュ写真を交通課に確認しましたが、把握しているメンバーにはいないそうです。前歴者にもいませんでした。」と報告した。

西田主任は、「峰岸刑事と前田刑事とで交代しながら、吉岡泰三の自宅アパートを張り込んで下さい。後藤刑事、須藤刑事、共犯の身元を調べて下さい。」と指示して、吉岡泰三を指名手配した。

翌日の捜査会議で後藤刑事が、「係長を見習って、吉岡泰三を出生から調べました。共犯の男性は高校時代の不良仲間で、志村雄一と酷似していました。現在、須藤刑事が志村雄一を捜しています。」と報告した。

須藤刑事が、「吉岡泰三を逮捕しました。吉岡泰三の話では、志村雄一はプレイボーイで、現在、政治家の娘と交際しています。どこからそんなお金がでてくるのかわかりませんが、クラブや芸者遊びもするようです。明日、花町の料亭で政治家の娘とデートすると小耳にはさみました。芸者を呼ぶらしいですが、係長、何かご存知ありませんか?」と報告した。

広美は、「確認するわ。」と母の初美に電話した。

初美は、「こんなおばあちゃんに苦労かけないでよ。志村雄一様は小菊のお客様だから・・・」と説明していた。

広美は、「母ちゃん、志村雄一は、愛美を襲った殺人犯よ。愛美が母ちゃんのところに遊びに行って、志村雄一と鉢合わせしたらどうするのよ。血を見るわよ。」と脅した。

初美は、「ちょっと驚かせないでよ。詳しい事は小菊が知っています。小菊に伝えて電話させるわ。」と一旦電話を切った。

数分後、広美の携帯に小菊から着信があった。

「鶴千代姉さん、志村雄一様は優しい人よ。愛美ちゃんを襲った殺人犯だなんて本当なの?何かの間違いじゃないの?」と信じられない様子でした。

広美は、「小菊、あんた私の捜査にケチつけるの?まず間違いないわ。愛美が今日置屋に遊びにいくと言っていたけれども、愛美に志村雄一の写真を見せればはっきりするわ。」と小菊を説得した。

小菊が、「あっ、愛美ちゃんがきた。ちょっと待って、今確認するわ。」と通話状態で愛美に志村雄一の写真を見せた。

事情を聞いた愛美は小菊のスマホをとり、「母ちゃん、こいつよ。私を殺そうとした人殺しは。怖いから早く捕まえて!」と広美に伝えた。

小菊が、「嘘でしょう?志村雄一様は、今日ここにくるわよ。もうそろそろくるわよ。」と驚いている様子でした。

広美は、「馬鹿!何故それを先に言わないの!愛美に替わって!」と焦っていた。

「愛美!置屋の二階に隠れていて。もう一度小菊に替わって!」と愛美を守ろうとしていた。

「志村雄一がきたら、刑事に向かわせるので、到着するまで引きとめて。」と依頼して、西田主任に伝えて対応するように指示した。

西田主任は、「聞いたとおりです。須藤刑事、後藤刑事、至急係長の実家の置屋に警官隊と向かって下さい。」と指示した。

広美は愛美の事が心配で、「私も行きます。」と警官隊を引き連れて、三人で向かった。

花町の近くまで緊急走行して、サイレンを消して置屋に向かった。

広美達が置屋に到着して、警官隊を表で待機させ、刑事三人で置屋に入った。

玄関から入ると志村雄一もいて小菊が、「鶴千代姉さん。」と広美に声を掛けた。

志村雄一が、「あなたが有名な鶴千代さんですか?今日は私服なのですね。」と広美に話しかけた。

広美は、「私はここの娘で、今でも、たまにボランティアで芸者として母の手伝いをする事があります。本業は、京都府警に勤務しています。」と志村雄一の様子を窺っていた。

志村雄一は、「えっ!?警察?」と驚いている様子でした。

須藤刑事と後藤刑事が志村雄一を取り囲み、広美が警察手帳を提示して、「捜査一課の高木です。少しお話を聞かせて頂けませんか?」と睨んだ。

志村雄一は、「嫌だな、何怖い顔しているのですか?」と笑顔で誤魔化そうとしていた。

愛美が広美の声に気付いて二階から降りてきて、「私を殺そうとしたくせに、この人殺し!」と叫んだ。

志村雄一は、「お前はあの時の。何故ここにいるんだ。」と愛美に襲いかかろうとしたが、須藤刑事に阻止された。

志村雄一は置屋から飛び出したが、広美が、「身柄確保!」と指示して、外で待機していた警官隊に取り押さえられた。

取り調べの結果、愛美に内緒話を聞かれて殺そうとしていたと愛美が証言していると追求して、二人とも諦めて自供して事件は解決した。


次回投稿予定日は、1月17日を予定しています。

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