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戦争〜序章〜

ここから物語が大きく動く!?


……どうなるんだろう?(おい作者)

リン…それは、シェリアの前世での名前。

それを知っているのは私と…爺ちゃんだけだ。

ならば、この少女は…爺ちゃん……なのか?

…むちゃくちゃ可愛いけど。

「リン…お前は昔から勘が良かったなぁ。」

「…お爺ちゃん、なの?本当に?」

「もう、そう呼ばれるような姿では無いがね。」

2人はお互いを見つめ合っている。

それを許さないのはアンナだ。

「お嬢様から離れてください!」

アンナは料理で使っていた包丁を少女に向かって横薙ぎに振る。

少女は顔色ひとつ変えずに…そもそもアンナの方すら向かず、シェリアと話す。

「しかし…可愛くなったなぁ、リンの時は茶髪だったが…今は金髪か。」

ピタッ

その効果音が正しいだろう。

アンナの包丁は、少女の首に当たる前に…その動きを止めてしまった。

「くっ…ミルドさんが苦戦するだけありますね。」

「彼は苦戦などしていないよ…どちらかと言えば惨敗だ。…君と同じようにね。」

その言葉が紡がれた途端…アンナの体がミルドと同じように吹っ飛び、家の壁を突き抜け裏庭の畑に落ちた。

「あ…アンナ!」

「…お嬢様…私は大丈夫です。」

しかし、アンナの声は震えている。

「お爺ちゃん…どうしてアンナを!」

「リン…私は敵対したものを遠ざけただけだ。敵対しなければ何もしない。」

「…でもアンナは…。」

「彼女が君にとって大事な存在なのは分かる。必要なら後で謝罪しよう。…ところで…。」

その瞬間、少女は私の目の前に現れた。

そして…私の胸に触れた。


「ひゃっ!?」

「カルネ…お前も女になったか…世も末だな。」

カルネ…私の前世での名前。

この名で呼ばれることはもう無いと思っていたのに。

…まさか胸を触られながら呼ばれることになるとは。

しかしそんなことより……

「…触りすぎ!!」

「減るものでは無いだろう?」

ブンッ…とナイフを振るも。

また…ピタッ、と止まってしまう。

「学習しないなぁ、これで3人抜きだ。」

「…まだわからない。」

しかし、まだ私の攻撃は終わっていない!

左手の鋼糸を爺ちゃん(かもしれない)少女の首に巻きつけ…ようとした。


「なるほど、確かに学習している。」

しかし、その鋼糸もピタリと止まった。

「私が1つしか物体を止められないとでも思ったのか?」

「……。」

「それとも不意打ちなら攻撃が通ると思ったのか…いずれにせよ、まだまだ浅い。」


そして爺ちゃん少女は笑う。


「だが、今までの誰よりも高得点だ。」

そう言って、吹っ飛ばされた。



その後、冷静になった皆でボロボロのテーブルを囲む。

「じゃぁ、アンタは帝国や王国の追っ手じゃ無いのか?」

「あぁ、どちらかと言えば追われる側だな。…帝国抜け出してここに来たし。」

ミルドはどこか安心した顔をする。

少女…いや、爺ちゃんはそれを見て笑うが、特に何も言わない。

「それで、あなたはお嬢様とどういう関係なのですか?」

「お嬢様?あぁ、リンのことか。リンとは前世での仲だ…私が育て親だと言えば分かるか?」

「…つまり、お嬢様を育てた魔導士の老人。」

「そうだ、今じゃこんな姿だがね。」

それっきり、アンナは何も言わなかった。

それが事実だと察していたからだろう。


「ねぇ、お爺ちゃん。」

「なんだい?リン。」

「私たちが生まれ変わったのって…お爺ちゃんの魔術なの?」

シェリアの質問に皆の視線が爺ちゃんに集中する。


爺ちゃんは笑う。

まるでいたずらを成功させた子供のように、陽気に、そして無邪気に笑う。

それは年相応な少女のようで、どこか歪な雰囲気も感じる。

それは…


「その通りだ。私が転生の魔術を開発し、成功させた。」


話す内容ゆえか、それともタネを知った奇術を見ているかのように、その本質なかみを知ってしまっているからか。


そして1人の少女…いや、たった1人の魔道士は語る。



その魔導士は不死の魔術を開発していた。

人類の限界を超える。などとでかい口を叩いてはいたが実際のところは『死んで終わり』という結果が気に入らなかったからだ。

どんなに魔術を開発しても、どんな栄光を名声を得たとしても…『死んで終わり』

死んだらそれで即終了。


どんな人間もそのストーリーの最後は死だ。


囚人も王様も勇者も姫様も老人も犬も赤子も魔物も獣人も母も父も妹も村長もあいつもこいつも誰であろうと皆…最後は死ぬ。


もちろん…私も最後は死ぬ。

これは自然の摂理であり、変えられない事実だ。



しかし…認められなかった。



この私が…魔術の深淵を覗き込むどころか、その深淵を生み出したこの私が!その辺の路肩の小石のような人間供と同じ結末を辿る?


そんなことが!そんな情けないことが認められていいわけがない!!


今まで数多の敵を屠り、塵のように溢れるライバルを消し炭にして魔術師の頂点に立ち続け、ついには魔導士とまで呼ばれるに至ったこの私が、道理の1つも捻じ曲げられないなど…認めていいはずがない!!

私は…『死』を超越し、他の塵芥供を凌駕する!


だが、その魔術開発は難航を極めた。

『神のルール』を捻じ曲げる魔術、それは他の魔術のどれよりも抽象的で、複雑だった。

その魔術開発はいつからか『不死』から『転生』へと変わっていった。

『神のルール』には逆らえないと察して、『終わりのない生』から『生をもう一度』という方向性に目標をずらしたのだ。


そこには、諦めてもまだ諦めきれなかった男の意地が垣間見える。


その後は…皆のご想像通りだ。


「山という地脈…言わば魔術の川を利用した所謂『転生の結界』を山に生み出した。その後、私は魔物に殺されてしまったが…まぁ転生できたから良しとしよう。」


爺ちゃんの話は、奇想天外で良く分からなかったが。

「その結界に居た私たちも…転生した?」

爺ちゃんはニヤリと笑う。

「あぁ、幸運にもな。」

「幸運?どういうこと?」

「私が死んだら私の作った結界はすぐに消えるはずだった。」

「…まぁ、当然そうなりますね。」

アンナが同意する。

「おい!ちょっと待て、ナナたちは魔導士のあんたが死んでから2年は生活してたんだろ?それじゃあ結界なんて持続しないだろ?」

ミルドが疑問をぶつける。

しかし…その疑問は当然だ、私もそこが謎だった。

「意外と魔術に詳しいな脳筋、真剣に勉強したのか?」

「…うるせぇ。」

「しかし、その謎のヒントはもう出してある。」

「もしかして…地脈?」

爺ちゃんが笑顔を見せる。

「リン、正解だ。地脈を利用した結界、だから2年という年月にもかかわらずお前たちを転生させることができた。私も死ぬ間際にお前たち2人のことが気がかりでな…正直なところ、結界のことがあったから内心『早く死んでくれ』と祈っていた。」

「心優しいのに祈ってる内容がえげつねぇな。」

ミルドの冗談に爺ちゃんがムスッとした顔を見せる。

……うん、かわいい。

「しょうがないだろ、転生して欲しかったからな…山の中でちょっと長く生きるより、転生して幸せに生きて欲しかったんだよ。」

「…あぁ、そうか。そうだな、うん。」

ミルドが微妙な顔をする。

…そういえばコイツにも前世での話をしたんだったな。

「?どうしたんだ、なんだか微妙な反応だな。」

「…魔導士様、そんなことより今後についての話をなさいませんか、我々は国外逃亡者ですので…聖国に逃げるか、それともここを拠点に粘るのか、他に案を考えるのか。選択しなければなりません。」

…アンナが話をそらす。

確かに、爺ちゃんには昔の話をするのは気がひけるな。

いつかは話さないといけないだろうけど。


そのアンナの問いに、爺ちゃんはイラッとした表情をした。

「…アンナだったか。お前の案は全て逃げ腰だな。」

「そもそも我々は国外逃亡者…国から逃げた者達ですので。」

アンナは顔色ひとつ変えない。

爺ちゃんの表情が険しくなる。


…かと思いきや、一転爺ちゃんの顔は笑顔だ。

「ほほぅ、そういう機転は働くのか。良いだろう気に入った。アンナ…お前は中々見所がある、リンが気にいる訳だな。」

「…魔導士様、私の主はシェリア様です。お間違えのないようお願いいたします。」

「…なるほど、これは失礼した。シェリアか……良い名前だ。」

私はこのやり取りに少しだけ笑いそうになった。

アンナは怒っているのではなく、暗にシェリアの名前を教えているだけだ。

それを爺ちゃんは注意されていると勘違いしてしまい、名前を褒めて機嫌を直してもらおうとしている。

……爺ちゃん、かわいい。


少し脱線はあったが、おかげで爺ちゃんはアンナとミルドに受け入れられた。

私?…爺ちゃんは好きだったよ。

今の爺ちゃんは……うん、かわいい。


「そう言えばお爺ちゃん、今世の名前はなんて言うの?」

「……そもそも、前世の名前も知らない。」

私たち兄妹の質問に爺ちゃんはそう言えばそうだな、と言って立ち上がる。


「申し遅れたな!私は強大で偉大なるウァルト・ウィルモットを前世とする エレン・オーケスだ、気軽にエレンと呼んでくれ!」

「エレン・オーケス…良い名前ですね。」

アンナが素直に褒める。

爺ちゃん……エレンが満面の笑みだ。

…かわいい。


「さて、このエレン・オーケスが思うに、逃げる必要はないと思うのだよ。」

上機嫌でエレンが語る。

しかし、逃げる必要がない?

「どう言うこと?」

「カルネよ…考えても見ろ。…っと危うく同じミスをするところだったな。…カルネ、お前は今世では何と呼ばれているのだ?」

…エレン…いや、爺ちゃんのこう言う気遣いは変わらない。

「ナナ…そう名付けられた。」

「……ほぅ、ナナか……なるほど。」

エレンはそう言うと、ドアの方に歩き出した。


「皆の者!我々は国外逃亡者だが、それがなんだと言うのだ!」

エレンは大きく、もったいぶった身振りと口上で語る。

「自由…良いじゃないか!国に服従?くだらない!国の決まりごとなど無視してしまえ!私は前世でそうやって生きてきた!もちろん今世でもそうするつもりだ!来世もその来世でもそうするつもりだ!」

その口上はとどまることを知らない。

「ナナよ!シェリアよ!私のかわいい子供よ!何をくだらないことで悩んでいるのだ!国に認められない?国に住めない?お前たちは前世でどの国に属して生きていたのか考えて生活したことが一度でもあったか?」

私たちは何も答えない…エレンの言葉に聞き入っていた。

エレンの…爺ちゃんの言葉に聞き入っていた。

「お前たちの幸せは…国に服従して得られるのか?」

……私たちの幸せ。


それは『自由』の中にしかないだろう。

私たちの表情が明るく、野心的になるのを感じる。

その顔を見て、エレンが笑う。

その表情はきっと私たちと同じだ。


「答えは出たか?なら出発だ!」

「出発?一体どこに?」

アンナの質問に、エレンは答える。

「決まっているだろうそんなこと。」

エレンは笑う、好戦的で野心的に。



「手始めに、王国を奪い取るんだよ。」

強い少女が好きなんです。


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