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友情

懐かしいキャラがどんどん出てくる。

「…お久しぶりね、シュリエ。」

ニルティはそう言い、驚いた顔をしたシェリアを見て微笑む。

「……ニルティ。」

「…ちょっと驚きすぎじゃないかしら?」

だが、シェリアはニルティが思っていた以上に驚いていた。

始めはシェリアが驚いていたことに喜んでいたニルティもシェリアの反応に少し戸惑ってしまう。

ニルティの当初予定していた反応としては驚いたあとすぐにシェリアと再会を喜びあうはずだったのだが…シェリアは未だに驚きで固まっている。



シェリアが驚きから回復したのはそれから5分後のことだった。


「…そう、帝国に行ったり王国に戻ってきて王子たちと戦ったり。一歩間違えれば大変なことになってることばかりね。」

「……うん。」

2人は会場を抜け出してシェリアの自室…今はもう使われていないから元自室であるが、そこで今までのことを話していた。

シェリアはニルティに何も言うことができずに国外へ行ってしまったことに対して罪悪感を抱いていたが。


「そんなこと気にしなくても大丈夫よ。私はあなたが急に消えたことに対して怒ってなんかいないわ。」

「……ありがとう、ごめんなさい…ニルティ。」

「…だから気にしなくていいのに。」


2人の短い期間ながら強い友情は思っていた以上に固く結ばれていた。


「あなたが国王の娘なのは知っていたけど…まさか末っ子じゃなくて長女だったなんて。それにシュリエも偽名だったのね。」

しかし再び出会った2人には特殊な事情にいるシェリアのせいですれ違いが多い。

…例えば名前とか。

「あー…違うの、シェリアが偽名でシュリエが本名なの。」

「…え?でも王位継承記念パーティーじゃシェリアって言われてたじゃない。」

「……うん、偽名だけどそっちが私らしいねってことで偽名が本名になったの。」

「………ややこしい。」

「…ごめん。」


しかし、そんなすれ違いを正していくうちにいつも通りの関係が戻ってきていた。

元々は明るい性格のシェリアがクールで物静かなニルティを引っ張っていくのが学園で見られていた姿だった。

…たまにやりすぎてニルティに怒られるのはご愛嬌だ。



そして、そんな2人を見つめる影が二つ。


「……居たんだな、友達。」

「…ええ、彼女はニルティ様ですね。シェリアお嬢様の寮に来られたこともあるので良く覚えています…シェリアお嬢様は珍ニルティ様の前では明るく振る舞われていました。」

「…シェリアは元々明るく活発な子だ。初めて会った時は性格が変わったんじゃないかと思ったほど静かだったから心配したんだが…そうか、友達の前では明るく振舞えているのか。」


会場でシェリアを見守っていたアンナとエレンである。

2人はシェリアたちが会場を抜け出したのにいち早く気づき、あとを追っていたのだがシェリアと一緒にいるのがニルティだと知ったアンナがエレンにシェリアの友達だと説明したのだ。


それからのエレンの喜ぶ姿はアンナも微笑ましく思うほど子供らしく、そして優しい親の様だった。


「これなら…安心だな。」

「ええ、安心ですね。」

「…会場に戻るか。」

「はい。」


2人は静かに会場へ向かった。

昔に戻った様な笑顔を見せるシェリアに微笑みながら。



「……おい、そろそろ見るのも辛くなってきたぞ。」

「……どうして?」

「…見るだけで胸焼けしそうだってことだよ!」

シェリアたちが感動の再会をしている時、ナナは1人で甘味を堪能していた。


ミルドが見るだけで胸焼けしそうだと訴えるほどに。


ナナを見ている他の貴族たちも苦笑いを浮かべてワインのみを飲んでいる始末。

誰も食べ物に手をつけないと言うことは…

つまりそう言うことである。

「…まだ食べられる。」

「冗談だろお前。」


そんな2人に近づく影が2つ。

「…やあ、ナナちゃん。お久しぶりだね。」

「甘味をもの凄い勢いで食べる少女って君のことか…てっきりスイープ卿の娘さんかと思ったんだが。」


そのうちの1人を見たミルドが驚きの表情で叫ぶ。


「あっ!お前っ!!」

「…ネイデンさん、シュビネー伯爵。」

それにつられてナナも2人の名を呼んだ。

ネイデンとシュビネー伯爵はそれに笑顔で応える。

「ナナちゃん!急に姿を消したと聞いて心配していたんだよ!…本当に会えてよかった、ラディリエちゃんも心配していたからね。時間があるときでいいから会ってあげてくれ。」

「……うん、ごめんなさい。」

「おいネイデン、再会早々にナナちゃんを謝らせるなよ。ナナちゃんにも事情があるだろ?」

「あぁ済まない、嬉しくて舞い上がっていた様だ。ナナちゃんも済まないね、さっきのことはあまり気にしたくてもいい、まぁ遠出するときはラディリエちゃんには一報入れてあげてくれると嬉しい。」

「……うん、わかった。」

「ありがとう、そう言ってくれると嬉しい。」


唐突な再会であったが、ナナはその再会を素直に喜んだ。王都の連続殺人事件を共に解決した仲…ただそれだけの仲だったが、それでも久し振りに会うと嬉しいものだ。


それに、ラディリエさんも私に会いたいと言っていたらしい。

国外逃亡の件はシェリアの海外旅行の付き添いという形で不問にしてくれたらしいので、会おうと思えば普通に会える。

……言ってみようかな、きっと怒られるけど。


そんなことを内心で思いながら会話を楽しんだ。



そんな3人のやりとりに水を差す男が1人。



「……ナナ、アイツ伯爵なの?」

「…え?シュビネー伯爵は…伯爵だよ?」

ミルドの突然の疑問にナナは疑問系で返してしまう。



「……俺、アイツぶん殴ったんだけど。」

「…………は?」

ナナの思考が停止する。

そしてシュビネー伯爵は気まずそうに改めてミルドに挨拶する。

「…ああ、お久しぶりです。ミルドさん。」

「……おう。」

ミルドもそれに気まずそうに応える。



気まずそうな2人…それを遠巻きで見るネイデンとナナ。


2人の仲を取り持つべきか?それともこのまま2人の気まずいやりとりを見守るのが無難か?

気まずい2人の会話の潤滑油の役割を果たすのは難しいか?


ナナとネイデンは考える。


実になんとも言えない空気で満たされた誰も得しない負の空間が生まれてしまった。


そして、ナナとネイデンは考えた結果。


「……ナナちゃん、このケーキも美味しいよ。」

「……ありがとう。」


ネイデンとナナはお互いに気まずそうにしている友人を無視することで気まずい空間から抜け出すことにした。


取り残された2人は薄情な友人を恨めしそうに思いながらもお互いにお互いを無視できないジレンマに囚われる。




友情とは…シェリアとニルティの様に美しくもあれば。




この2人の様な醜い一面を持つものでもある。

最近暑いですね、私は少しバテてしまっています。

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