妹の独り言
不定期更新のくせに今日も小説を投稿する社畜の鑑ですね!
仕事量もまちまちで完成度もまちまちですけど。
私の人生は幸せとは言い難いものだった。
私たちを拾ってくれた爺様がいなくなってからの2年間はとても大変で休む暇なんてなかった。
貧しい山奥で兄との2人暮らし、兄は力仕事を進んでしてくれて、私は家事に専念できた。
家事に専念といっても初めのうちは失敗ばかりだ。料理なんて何度お腹を壊したことか……。
それでも何度もしているうちにやはり慣れてくるもので、2ヶ月もしないうちに手際よくできるようになった。相変わらず失敗することはあるが。
料理はあまり上達しなかったが裁縫は自分でも得意な方だと思うくらいになった。
きっと兄が毎日のように服をボロボロにして帰ってくるからだろう。単純に作業量の問題だ。
効率のいい家の清掃方法を考えて、実践しては何かを壊してしまい、兄に笑われながら慰められることは日常茶飯事だった。そのおかげか掃除に関しては一人前だ。…きっと。
常に何かをしなければならない生活は幸せとは言い難いが、楽しかったと思う。
兄との会話は退屈しなかったし、いつも兄は私のことを気遣ってくれた。私はその優しさに安心して生活できた。
兄だって爺様が蓄えていた食料が減って来てからはいつもの力仕事に加えて狩りをするようになったと言うのに、いつも私のことばかり心配したり家事を手伝ってくれたりしてくれる。
そんな兄が、私は大好きだった。
優しい、心配性で世話焼きな兄が大好きだった。
大好きな兄との生活の終焉は突然だった。
突然山賊の男たちが私たちの家に押し入ってきて、兄を大きな剣で刺したのだ。兄は抵抗すらできずに殺された。体の大きな山賊に大きな剣で殺されたのだ。倒れた兄は私の方を見て何かを言いたげに口を動かしていたが、何をいっているのかわからない。
私は恐怖と混乱で泣き叫んでいた。
自分自身の行動が全て客観的に見える。
自分がしたい行動としている行動が一致しない。
兄を助け起こして逃げたいのに、足は言うことを聞かずに動かない。
「お兄ちゃん!」と呼びかけたいのに出てくる言葉は意味をなさない叫び声だけ。
頭の中は山賊たちに対する恐怖で埋め尽くされ、何も考える事が出来ない。
私の行動は山賊たちにとって都合のいいものだっただろう。何せ、何もせずにただ泣き叫んでいるだけなのだから。
当然、私は兄と同様に殺された。
あっけなく、無慈悲に斬り殺された。
私を殺した山賊の姿は『男』という概念として常に私の脳裏にトラウマとして焼き付いており、瞼を閉じればいつでもあの理不尽な恐怖を思い出せる。
……死んでいるのにその表現は不自然?
いや、不自然ではない。
「シュリエ様、おはようございます。」
「…おはよう、ネリアナ。」
なぜなら私は今も生きているのだから。
いや、兄の妹としての「私」は確かに死んだ。
今生きているのは「私」王国ラビネンシアの国王の次女、上に兄と姉を持つ末っ子だ。
「食堂で朝食になさいますか?それとも先にお体を清められますか?」
「ご飯にするわ、着替えを用意して。」
「こちらに用意しております。」
「……お見通しなのね。」
私は、山奥で生活する貧しい妹から転生して…
国王の娘になった。
……正直、前世よりも違う意味で辛い。
奴隷に転生した兄と国王の娘として転生した妹。
兄はこれから前世よりも過酷な労働を強いられ、
妹は休む暇のない生活から休む暇しかない生活を強いられます。
……どちらが幸せでしょうか。