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心配

普段は絶対に笑う一言とか考えてます。

パワーワードみたいな奴です。


でも思いつくわけでは無いです。

王国を奪うことを決意したシェリアに逆らう者は誰1人としていなかった。

ミルドもシェリアの意思を尊重すると言って少し苦笑いをしていた。

…まぁ、エレンに真っ向から意見をぶつけたあの姿には私も驚いたが。


それから、エレンの意見で私たちは王国の情報収集をすることになった。

『情報は多ければ多いほど我々の力となる』

と言うことらしい。

さすがに王国内部だけの情報じゃ戦闘時に苦労する…と言うことだ。


その情報収集係に選ばれたのは。

「……いやぁ、何で俺なんだよ。」

「…それはこっちも同じ。」

……なんと私とミルドだ。


いや、エレンの意見もわかる。

シェリアは国外逃亡者の中で一番顔が知られているだろうし、アンナはシェリアの従者だ、シェリアから離れたくはないだろう…一番適任だと思うけど。


そう、この2人が王国に入るのはかなりリスキーだというのはわかる。


……しかしエレン、あんたの言い訳は酷いぞ。

「いや、私はめんどくさいからパス。」

……もう言い訳でもないだろ。


そのしわ寄せがミルドに来ているのも不憫でしかない。ミルドって結構有名人だよね?王国軍関係者に姿を見られたら一発でアウトなんじゃ……。

そんな心配を抱えながら、私たちは王国へ向かった。


「ナナ、お前は王国に入る前にこの服を着てくれ。」

そう手渡されたのはよくスラム街で見かけるみすぼらしい麻でできたボロい服。

「…わかった。」

早速着替えようと服に手をかけるが。

「っ!?おいおいおい!ちょっと待て!」

「……今度は何?」

「いやお前!羞恥心はねぇのか!」

そう言うミルドの顔は赤い。

……あぁ、そう言うことか。

「…別に気にしない。」

「……俺は気にするんだよ!」

「元男だし。」

「そうは言ってもなぁ…ちょっとは恥じらいを…。」

「…恥ずかしい?」

「…アンナが俺を宿に入れなかった理由がわかった気がするぜ。」

「…?」

少しおちょくっただけでこの言われようだ。

…別に誰に見せても恥ずかしくないわけではないのだが…ミルドには別に見られても気にしない。

…いや、好きとかそう言うことじゃない。

ただ単に信用してるだけだ。


一悶着あったが、無事に王国の入国審査門の前まで来ることができた。

入国者がいないからか、もう結構遅い時間だからなのか、門は閉じられている。

まぁ、好都合…なのかな?

お陰で考える時間ができた。



さて、これからどうしようか。


そう思案してる私を置いてミルドが閉まっている門の扉を叩く。

おいおい!この馬鹿何してるんだ!

私はミルドを止めようと近づくと、ミルドは私の方を見て口パクで一言、私に伝えた。


『先に行け』


……なるほど、コイツ…意外と頭いいんだ。


そして、私も彼に口パクで一言伝え、入国審査門から離れた。

これから行うことはただ一つ。




…ちょっと大きな壁登りだ。



王国の周りは大きな壁で囲まれている。

しかし、その高さはあまり高くない。

せいぜい5メートル程だ、一般人には辛いかもしれないが、身軽で暗殺訓練を受けているナナにとってはそれほど苦でもない。


それに、今回はちゃんと道具もある。

……と言っても即席だけど。


作り方は簡単、鋼糸をナイフのグリップに巻きつけるだけ。

あとはこれを壁に向かって思い切り投げる!


カッ と気持ちいい音が聞こえた気がする。

優しく鋼糸を引く…うん、ちゃんと刺さってる。


あとはこれを伝って壁を登るだけだ。

ゆっくりと、慎重に登る。焦ることはない。

一歩一歩、着実に進むのが肝心。

…転落死なんて終わりは嫌だ。


2メートル程登ったくらいで声が聞こえた。

「誰だ!!」

下から聞こえる、怒っているような響き。

しかし、私は動じない。


これは私に向けられた声じゃない。

…少し焦ったけど。


「帝国のミルドだ!少し用事があってな。」

…そう、これはミルドに向けられた怒声だ。

アイツ、無理に門を叩くから…。


「用事とはなんだ!要件を言え!」

「うるせぇな!要件を言えば入れるのか?」

「…とりあえずは要件だ!」

「酒だよ!酒!王国の酒が飲みたい!」

「…は?」

……は?

入国審査官と同じ感想が出た。

…アイツ、馬鹿なの?


「…要件はそれだけか?」

心なしか入国審査官の怒声が和らいでる。

「酒以外に何があるってんだ!」

…むしろなぜ入国目的に酒を選んだんだこの馬鹿。

「……入国を許可する。」

…おい待て入国審査官、それでいいのか?


しかし、ここで私は壁を登り終えてしまった。

そこからは風の音が強くて声があまり聞こえなかった。

はぁ、大丈夫かな…ミルド。



私は壁を跳びおり、王国へと侵入した。

目指す場所は、もう決まっている。





「本当に…酒なのか?」

「それ以外に俺の楽しみはねぇよ。」

「いや…噂はかねがね聞いてはいるが…。」

俺は入国審査官に囲まれながら王国へと入っている。


俺の目的はナナの侵入の手助け。

…つまり陽動だ。

俺が周囲の注意を引きつけ、その間にナナが王国の情報収集をする。


……我ながら完璧な作戦だ。


「酒がうまい店はどこにある?」

「は?いやぁこの時間帯なら酒場はどこも閉まってるぞ?…あと2時間もすればオススメの店が開店するが…。」

「ほぅ、オススメの店…案内しろ。」

「いや、だからまだやってないって。」

「いいんだよ、店の前でまってるからよ、案内しろよ。」

「お前もう酔ってんじゃねぇのか!?」


これで良い、俺の目的は陽動だ。


ナナ…お前が心配することはない。

だから安心して行ってこい。

しかし…ナナの奴、心配性なのか?


…ほんとうに…帝国最強のこの俺に。


『死ぬな』


この俺にそんな心配したやつなんざ。

…お前だけだぜ。

薬って通常研究して治験を経て役所に認可されるんですが、かなり時間がかかるんですよね。


でもバイアグラは異例の承認の速さだったらしいですよ。



…どうでもいいですね。

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