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第五十九章 愛美の男友達

愛美が塾へ行くと、授業が始まる前に、他校の男子生徒、山川達郎に言い寄られた。

「高木さん、以前からかわいいと思っていました。思い切って声を掛けました。帰りに喫茶店にでも寄りませんか?」と誘われた。

愛美は、「ありがとう。でも今日はもう遅いから、明日は日曜日だから、北大路ビブレででも待ち合わせしませんか?」とただ断っただけでは角がたち、帰りに襲われる可能性があると判断して、別の日に会う約束をした。

愛美が塾から帰宅すると、広美は既に帰宅していた為に、塾での出来事を相談した。

広美は、「そうね。適切な判断ね。相手の事が解るまでは、人が大勢いる場所で会ったほうが無難ね。」と愛美の判断に賛同した。

隆が、「愛美、先日琵琶湖でデートしていた彼氏はどうした?お前何人彼氏がいるんや?そんな事をしているから誘拐されそうになるんだ。先日は、たまたま京都観光に来ていた秋山陽子さんが近くにいて助けてくれたから良かったが、そのうち血をみるぞ。」と心配していた。

広美が、「心配しなくても、愛美はそんなにもてないわよ。」と笑っていた。

愛美は、「何よ。失礼しちゃうわね。断っているだけよ。友達としてならいいと会っているだけで、正式に付き合っている彼氏はいないわ。ただの友達よ。」と浮気女ではないと不愉快そうでした。

隆が、「愛美、お前いつからそんな事をしていたんだ?それだったら数人で会えよ。二人っきりで会うと誤解されるぞ。」と愛美の事を心配していた。

愛美は、「先日、私を助けてくれた秋山陽子さんに教わったのよ。彼女も特定の男性とは付き合っていないそうよ。」と説明した。

隆は、「陽子さんは活発だったから、男性の友達が数名いても不思議ではないが、愛美は陽子さんほど活発じゃないだろう。慣れない事をすると怪我するぞ。」と愛美の事を心配している様子でした。

広美は、「だから男性と間違えてあんな美人に抱き着いたの?」と不愉快そうでした。

隆は、「一緒にいた女性が亮太と呼んでいたから男性だと思っただけだと何度も説明しただろう。」とうるさいなとうんざりしていた。

広美は念の為に、愛美がデートする日時の巡回ルートを、デートする近くに設定して、後藤刑事と須藤刑事を巡回に指名した。

翌日愛美は北大路ビブレで山川に会い、喫茶店にはいり雑談していた。

そこへ、山川が通っている学校の不良がきて、「おい達郎、いい女をつれているじゃないか。俺達にも紹介しろよ。」と絡まれた。

山川は、「高木さん、出ましょう。」と逃げるように喫茶店からでた。

二人で喫茶店を出ると、不良達も追い駆けてきた。

山川は、「高木さん、今日はここで別れましょう。あいつらは僕が引きつけるから逃げて。」と愛美の背中を押して、不良達に向かっていった。

愛美は広美に電話して、事情を説明して助けを求めた。

広美は場所を確認して、「この時間なら、後藤刑事が近くを巡回中なので連絡するわ。」と安心させて後藤刑事に連絡した。

広美から事情を聞いた後藤刑事は、「了解。」と返答して、愛美の携帯に電話して詳しい場所を聞いて向った。

須藤刑事と巡回していた後藤刑事は愛美と合流して、山川を捜していると、不良達に袋叩きにされていた。

須藤刑事が、「警察だ!辞めろ!」と駆け寄ると不良達は逃げた。

山川は、「ありがとう、高木さんが警察を呼んでくれたの?」と助かったとホッとしていた。

愛美は、「山川君、そんな事はどうでもいいから、大丈夫?」と怪我の心配をしていた。

後藤刑事が、「立てますか?」と腕を引っ張ると、山川を激痛が襲った。

須藤刑事が、「骨折の疑いがあります。救急車を呼びます。」と救急車を呼んで、愛美が救急車に乗って行った。

後藤刑事が広美に報告して、傷害事件として三係で担当する事になった。

後藤刑事は、山川が搬送された病院に向かい病室を訪れると愛美がいた。

愛美は、「正子おばさん、山川君は私を守ろうとして負傷したのよ。検査すると、やはり骨折していました。先程家族に連絡したのでそろそろ来ると思います。」と説明した。

山川は、「高木さん、知り合いなの?」と後藤刑事の事を知ろうとした。

愛美が、「先ほど、不良達を追い払った刑事さんよ。恩人を忘れるとは冷たいわね。」と不愉快そうでした。

後藤刑事が警察手帳を提示し、「京都府警の後藤です。先程はそれどころじゃなかったのよね。」と山川の肩を持った。

山川は、「あっ、思い出した。僕を引っ張った刑事さんだ。あの時は激痛で、刑事さんの顔が鬼に見えたよ。」と笑っていた。

後藤刑事は、「愛美ちゃんの母親とは同じ職場なので、愛美ちゃんの事もよく知っています。」と説明した。

山川は、「えっ?同じ職場って、高木さんのお母さんは警察の人なの?」と驚いていた。

後藤刑事が、「今回の傷害事件は、最初に到着して対処した私達が担当する事になりました。山川君を襲った不良達の事を教えて。」と不良達の事を聞いて病院をでた。

愛美は、「山下君を襲った不良達は運が悪いわね。私の母は、主に殺人事件や凶悪事件を担当しているのよ。そんな刑事軍団を相手にすれば、不良高校生はヘビに睨まれた蛙ね。」と笑っていた。

山川は、「えっ?今の女性刑事も凶悪事件を担当しているの?」と凶悪事件を女性刑事が担当している事に驚いている様子でした。

愛美は、「そうよ。後藤刑事は業務中に二度も刃物で刺されて入院しているわよ。油断すれば命を落とす可能性のある厳しい仕事よ。」と説明した。

山川は、「高木さんのお母さんも、そんな危険な仕事をしているの?今回のような場合、頼りになるね。」と愛美の母親の事を考えていた。

愛美は、「そうよ。頼りになるから母に助けを求める事もあり、今回も母に相談したら部下の後藤刑事がたまたま近くにいて来てくれたのよ。」と今回捜査一課が担当になった理由を説明した。

学校で不良達は担任の先生から呼び出された。

「お前ら、また何かやったのか?刑事が訪ねてきたぞ。」と問題ばかりおこす不良達に、うんざりしている様子でした。

不良達は、「やば、達郎のやつ、俺達の事を喋ったな。」と面会室に、どうやって誤魔化そうかと考えながら向かった。

不良達が面会室にいくと、現場にきた刑事で顔を見られていたので諦めて、「女を紹介してくれなかったのでヤキを入れただけだ。」と自供した為に警官隊に連行された。

パトカーのなかで不良達は、「達郎のやつ、女さえ紹介してくれていればこんな事にならなかった。あとでヤキ入れてやる。」と呟いていた。

パトカー警官が、「そんなに彼女を紹介してほしかったら、京都府警捜査一課までくればどうや?山川君がデートしていたのは鬼軍曹の娘さんだ。そんな事をして鬼軍曹を怒らせるとただでは済まないぞ。先程の女性刑事は、娘から相談を受けた鬼軍曹直属の部下だ。」と睨んだ。

不良達は、すぐに警察が動いた理由を納得して、「あの女は鬼軍曹の娘さんだったのか。」と諦めた様子でした。

翌日、山川の同級生が病院にお見舞いに来た。

「山川、不良達が警察に連行されたぞ。お前が通報したのか?そんな事をしたら、今後不良達に付き纏われるぞ。」と山川の事を心配していた。

山川は、「僕じゃないよ。塾で知り合った女性とデートしていると不良達に絡まれたけれども、彼女の母親が警察に勤務していたので、彼女が母親に助けを求めただけだ。」と説明した。

同級生達は、「そうか、母親が担当部署に連絡したのか。」とまさか母親が刑事だとは思っていない様子でした。

山川は、「違うよ。彼女の母親は、主に殺人事件や凶悪事件を担当している刑事で、母親が部下に指示して不良達を連行したんだ。」と説明した。

不良達に広美は、「治療費と慰謝料を支払い示談にする事を勧めるわ。でないと、一生前科者のレッテルがついてまわるわよ。処分が決まるまで、身柄は身元引受人の両親に預けて釈放するけれども、処分が決まるまで誠意が見られなければ即逮捕して身柄を拘束するわよ。」と脅して釈放した。

前田刑事が、「何故すぐに釈放するのですか?」といつもの広美と違うので不思議そうでした。

広美は、「前田!相手は高校生だから未成年よ。少年課の担当よ。私達が取り調べる事はできないわ。少年課には、私から連絡しておくわ。」と相変わらず前田は抜けているなと感じた。

前田刑事は、「えっ?でも係長は、私達が担当になったと指示していませんでしたか?」と不思議そうでした。

広美は、「あの段階では、相手が未成年だとは判明してなかったからよ。制服を着用してなくて、私服だったでしょう?チンピラの可能性もあったでしょう?ただの喧嘩で、将来ある高校生の未来をつぶしたくなかったから、少年課に引き渡さずに釈放したのよ。」と説明した。

広美が少年課に連絡すると、「釈放するかどうかは少年課で決める事だ。何故釈放する前に連絡頂けなかったのですか?」と不満そうでした。

広美は、「ただの喧嘩で目くじらを立てなくてもいいでしょう。これで反省しなかったら、その時はあなたがたに任すわ。」と説明した。

少年課の刑事達は、「いつも凶悪事件を担当している鬼軍曹からすれば、喧嘩は可愛いものなのか。」

「でもそれ以来、あの不良達は一度も問題を起こしてないぞ。」

「鬼軍曹が釈放したのは、それだけの理由があったのだな。」

「俺達が何度対応してもダメだったが、鬼軍曹は凄いな。」と感心していた。


次回投稿予定日は、1月26日を予定しています。

愛美が誘拐されかかり、秋山陽子さんに助けられた事の詳細については、女の体を持つ男第二部第二十二章に記述しています。

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