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邂逅

午前投稿がもう珍しく無くなってしまった。

爆発で意識を失っていた私が目を覚ますと、そこはシェリアと初めて出会ったあの家だった。

「…おう、目を覚ましたか。」

「ナナさん…気分はいかがですか?」

「お姉ちゃん!大丈夫?」

そこには、私を見つめる3つの顔。

「ミルド…アンナ…シェリア……よかった。」

「お前が一番危なかったんだよ…無茶しやがって。」

「本当に…あと少しで死んじゃうところだったんでしょ?」

「えぇ、ミルドさんが庇わなければ死んでいたでしょう…まさに危機一髪でした。」

あの影はミルドだったのか。

命を狙った相手が命の恩人になるだなんて。

「…ありがとう。」

「へっ、惚れた相手を助けるのは当然だ。」

「ほっ惚れっ!?おおおお姉ちゃん!?」

「シェリア様…取り乱しすぎです。」


しかし、事あるごとに惚れた何だというのは正直疲れる。…私は男に惚れることはない。

取り乱したシェリアはアンナと料理を作ることになった。

今晩はここに泊まる…ボロいが勝手を知っている元実家だ。

私はアンナたちが料理を作っている間、外でミルドと会話をしていた。

幸いなことに、怪我らしい怪我を負っていないため、すぐに歩けるようになった。

…ちなみに、ミルドと2人で外に出る時、シェリアが顔を真っ赤にしてこちらを見ていたことは胸に秘めておく。デートじゃないよ?

「私が気を失った後…何があった?」

「爆発から庇った後か?そのまま国外に出てここに来た。アンナさんとすぐに合流できたから楽だったぜ。」

どうやら、そこまで苦労はしていなかったようだ。

しかし、これからどうする?

帝国から王国の山までとんぼ返りしてしまった…ここを王国としていいのかはわからないが。


「王国も帝国もダメ…。」

「アドバイスしてやるが…聖国は論外だぜ、あそこで人間らしい生活を送れるとは到底思えない。」

「そんなに…酷いの?」

「『よそ者』には極端に態度が悪い…というより『よそ者』を人としてみていないんだよ。典型的な迫害をしてくる思考停止野郎の集まりだ…胸糞悪いぜ。」

……そうなるともうどこにも居場所がない。

前世ではここで2人孤独に過ごし…今世では自由を求め国から追いやられるとは。


「幸せになるために国をでた挙句…居場所が無くなるなんて。……皮肉だ。」

「……ナナ。」

ミルドは私を心配そうに見つめる。

彼も同じ境遇か…いや、少し違うか。彼は彼の信条に従って動いているだけだ。言ってみれば私の求める自由の元に動いている。

……別に羨ましくなんてない。


少しばかりの静寂の時間。

それを破るのは誰の声でもない。

そもそも音ですらない。


私たち2人の前に現れた眩しい光。

それはどこか見覚えのある図形を描いて紫色に輝いている。

これは……そう、魔術陣だ。

それは数秒で輝きを失い、人影が見えてくる。

「ナナ、注意しろ。追っ手の可能性がある。」

「むしろ、その可能性が高い。」

「…まぁ、そうだろうなぁ。」


その人影は、こちらに向かってゆっくりと歩いてくる。

優雅に、そして瀟洒に、どこか気品を感じるその動きの主は…驚いたことに私と同じかそれより少し上の年齢、つまりまだ少女という言葉が似合う姿だった。

……アンナと同じくらいか?

日光を反射する桃色の髪は腰まで長く伸び、それと同じくらい輝く桃色の瞳が私たちを見つめている。



しかし油断はしない。

ついさっき知ったが、アンナはあの歳で王国特殊工作部隊の隊長を務めている。

そもそも私ですら帝国の警備員を数百人斬り殺している。

姿なんてあてにならない。

私は懐にあるナイフを右手に構える。

鋼糸も既に左手で持っている。

いつでも少女をバラバラにできる状態を作る。



「む?先客がいたか。3人…いや4人、パーティでもするのか?」

「……あんた、誰だ?場合によっちゃこちらは戦闘をも辞さない覚悟だ。」

「…パーティはしないのか、つまらんなぁ。」

ミルドの脅しとも言える問いに少女は何の動揺もしない。

そして問いにも答えない。

「…質問に答えないなら、話し合いする気は無いってんだなっ!!」

ドンッと地面が揺れた。

まるでオーガの突進のようにミルドが少女に向かって駆ける。

「…速い。」

少女は感嘆したように呟く。


……しかし、そこに恐れの感情は無い。


実際、ミルドが突き出した拳は

ガキンッ

およそ拳が出せるものではない音を立てて少女の眼前で止まる。

「何だと?」

「良い正拳突きだ…いや、本当に素晴らしい。私が知る限りで一番美しい突きだ。しかし…相手が悪かったな。」

少女の賛美にミルドの顔が歪む。

怒りではない、呆れだ。

「…止めておいて言うことじゃねぇな。」

「なら罵詈雑言を浴びせるしか無くなってしまうな。」

「へへっ、生意気な嬢ちゃんだぜ。」

ミルドは大きく跳んで私の横まで後退する。

少女はそれを静かに見つめる。

「ナナ…あいつはヤバイ。」

「…見ればわかる。」

ミルドとこっそり言葉を交わす。

その間、一度も少女から目を離してはいなかった。

それなのに……

「何だ?話し合いか?除け者とは寂しいじゃないか?」

後ろから聞こえる少女の声。

「なっ!?」

「…!?」

「私も会話に混ぜてくれよ。」

ゴッ

ミルドが振り向きざまに殴りかかる。

が、その拳はまた眼前で止まる。

「クソッ!どうなってやがる!」

「何もかも誰かに答えを求めるのは褒められることじゃないぞ。」

彼女がそう言った途端、ミルドが吹っ飛ばされた。

「のわっ!?」

「ミルド!」

「おぉ、いい飛びっぷりだな。」

バキバキッ…と、飛ばされたミルドは家の壁を破壊し、残骸に埋もれる。

そして、料理中だったシェリアたちが驚きの表情でこちらを見る。

「えっ!ミルドさん!?」

「…敵ですか。お嬢様、少し隠れていてください。」


それを見た少女も何故か驚いた表情でシェリアたちを見ていた。

「……そうか、世界は狭いな。」

それは懐かしんでいるような、嬉しそうな声色だった。

そして、どこか懐かしいような…。

私はなぜかそう思ってしまった。

だからか…

少女が一瞬でシェリアの目の前に来ることを許してしまった。

「うひゃぁ!!」

「なっ!シェリア!!」

「お嬢様!」


少女は先ほどの好戦的な表情から、慈愛に満ちた微笑みをたたえている。

「久しぶりだな……リン。」

「…え? お…爺ちゃん……?」

やっとこれで主要キャラが揃いました。

ここから新章開幕?


いやいや、まだ少し残ってる。

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