隕石落下まで……
空を見上げるとそこには沢山の星がある。
それだけこの星に僕らが存在することは、常識の確立では奇跡なのだろう。
今、僕が目に捉えることが出来るだけでも、いくつあるのかわからない。
この場所が生まれたのは46億年前。人が触れることが出来る時間では一番長い時間だと思う。実際に46億年過ぎていると言われても全く実感はない。
僕、相馬琉聖の時間はまだまだ短く17年くらいしか過ぎていなくて、所謂天文学的な数字にはほど遠い。
ではそれくらい長い時間、宇宙の中に存在したこの星、地球はどんな星なのだろうか? 考えたことは一度くらいはあると思う。
答えは簡単。『わからない』が正解だ。
正確に言えば、今の僕たちが確認することが不可能、と言うだけだが……。では質問を変えてみよう。
今僕たち、人類が肉眼で確認出来る星の数はいくつだろうか。少ないかどうかは個人差があるが大体1万個に届かないほどだそうだ。
もちろん宇宙望遠鏡や、衛星から見ればもっと見ることが出来るし、今、僕の居る場所からだって、市販されている望遠鏡でも沢山の星を見つけられる。
そんなに沢山の星があれば、いつかは地球にも星が落ちてくるのではないか、そう思ってしまう。
実際地球には毎年無数の星のかけらがいくつも落ちているのは知っているだろうか。
星と言ってもその大きさはチリみたいな物ばかりだが、約年間100万トン。そのほとんどが大気圏で燃え尽きる。
その燃え尽きる瞬間が流れ星のひとつだ。
では実際に燃え尽きずに、地球に落ちてくる星はいくつあるだろうか。
星と言うと大きな物を想像するかもしれないので、『隕石』と呼ぶことにする。
地上に星……隕石が落ちて、恐竜が絶滅したのは有名な定説のひとつだ。それ以外に大きな隕石が地球上にはぶつかっていない……と、されている。
本当のところはよくわからない。過去の調査結果などを見ると、生物が絶滅するほどの大きさの物で、人類が認識できているのは、恐竜を絶滅させた隕石だけだ。
どれくらい巨大な隕石が落ちたか想像したらビックリするだろう。
約12㎞。
小さいか大きいかは、みんなの受け取り次第だが、その結果恐竜は絶滅した。
宇宙のスケールから考えれば、はっきりってとても小さい。しかしそんな物で星を支配していた生物は全滅したのだ。
その威力はすさまじく周囲300㎞は一瞬で消滅し、なんと津波の大きさは3000メートルを超えていたそうだ。富士山の高さ程の津波が襲ったと思えば、それは生き残れないだろう。
映像が残る、某国に落ちた隕石は70メートルにも満たなかったそうだ。1000㎞離れた距離の家のガラスが割れるほどだからその威力は想像出来るだろう。
では、もしも、もしも地球に20㎞くらいの隕石が落ちてきたらどうだろうか? 今までの説明で、お前にもわかると思うけれど感想はどうかな。
「えーわっかんない。そんな大きな隕石なら、私たちも無事じゃないって事ならわかる」
隣で僕の説明を聞いてくれていたであろう、川栄空子は興味が無さそうに、答えてくれた。
「琉聖の話は長いよ、星座とか、神話とかもっと楽しい話してよ。それじゃあSNSにあげても誰も見ないよ」
「僕がSNSに星空の写真なんてあげるわけ無いだろ」
彼女は僕の抗議も聞き流すと望遠鏡をのぞき込んでいた。
「でも本当に、星見るの好きだよね。確かに綺麗だけど長続きするよね」
「空子も昔は好きだっただろ。そっちが、ずーっとはまってる、あの変なバンドと一緒で、他人に言われても好きなんだよ」
「そのこと言わないでよ! 私が応援してるからいーの!! もう、なんか面白い星でも見えないかな。しかも折角二人で来てるのに……」
空子はブツブツ言いながら望遠鏡の角度を弄っている。
「そうそう面白い物は見えないけど、ほらここら辺をのぞいてみなよ、星の密集地帯だから、すっごく綺麗に見えるよ」
「ほんと? どこどこ、調整してよ」
「ほらここだよ」
「すごっ。綺麗じゃん」
空子が喋るのをやめて観察に夢中になってくれた。これで僕も自分の見たい空を見ることが出来る。そう思って自慢の望遠鏡を合わせようとしたときだった。
しかしそれは決して幸運だったわけではない。
「ねえ、琉聖。あの赤くピカピカする星は何かな」
むしろ不幸の元凶になってしまった。
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「はい、ではここまで。気をつけて帰れよ」
チャイムと同時に教師の終了を告げる挨拶が終わる。学生にとっては待ちに待った放課後の始まりだ。
足早に教室を出て家に帰るか、寄り道をしていくのか、部活に行くのか。もちろん教室に残り、話し込んでいる生徒も居る。
僕の放課後の過ごし方は大体決まっている。
その場所に向かうために廊下を出て進む、階段を上がればその場所につく。何時ものコースだ。だが時々エンカウントする場合もある。
「やっと来た。遅いよ早くここを開けてよ、寒いんだけど」
そう、彼女がそのエンカウント。幼馴染みの空子だ。
「ここは天文部の部室なんだけど、空子はバスケ部だろ。なんで文化棟なんかに居るんだよ」
そうなのだ、ここは文化系の部室が集まる建屋、所謂文化棟ってやつなんだが、空子は自分の部活をサボってはよく遊びに来るのだ。
「いいじゃない、今日の部活は自主練なんだよね」
また嘘ばっかり。僕は諦めてため息をつくと鍵を開けて、部室に空子を招き入れた。
「お邪魔しますって言っても琉聖のぼっち部活だから誰も居ないよね」
「失礼なやつだな……ぼっちじゃなくて他のメンバーは休止中だ」
「ゆーれー部員ですね、わかります」
「ほっとけよ、俺が活動してるから良いんだよ、気楽だし」
何時もと変わらない、くだらないやり取りをしながら椅子に座ると、一つの雑誌目が入った。
『創世星ナビ』。星座、宇宙工学などが載っている月刊誌だ。
どんなジャンルにでも存在する、業界紙みたいな物だが、少しだけ僕たちには特別な雑誌だ。
空子が雑誌を手に取ると、ページをペラペラとめくる。何回も見たせいか雑誌に癖がついてしまい、あるページで勝手に止まる。そこの内容で写っている一枚の写真がある。
それはなんと僕らだ。
空子と一緒に出かけて、天体観測。その時に見つけた星が少し話題になり。僕らは雑誌に取り上げられたのだ。
意外に思うかも知れないが、星を僕らのようなアマチュアが発見することはよくあることで、雑誌に写真つきで取り上げられるなんてのはめずらしいことだ。
「私やっぱり綺麗に写ってるよね。ほらほら、琉聖もちゃんと見てよ」
もう何回も繰り広げた会話だ。でも僕は正直見たくない。
なんとなく複雑な気分だからだと言えばわかってもらえるかも知れない。
僕が小さい頃から何度も空を見上げてきたのに、久しぶりについてきた空子が、まさか未発見の星を見つけるなんて、本当に理不尽だ。
「私たち、本当に見つけたんだね。やったね」
その笑顔はものすごくまぶしくて綺麗だった……。今でもこの喜びなんだ。実際に未発見の星だとわかった瞬間、彼女の喜び方は今でも忘れられない。
「あの星に名前がつくんだよね、でも自分の名前つくなんてちょっと恥ずかしいよね」
新しい星を発見すると、名前をつけることが出来る。運良く(?)第一発見者だった僕たちの名前から取ることになった。
『リュウコ』
響きだけ聞くと、とても強そうな名前に聞こえる。空子が自分だけの名前がつくのを嫌がり、僕と自分の名前をくっ付けて命名することを提案し、見事に採用された。
「これだけ有名になれば、部員も来るかと思ったけど……ゼロだね」
そうそう部員なんて増えるわけない、でも期待していたのも事実だ。
「ねえ帰ろうよ、もうそろそろ星の分析結果とか送られてくるかも知れないよ。教えてくれるって天文台の人はいったんでしょ」
そうだ、それは僕も気になっている。あの星は特殊だそうで、ここまで接近するまで誰も気が付かなかったそうだ。
星の正確な大きさ、軌道なんてのも未だにわからないらしいが、そろそろ結果もわかるはずだ。
いよいよ新連載です。
いきなり終わるかもしれないけど……ヾ(=・ω・=)o
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